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【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第2章

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2-37 人族の勇者

「おいおい、俺たちのことを忘れてもらったら困るぜ。そいつらは俺たちの獲物だ。勇者だかなんだか知らねえが、そいつらを置いてとっとといなくならねえなら、おまえから先に殺すぞ!」


 上に茶髪の男が突っ込んだ拍子に氷が砕けたのか、三人の男たちはいつの間にか立ち上がって、少年の後ろと左右から、警告よりも先に斬りつけていた。しかし、六本の刃は少年の身体には届かなかった。


 少年は先ほど私のことを守ってくれた見えない障壁に包まれていた。


 渾身の一撃を弾かれながらも、男たちは金髪の少年に殺意のこもった視線を向けつづけている。だが、男たちは口だけで、それ以上の手出しもできず、手をこまねいていた。


「ああ、クルセイダーは“狂信”のスキルのおかげで、状態異常系のスキルに耐性があるんだったか。面倒くさいやつらだな」


 少年はまったく慌てた風もなく、男たちを見ることもせずにつぶやいた。


「マキナ、《神の怒り(ケラウノス)》を最小出力で発動」


「ぐがっ!?」「おごっ!?」「うぎゃっ!?」


 バチッというなにかが弾けるような音がした。すると男たちは口から泡をふいて、その場に倒れた。


「!?」


「死んでないよな?」


 少年は男たちの脇腹をつま先で蹴りはじめた。男たちは動かなかったが、どうやら息はしている。気絶しただけのようだ。


「それじゃ、あらためて聞くが、俺に聞いてほしい願いってなんだ?」


 少年は感情のない赤い目で私たちを見まわした。マルバンが立ち上がり、膝についた土を払いながら言った。


「我たちを貴方さまのしもべにしてほしいのであります」


「……ちょっ、マルバンっ!」


 姉がマルバンの腕を引っ張った。私たち三人は勇者からすこし離れて、ひそひそと作戦会議を始めた。金髪の少年はこちらをいぶかしげな目で見ている。


「……なにを言い出すのですか、マルバンっ! わたくしたちが人族のしもべになるなどと」


「ですが、姫さま。あの勇者の力を見たでありましょう。攻撃がまったく効かないであります。あれにはかないませんし、姫さまの色仕掛けも効果があらわれるにはすこし時間がかかるでありましょう」


「……だからといって、わたくしたちが、その……しもべになんて……」


「…………」


 姉は白い顔を赤くして、悩んでいるようだった。魔王の娘、魔界の王女が人族のしもべになる――。


 たとえ口だけの約束のつもりだったとしても、相手に自分が従順であることを示さなければ疑われてしまうだろう。しもべになれば、どんな要求をされるかもわからないのだ。姉が迷うのも当然だった。


「姫さま。勇者がアルージュに来てくれなくても、しもべになることを認めさせておけば、魔王城が陥落したとき、こちらに逃げてきて勇者の庇護を受けることができるでありましょう。奴がこちらまで追ってくるようなことがあれば、それこそ勇者に倒してもらえばいいのであります。それに近くにいさえすれば、いずれ勇者も姫さまの魅力にメロメロになるでありましょう」


「……うぅぅぅぅ」


 姉は下唇を噛みしめながら、両方の拳を握りしめていた。ちらりと私の顔をうかがい、目をつむる。


(大丈夫。どんなことであっても、私は姉さまの決定に従うから)


 覚悟を決めたようだ。姉は顔を上げて、マルバンを見た。


「……わかりました。人族の勇者のしもべになりましょう」


 三人で勇者の前に戻ると、鎖帷子の男たちはまだ地面に倒れたままだった。


「……人族の勇者よ。わたくしラツィと妹のセフィ、そして執事のマルバンを貴方のしもべにしてください。わたくしたちは永遠の忠誠を貴方に誓います」


 ふたたび、姉が金髪の少年に丁寧にお辞儀をした。私もマルバンも慌てて姉にならってお辞儀をする。それでも少年のいぶかしげな目は変わらなかった。


「なんで俺のしもべになんてなりたがるんだ。おまえたち魔王の娘なんだろう?」


「魔族は強い者にひかれるのでありますよ。いまアルージュには魔王がおりませんので、魔王を倒せる力を持った勇者さまのしもべになりたいのであります」


「そんなもんなのか。魔族の考えることはよくわからないな。しもべなんていらないけど、勇者レギウスには魔族の仲間がいたし……おまえたち、人間に害を与えないって誓えるか?」


「……わたくしたちは、人族に害を与えないと誓います」


「そうか。なら、ついてきたいなら勝手にしな」


 それだけ言うと、少年はぷいっと私たちに背中を向けて、自分がやってきた街道のほうに歩き出した。そうして、私たちは勝手に人族の勇者のしもべを名乗り、魔王討伐についていくことになった。


「記憶喪失勇者」2-37を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


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※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


挿絵をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

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