執念
来世で会おう……
とても純粋で。
高尚な想い。
願い。
祈り。
むしろ……
叫びに近いものがあるように。
感じた。
仙次郎が。
自決した場所は。
土岐家の墓前、
盛り塩にお札で。
結界のようなものを作り。
自らの体に。
お経か呪文のような文字を記し。
儀式めいていたから。
土岐さんは。
遺書に書いた通り。
輪廻での再会を。
祈願したように想えたという。
それなりに。
分かっていたし。
覚悟していた内容でも。
部屋の空気は。
当たり前のように。
重く。
沈む。
カチッ。
カチッ……
時を刻む。
無機質な音が。
平常心を保させてくれているようにさえ感じる。
「上のばあちゃん。相川さんの話に出てきたオルゴールって。これのこと?」
一色くんは。
おもむろに。
テーブルの上に。
あのオルゴールを置いた。
「ええ。兄が美鈴さんに贈った物ですよ。兄の物は私が形見として、それは妹が貰い受けました」
「でも、美鈴さんは、東京の空襲で亡くなったのに、どうして残ってるの?」
「それはね……兄の執念の結果ね」
土岐さんが話してくれた、
オルゴールの物語。
仙次郎は。
焼け野腹の東京の。
どこをどう探して見つけたのか。
美鈴に渡したオルゴールを持ち帰っていたのだと。
仙次郎に。
どのようにして。
見つけたのか尋ねたら。
「このオルゴールが……いや、美鈴さんが、僕を見つけてくれたんだよ」
そう答え。
笑っていたという。
「あの……美鈴さんの香袋の香りが、一色くんや土岐さんからするのは、何故なのですか?」
「ん? ああ、よく気づかれましたね」
土岐さんは。
衿元から。
紺地の香袋を引き抜いて。
テーブルの上に置いた。
「理由はね簡単よ、美鈴さんから、私と妹の美代子が作り方を教わったからよ」
「ああ、なるほど……」
「ふーん。相川さんすごいね。そんなとこ気づくんだ」
「なんか、ほっとする匂いだからかも」
「それはあるかもね、気持ちを落ち着ける効果があるんだよね確か」
「それって、土岐さん以外にも作れたり出来るんですか?」
「そうね。レシピがあれば同じものは作れますよ。まあ、多少配合の分配が変わっても。使ってる材料が同じなら、大差はありません」
「なるほど……」
もう一人。
この匂いがした人がいる。
実際のところ。
その人。
土岐くんから貰った。
小瓶に詰まっていたもの。
それが。
夢で見たより遥かに前に。
知っていた。
どうしよう……
土岐くんのこと。
聞いてみたいけど……
なんて聞いたらいいのかな。
苗字が同じだから。
関係あるように想うんだけど……
「でも、相川さんと透が知り合いなのは、本当に驚きましたよ」
「そんな話を聞くと、昨日、相川さんと、2年振りに会ったのも、偶然じゃない気がしてくるよ」
「うん。そうだね」
「あら? そうだったの?」
「まあね、運動公園で偶然」
「はい。その後で、私は友達と『土岐庵』に伺ったんです」
「あらまぁ」
土岐さんは。
顎を引いて。
目を見張った。
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