↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/136

2-55 転移

「みんな、目をつぶって」


 サイラスの声に、エミルたちは反射的に目を閉じた。


「――《転移(イーリス)》」


 足元から、淡い七色の光が湧き上がる。辺りの空気がぐにゃりと歪み、次の瞬間、夕焼けに染まる村の風景が、四人と一羽の周囲から、消えた。


 風の匂いが、変わる。乾いた村の砂塵から、青葉と焦げた木の臭いへ。ぱちぱち、となにかが弾ける音。遠くから聞こえる怒声。


「……えっ?」


 エミルが、おそるおそる目を開ける。そして、息をのんだ。


「ど、どこなのだ、ここは……っ」


 ルナが槍を構えて、青い目できょろきょろと周囲を見渡す。


「にゃっ、にゃにこれっ、さっきまでヨレウスの村にいたよね、ボクたちっ!?」


 カレラが黒い猫耳をぴんと立てて、尻尾の毛を膨らませた。


「お、おまえ、いま、なにをしたのだ、勇者っ!?」


 パールが、翼をばたつかせてわめいた。本来の姿から、肩に乗るほどの大きさに戻っている。


 そこは、森の入口だった。うっそうと茂る梢の上に、どす黒い煙が立ちのぼり、暮れかけた空へ溶けていく。木々の隙間から覗く赤、それは夕陽ではなく、燃え盛る炎だった。


 サイラスは、額を押さえた。頭の奥が、ふわりと揺れる。


(めまい……? スキルでマナを使いすぎたのかな……)


 だが、倒れるほどではない。


「ごめん、説明は後で。ここ、風の森の入口で合ってるかな」


 パールが上空に舞い上がり、すぐに戻ってきた。


「あ、ああ、間違いない……ここはたしかに、風の森だ……」


 フクロウの丸い目が、いっそう丸くなっている。


「……あの村から、ここまで、一瞬で……」


 その小さな身体が、震えていた。


「サイラスくん、これって……」


 エミルが、サイラスの袖をそっと引いた。サイラスは、肩をすくめてみせる。


「いま、頭に浮かんできたんだ。一度行ったことがある場所には、こうやって移動できるみたい」


(昔の僕は、こんな便利なスキルまで持っていたのか……)


 しかし、感心している暇はなかった。めきめきと木の裂ける音。魔獣の咆哮。悲鳴にも似た、エルフたちの掛け声。夕風が、それらを森の奥から運んでくる。流れてきた煙が、目にしみた。


「僕は、ひとりで森に入る。みんなは、ここで待っていてくれ」


「なに言ってるんだよ、サイラスっ! ボク、さっきの風で絶好調なんだから!」


 カレラが食ってかかった。ルナも同調する。


「私もいっしょに行くぞ。サイラスを守るのが私の役目だ」


 サイラスは、首を横に振った。


「身体は治っても、もう分身は出せないんだろ?」


「うっ……」


「森にいるのは操られたラツィだけじゃない。第一魔将だっているんだ。ルナもここでエミルを守っててほしい」


「私はついていくぞ、勇者――」


 軽い羽音とともに、パールがサイラスの肩にとまった。


「第一魔将の居場所も、姫さまの居場所も、私のスキルで案内しよう」


「わかった。頼んだよ、パール」


 サイラスは、仲間たちの顔を見た。エミルは、両手を胸の前でぎゅっと握りしめている。翠玉色の瞳が、なにか言いたげに揺れていた。


 それでも、エミルは小さく、うなずいた。


「サイラスくん……どうか、ご無事で……。わたしたちはここで、信じて、待っています」


「うん。ありがとう、エミル」


「サイラス、第一魔将を倒して、必ずセフィを連れて帰ってこい」


 ルナは、まっすぐにサイラスを見すえて言った。


「にゃはは、その通りだよサイラス。お姫さまたちのこと、絶対連れて帰ってきてね」


 カレラが笑顔で、愛弟子の肩をぽんと叩いた。


「うん。みんな、行ってくる」


 サイラスは、勇者の盾を背負い直すと、煙を吐く森へ踏み込んだ。肩から飛び立ったパールが、頭上を付き従う。


◇


 奥へ進むほど、煙が濃くなっていく。熱気が肌をなぶり、額に汗がにじんだ。炎に照らされた幹のいくつかは、すでに黒く炭化している。舞い散る火の粉が、視界をちらちらと赤く染めた。


「勇者、姫さまは、この先だ」


 頭上から、パールの声が降ってくる。


 サイラスは剣の柄に手を添え、燃え落ちてくる枝をかいくぐって走った。すこし離れた木々の合間に、エルフたちの姿が見える。


 彼らは風の精霊を召喚し、得意の弓と剣で魔獣の群れを食い止めていた。その後ろでは、別の者たちが精霊術で水を生み出し、懸命に炎へ浴びせている。だが、火はそれを上回る勢いで燃え広がっていた。


 目の前の煙を裂いて、馬ほどもある狼が転がり出てきた。そのすぐ後ろから、コウモリの翼を生やした漆黒のライオンが躍りかかる。


「ふんっ!」


 前脚のひと振りで、狼の首がはね飛んだ。


「マルバン……っ!」


 サイラスの声に、魔獣姿のマルバンが弾かれたように振り返った。獅子の目が、大きく見開かれる。


「ごっ、ご主人さま!? なぜ、ここに……」


 マルバンの視線が、サイラスの頭上を飛ぶ黄金のフクロウを捉えた。


「なるほど、パールの仕業でありましたか。しかし、よくぞ、よくぞ参られたのであります!」


 魔族の執事は、サイラスに駆け寄ると、地面に鼻がつかんばかりに、深く頭を下げた。


「姫さまが……あちらで……」


 マルバンが示した先――炎の最も激しい中心部に、その姿はあった。


 赤い髪をなびかせた、人形のように整った顔の少女。


 その周囲を、六体の黒いユニコーン像が、円を描いて回っている。像の口から炎が噴き出すたび、あの美しかった森が、音を立てて焼け落ちていく。


 金色の瞳は、虚ろだった。表情は、能面のように凍りついている。


「記憶喪失勇者」2-55を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


もし、この小説を読んで、すこしでも面白いと思っていただけたら

【☆☆☆☆☆】をタップして、★をいただけると嬉しいです!


ブックマークで応援していただけると、とてもとても嬉しいです!!

あなた様の応援が、何よりの原動力です。よろしくお願いいたします!!


※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


挿絵をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらの作品もお読みください。
『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』はこちら 本編の800年前のお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。