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第三夜・コントローラーに繋がれた謎の生き物

 見知らぬ男にスライド式のコントローラーを手渡され、それを好きにして良い、と告げられた。


 四角く手のひらサイズのコントローラーである。ほら、コタツや電気毛布によくついてるアレ。アレである。


 しかしそれが何のためのコントローラーなのかは皆目判らぬときた。


 とはいえ、好きにしろと言うのだから、そう酷いことにはなるまい。暫し悩んだ末、ええいままよとスライドを試みることにする。


 しかし、「強」へと移動させると、猛烈な風が吹き荒れ見る間に気温が下がり始めたのである。

 氷河期の到来だ。


 慌ててスライドを戻そうと手元を見るが、いつの間にかそこには細かなメモリがたくさん付いており、「元の場所」と言うのが判らない。


 何と言うことだ。お前、先ほどまでは強中弱のみであっただろう。突然どうしたというのだ。


 そして困惑の渦中にある自身をよそに、気温は急上昇し地面の水気までがすっかり蒸発し今度は汗が滴る始末。


 灼熱地獄と氷河期を行ったり来たり、さながらジェットコースターである。


 トライアンドエラーを繰り返しようやく見つけた「元の場所」であるが時すでに遅し、周囲は見渡す限り熱帯雨林と化していた。


 色鮮やかな緑を見上げて途方に暮れつつ、つまり、このコントローラーを好きにしていい、とは好きに操作していいと言う意味ではなく、適切に管理せよという意味だったのだろうか、と考えた。


 無理ゲーである。そうならそうとはっきり言ってくれ。ところであの男、どこへ行った。


 疲れ果てて空を見上げると、自由気ままに飛ぶ色鮮やかな鳥たち、それに木々を渡る名も知らぬ非ヒト霊長類が目に留まる。

 彼らを見つめつつコントローラー片手にどうしたものかと思案する。


 ふと、コントローラーにコードがあることに気づく。

 熱帯雨林の中を「病気になりそうで嫌だなぁ、ジメジメした場所は嫌いだ」などと考えつつ渋々歩く。

 ひたすらコードを辿るとひとつの池に行き当たり、その中へと先は沈んでいた。


 泳ぎは大の苦手であるが、仕方なく中へと入り海藻やら奇妙な魚やらで行く手が阻まれつつそこを目指す。

 やっとのことで辿り着いた水底には大きな貝——、おそらくオオシャコガイである——、があって、その中で横たわり眠る何かがいたのである。


 それは、すべすべとした白い肌をしており、クッキリとした背骨が浮き出ていた。

 二本足の巨大なウーパールーパーのように見えたが尾はない。

 どう言うわけか、コントローラーのコードはの者背中へと繋がっている。

 これでは美しい背骨がこれでは台無しではないか。


 その無粋な造形に不満を抱えつつウーパールーパーの全身を観察する。

 すると、口の端からは何やら白い細い糸が伸びていることに気づく。これが今度は新しいコードになるのかもしれない、などと確証のないことを考えた。


 それはそうと、痩せたそれはスヤスヤと眠っているだけであるのだが、何となく起こしてはならない怪異のたぐいのような気がして、コントローラーをそこへ丁寧に起き、水から急ぎ出ることにした。

 コントローラーで維持された環境が永続的なものなのか、どれくらいの範囲に影響が及ぶものなのかは定かではないがなるべく穏やかに世界が持続されるよう願った。

 

 自身が目覚めた後も、あのウーパールーパーはまだあの貝の中で眠り続けているのだろうか。

 彼、あるいは彼女が目覚めた時、何が起こるのかは、知りたいような知りたくないようないような、と言う感じである。


おしまい。

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