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第二夜・世界の洗濯

 ハタハタとはためくそれは色鮮やかで、薄っぺらで、そして音がした。

 サワサワと木々が葉を揺らす音がしたり、ピヨロロロと鳥の鳴き声がしたり、はたまた、いかづち轟くときさえもある。


 縦横同じ長さのその布は、どうやら地球の破片のようだった。


 洗濯紐を高原のような場所にはり、一つ一つ丁寧に干していく。


 高原は透き通った日差しが降り注ぎ、大地には丈の短い緑と名も知らぬ小花が咲き誇っていた。

 遠くには鋭い形の雪山が見える。


 スイスの高原のようだ。

 スイス、行ったことないけれど。


 そんな景色を見ながら、一枚一枚地球の破片を洗濯籠から取り出し、広げては干していく作業を繰り返す。


 なぜこんなことをしなければならないのか皆目判らぬが、とにかく世界のすべてを干していかねばならないらしい。


 作業を終えると手のひらサイズの地球のレプリカがもらえるのだそうだ。


 それは、生きた地球のレプリカのようなもので、地球の様子がリアルタイムで見られるものとのことであった。

 なお、ピンチアウトで拡大もできるらしい。是非欲しい。


 隣で丁寧に破片を干していく女がいたが、彼女のエプロンには星空が踊っていた。

 彼女はこの作業がもう四十回目にもなる熟練で、十回目の参加に際して記念としてもらったものだと言う。

 生きた星空を縫い付けたエプロンを誇らしげに見せてくれた。


 ところでこの作業、いつ終わるのだろう。

 はためく「世界」は随分な量となったが終わる気配がない。


 次々と運び込まれるそれを横目にツイと視線を滑らせると、遠くでじゃぶじゃぶとそれらを手洗いする人が見えた。


「あすこで世界を洗濯している人は大変だなぁ。干す作業だけを任された自分は楽な方である。あちらに見えるアイロンがけの人も山脈を潰さぬようアイロンをかけなければならず、更に大変そうだ」などと思った瞬間の起床である。


 つまりミニ地球を手に入れることは結局できなかったわけだ。


 無賃労働である。前払いにしてもらうべきであった。

 しかし夢の世界では、きっとあの小さな地球を手に入れ毎日それを眺めている人がいることであろう。

 まったく羨ましいことだ。


 それにしても、あれは本当に地球の破片だったのだろうか。


 また、洗う人、干す人、アイロンをかける人がいるのならば当然、地球を()()()人、縫い合わせる役目の人もいるはずで、できればその作業も見てみたかったものである。


 しかし目覚めた今となっては、永久にそれは叶わぬのだろう。

 

 夢の世界で、星空を誇らしげに見せてくれたあの人は、今日も世界を洗濯しているのかもしれない。


おしまい。

リアルタイムな夢ではなく書き留めたものを書き直して投稿しております。

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