↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2章完結】記憶喪失勇者 ~最強の勇者は、自分が何者なのかを知らない~  作者: さいらす
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/136

2-30 エル・フ

「はい。できれば四百年前になにがあったのか聞きたいです」


「そうですね。それでは最初から話しましょう。元々、エル・フは人族と魔族の争いには中立の立場だったのです。私たちは女神さまからこの世界を管理する役目を仰せつかった種族。他の種族の争いに干渉すべきではない、と考えていたのです。ですが八百年前に魔王アノンによって火の森が滅ぼされ、森の長老たちの意見は割れました。水の森は中立を守りましたが、風の森と土の森は人族とともに魔族と戦うことを選んだのです」


 フルリーヌは、ちらりとラツィの顔を見た。ラツィは薔薇の花のような真っ赤な唇から小さく舌を出して、顔をしかめた。


「そして私は人族の勇者、あなたの父親ライアスの仲間になりました」


 今度は、サイラスのほうへ向き直る。


「最初、私は人族を信用していませんでしたし、勇者の力も侮っていました。私は若いエル・フで、自分の力を過信していたのです。精霊の力を借りれば、ひとりでも魔王を倒せるくらいに思っていました。でもそれは、すぐに間違いだとわかりました。……ライアスは本当に強かった。剣聖パナメラだって……でも、魔王にはかないませんでした……」


 フルリーヌは悲しげに、深い緑色の瞳を伏せた。


「ライアスは自分の生命を犠牲にして、魔王ギリヨンに深い傷を負わせました。倒しきることはできませんでしたが、魔王はその傷を癒やすために魔界に逃げ帰り、私たちは三年の時間を稼ぐことができたのです。そして成長したあなたが――勇者サイラスが、魔王を倒してくれました。それも、たったひとりで……」


 そこで一度言葉を止めると、フルリーヌはまっすぐにサイラスを見つめる。


「ねぇ、サイラス? なぜあなたは魔王を倒した後に、消えてしまったのですか。あなたの母親のアレクサンドラは、ずっとあなたの行方を探していたのですよ。それこそ、死ぬまでずっと」


 四百年の間胸にしまっていた質問をフルリーヌはサイラスにぶつけた。でも、サイラスはなにも思い出せなかった。昔のことを思い出そうとすると、こめかみの辺りがずきんと痛む。


「僕の母さんが……!? すみません。でも、なにも覚えていないんです……」


「……我が主さまは記憶喪失だと言っているでしょう、この馬鹿エルフ! 昔のことは覚えていても、最近聞いたことは覚えられないのですか!」


 うなだれるサイラスの隣に座っていたラツィが、テーブルに身を乗り出してフルリーヌに噛みつく。


「そうでしたね、ごめんなさい。懐かしい顔を見て、つい」


 フルリーヌは申し訳なさそうに頬を赤らめた。


(ラツィ、かばってくれてありがとう)


 しばらくすると、楽器を持った数人のエルフ族が広場に出てきて、楽しげな音楽を奏ではじめた。エルフ族の男女が、それに合わせて踊りはじめる。


「サイラスくん、わたしたちも踊りませんか?」


 立ち上がったエミルが、サイラスの前に手を差し出した。


「ごめん、エミル。僕は踊りなんて覚えてないし、踊れるかわからないよ」


「わたしもあまり踊ったことはありませんけど、ダメですか?」


 エミルに微笑みかけられて、サイラスがもじもじしていると、


「サイラス、おまえは男だろ。ダンスは男のほうがエスコートするものだ」


 ばしんと、ルナに背中を叩かれた。


(ルナ、いまのは痛いよ……)


 サイラスはしぶしぶエミルの手を取り、ふたりで広場のほうに歩いていく。


 ふたりのいなくなった席で、サイラスと踊るエミルを刺すような目で見ているラツィに、フルリーヌが話しかけた。


「なぜ、あなたはまたサイラスといっしょにいるのですか?」


「……しもべが主といっしょにいるのは、当たり前のことです。ところで、このエルフたちが鳴らしている音はなんなのですか?」


「音? ああ、音楽のことですね」


「……音楽? それで、主さまとあの飯炊き女は手をつないで、あんなところでなにをしているのですか?」


「なにをって、音楽に合わせて踊っているのですよ。まあ、かなりぎこちないですけども」


 ラツィの質問に答えながら、フルリーヌはその視線の意味に気がついた。


「ははあ、なるほど」


「……なんですか? 急ににやにやして気持ち悪い」


「あのふたり、お似合いじゃないですか」


「……どこが似合っていると言うのです。あれは奴隷と同じ、ただの飯炊き女です」


 踊るサイラスたちを眺めるフルリーヌの横で、ラツィは細くて白い腕を組んでそっぽを向いた。


「あのふたりは人族同士。でもあなたは魔族。仮にあなたがサイラスといっしょになれたとしても、サイラスはあなたよりも先にこの世からいなくなってしまうのですよ。その後、ずっとひとりで、あなたはどうするつもりなのですか?」


 ぽかんとした顔で、フルリーヌを見返して、ラツィは答えた。


「……そんなこと。また、主さまが生まれ変わってくるのを待つだけです」


「でも人族は死んでしまえば、前世の記憶をなくしてしまう。生まれ変わったサイラスと出会えたとしても、あなたのことを忘れてしまっているではないですか」


「……今回だって、主さまはわたくしのことを忘れていました。それでも、主さまは主さまです。また出会って、また仲良くなればいいのです」


 今度はフルリーヌのほうが、ぽかんとする番だった。


「記憶喪失勇者」2-30を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

さいらすと申します。


もし、この小説を読んで、すこしでも面白いと思っていただけたら

【☆☆☆☆☆】をタップして、★をいただけると嬉しいです!


ブックマークで応援していただけると、とてもとても嬉しいです!!

あなた様の応援が、何よりの原動力です。よろしくお願いいたします!!


※『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』という小説も書いています。

※本編の800年前のお話です。

※リンクはあとがきの下にあります!


挿絵をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらの作品もお読みください。
『勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~』はこちら 本編の800年前のお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。