↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/136

2-56 ヒュプノス

「我ごときの力では、姫さまを止められないのであります……。かといって、この爪を姫さまに向けるなど……」


 マルバンが、ぎり、と牙を鳴らした。漆黒の前脚が、震えている。


「――サイラスっ!」


 別の方向から、よく通る女性の声がした。緑がかった金色の髪に長い耳。風そのもののように軽やかに、サイラスに向かって駆けてくる。


「フルリーヌ!」


「やっと来てくれましたか。魔族の姫は、第一魔将のスキルで魅了されてしまいました……。私たちの呼びかけにも、応えてくれません……」


 真っ白なエルフの頬を、煤と汗が伝っていた。


「フルリーヌ、エルフのみんなを、安全な場所まで下げてくれ。後は、僕がやる」


「しかし……」


「みんなと約束したんだ。ラツィとセフィを、必ず連れて帰るって」


 フルリーヌは、サイラスの目をじっと見た。やがて、エルフの賢者は静かにうなずいた。


「……わかりました。あなたを、信じます」


 フルリーヌは身をひるがえし、凛とした声を森に響かせる。


「エル・フの戦士たちよ、森の外まで下がりなさい!」


 サイラスは、炎の中心へと駆け出した。


◇


 赤い髪が、熱風に揺れている。


「ラツィ!」


 小柄な魔族の美姫が、ぎこちなく振り返る。虚ろな金色の瞳が、サイラスを捉えた。その瞬間、表情のなかった顔に、ぴくり、と苦悶がよぎった。


「……あ……」


 赤い唇が、震える。


「……あ……るじ、さ……ま」


「……き……ては……だ、め……です……」


 ラツィは、両手でこめかみを押さえていた。魅了にあらがっているのだ。


「待ってて。すぐに、助けるから」


 しかし――。


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 聞いたことのない、低く歪んだ声が、ラツィの口から放たれた。


 黒いユニコーンたちが、一斉にサイラスへと突進してきた。鋭い角の先から、白い炎が噴き出す。その熱だけで、そばの木々がたちまち燃え上がった。


 サイラスは、剣を抜かなかった。ただ、両手を軽く広げ、一歩前へ出る。


 ぼうッ、と、白い炎がサイラスの全身を包んだ。だが――燃えない。


 頭のなかに、ぼんやりと知識が浮かんでくる。


(僕には、燃焼無効のスキルがある……)


 以前、ラツィと戦ったときに手に入れたスキルが、いま、サイラスを守っていた。そして、もうひとつ。


(《灼熱の騎士》のスキルそのものを、無効化できる……)


 サイラスは、右手をぐっと握りしめた。


 瞬間、角の炎がふっと消えた。黒いユニコーン像の輪郭が揺らいだかと思うと、六体とも、跡形もなくかき消える。


「――……っ!」


 スキルを消されたと悟ったのか、ラツィの目に殺意がともる。赤髪の少女は爪を剥き出し、獣のようにサイラスへ襲いかかった。普段の優雅な姿からは、想像もできない動きだった。


(魅了を解くスキルは……ない。上書きできる勇者のスキルは、封印されている……)


 鋭い爪が、目の前に迫る。


「ラツィ……」


 サイラスは握っていた右手を開き、すっと彼女へ突き出した。


「――《神寂眠(ヒュプノス)》」


 手のひらから、銀色の霧のような光が、ふわりと広がった。飛び込んできたラツィが、まともにその光を浴びる。


「……ぁっ……」


 足が止まる。金色の瞳が、ゆっくりと閉じていく。襲いかかろうとした手が、力なく垂れた。細い身体が、前のめりに崩れる。


 サイラスは、その身体を抱き留めた。赤い髪が、サイラスの肩にかかる。


 寝息が聞こえた。穏やかで、落ち着いた寝息。


(よかった。寝てくれた)


「姫さまっ!!」


「ご主人さま……っ!」


 そこへ、パールと、人の姿に戻ったマルバンが駆け寄ってきた。


「ひ、姫さまは……ご無事なのでありますか!?」


「大丈夫。眠ってるだけだよ」


 マルバンが、ほうっと長い息をつく。その目元が、すこし濡れていた。


「マルバン、ラツィを森の外まで運んでくれ。エミルたちが入口で待ってる」


「かしこまりましたであります……!」


 黒ずくめの執事は、魔族の姫をサイラスから丁寧に受け取り、両腕で抱きかかえた。


 マルバンの肩にとまり、パールが声を張り上げる。


「勇者サイラスっ!」


(パール、初めて僕の名前を呼んだ……)


「姫さまを助けてくれて、本当にありがとう……ありがとう……」


 マルバンは姫を守るように胸に引き寄せ、サイラスに深々と一礼すると、煙のなかを駆け出した。


 走る執事の肩の上で、パールがこちらを振り返る。


「サイラスっ! 気をつけてくれ、奴は、ベタクロフはすぐ近くに潜んでいる!」


「記憶喪失勇者」2-56を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


もし、この小説を読んで、すこしでも面白いと思っていただけたら

【☆☆☆☆☆】をタップして、★をいただけると嬉しいです!


ブックマークで応援していただけると、とてもとても嬉しいです!!

あなた様の応援が、何よりの原動力です。よろしくお願いいたします!!


※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


挿絵をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらの作品もお読みください。
『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』はこちら 本編の800年前のお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。