2-39 封印
カレラの父――ディアロがこちらを見て、にやりと笑った。そして、人とは思えない速度で走り去る。
「待って、父さんっ! 皆殺しって、どういうことっ!」
カレラが追いかけようとした。しかし、キュリアンの一撃がそれを阻む。
「止めたかったら、私を倒せと言ったはずだ。それが試験のルールだぞ」
振り下ろされた赤い剣が、カレラの太刀を断ち切った。
「守れないなら失格――即、退場だ!」
刃がカレラの胸を切り裂き、血しぶきが上がる。マレス族の女剣士の身体が地面に転がった。
「カレラッ!!」
サイラスが駆け寄り、カレラの胸に手をかざす。白い優しい光が傷をふさいでいく。
「そんなことをしている暇はないぞっ!」
キュリアンの二本の剣がサイラスに迫った。ルナが自分の身体でサイラスをかばおうと飛び込んでくる。男は剣を止め、ルナの腹を押すように蹴った。重たい魔導人形が数メートルも吹き飛ぶ。
その一瞬の隙に、ラツィはユニコーンを四つ召喚した。
「……そ、んな……」
キュリアンの赤い剣がラツィの頭上に浮かぶ一角馬の胸像に向けられていた。
剣から噴き出した激しい炎が白い胸像を瞬時に焼き尽くす。次に黒い剣がラツィに向けられると――ラツィはその場に崩れ落ちた。
「ラツィ!?」
ニコニコと笑顔を浮かべたまま、銀髪のクルセイダーがサイラスの前に立つ。
「さて、これで一対一だな。おまえの実力を見せてみろ、勇者サイラス」
サイラスは立ち上がり、無言で剣を空に向けた。
『ユニークスキル《神の怒り(ケラウノス)》を発動します……』
雨雲が集まり、黒い塊となって、轟音とともに稲妻が男に降り注いだ。
「ほう……」
キュリアンは雷を受けても、何事もなかったかのように、そこに立っていた。
(効いてない……!?)
サイラスは剣を構え直した。
『ユニークスキル《超高速機動》を発動します……』
『スキル《獣神分身》を発動します……』
三人に分身したサイラスが、同時にキュリアンに斬りかかる。男は興味なさそうに、片手の剣だけで三方向からの攻撃をすべて防いだ。
(片手で……!?)
サイラスは地面を蹴って後方に飛び、距離を取る。
『ユニークスキル《光の剣》を発動します……』
間髪入れずに、勇者の剣から伸びた白い光の刃をキュリアンに叩きつけた。光の速さの斬撃。しかし、パァーンと男を守る見えない障壁に阻まれ、光は霧散した。
「なんで、おまえはそんなに弱いのだ?」
「……っ!」
「パナメラから聞いていた話とは、ずいぶん違う。自慢の弟子だと言っていたのだが……彼女から剣を習ったのではなかったのか?」
(剣聖パナメラの……弟子? 僕が……?)
「うごっ!」
いつの間にか目の前にいたキュリアンの拳が、サイラスの顎を打ち抜いた。まったく反応できない。サイラスは地面に叩きつけられた。
「正直に言って、期待外れだな……おまえなら即戦力でガーディアンに迎えられると思っていたのだが……」
「ぐはぁっ!」
キュリアンの足がサイラスの腹を蹴り上げた。血反吐を吐いて、数メートル後ろに転がる。
「……ちょっと厳しめの修行をしてもらうしかないか」
(い、いったい……なにを言って……?)
何メートルも離れていたはずの男が、音もなくサイラスの前にあらわれた。首をつかまれ、身体を持ち上げられる。意識が遠くなっていく。
「ふむ……記憶をなくしているのか。それで四百年前よりも弱いというのか。やはり簡単に手に入れた勇者のスキルは修行の邪魔のようだな……これは封印しておこう」
「がっ!」
地面に落とされた身体を、踏みつけられる。
「敵は私よりも容赦がないのだぞ。強くならなければ、誰も生き残れない……おまえも、おまえの仲間たちも。そして、この世界そのものも」
キュリアンはサイラスの頭をつかんで地面に押しつけると、静かにつぶやいた。
「“エクストラスキル”《この世はすべて舞台》」
『ユニークスキル《光の剣》が封印されました……』
『ユニークスキル《神の盾》が封印されました……』
『ユニークスキル《神の怒り(ケラウノス)》が封印されました……』
『ユニークスキル《超高速機動》が封印されました……』
『ユニークスキル《超高速自己治癒》が封印されました……』
『ユニークスキル《超治癒術》が封印されました……』
『ユニークスキル《女王の瞳》が封印されました……』
『ユニークスキル《神の劫火》が封印されました……』
(す、スキルを……封印……?)
「私のスキルで、強制的に強敵に遭遇するようにしておいた。ドラマチックに修行できるだろう。楽して強くなれるなんて思うなよ。まあ、死なないようにせいぜい頑張ることだな、勇者殿」
キュリアンはサイラスの襟をつかみ、ルナとカレラが倒れているほうに投げ飛ばした。
サイラスは朦朧としながらも立ち上がろうとした。しかし、身体が言うことを聞かない。そのまま意識が落ちた。
「荒療治ではあるが、仕方がない。この世界にはもう、本当に時間がないのだ……」
その言葉を最後まで聞けた者はいなかった。
マルバンとエミルが駆けつけてきたとき、銀髪の男――キュリアン・マクナナスの姿はすでに消えていた。
「記憶喪失勇者」2-39を読んでいただき、本当にありがとうございます!!
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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。
※本編の800年前のお話です。
※リンクはあとがきの下にあります!
挿絵をChatGPTに描いてもらいました!
※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。
・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿
・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック




