写真の人
テーブルに置かれた紺地の袱紗
鮮やかな白や赤の花があしらわれている。
その中から引き抜かれた小さな白い紙片。
土岐さんは。
一瞥して。
微笑みを落とすと。
テーブルに置いて。
私の方に滑らせた。
それは。
モノクロの写真だった。
「ご覧になって」
「あ、はい」
そっと手にして。
見つめた写真。
映っているのは。
髪を結い上げた。
一人の女性。
椅子に腰かけて。
少し斜めを向いている。
着ているワンピースは。
レトロな感じがする。
「どうですか? 相川さんに、似てるでしょ」
「え……!?」
もう一度。
写真に視線を落とす。
目を凝らしても、
写真自体が褪せてきていて。
あまり鮮明でもないから。
似てるのかは判別出来そうにない。
似てるって言われても……
ん……?
いつの間にか。
すぐそばに。
一色くんの顔があって。
どきんと。
肩が跳ねた。
「どうだろ? 相川さんに、雰囲気は似てるような気もするけど……これじゃ、よく分からないよ」
写真を見ていた。
一色くんが。
こっちを向いて。
どう?
と。
眉を上げる。
それに応えるように。
うなずいた。
「確かに、80年くらい前の昔の写真ですからね……」
「え?」
咄嗟に。
写真を見つめた。
「80年も前の写真なの?」
一色くんは。
また。
顔を近づけてきた。
「いくつくらいなの時なの?」
「20歳だったはずね」
「80年くらい前で、20歳か……さすがに、存命ではないんでしょ?」
「ええ。すでに、亡くなられていますよ……でもね、相川さん。本当に似ているのですよ」
「そう、なんですか?」
「ええ。まるで生き写し。昨日ね、相川さんのお顔を拝見した時。心臓が止まるかと想いましたのよ」
「それで……私をご覧になってたんですね」
「あら、やですね。そんなに見ていましたか……失礼なことを致しました。ご不快な想いをさせて、ごめんなさいね」
「いえいえ、そんなことないです」
慌てて。
両手を振る私。
土岐さんは。
私を見ながら。
首をかしげた。
「実際ね、私はご本人にお会いしたことがありますからね……自分の目を疑いましたよ」
「はあ……」
そう言われても。
ね。
「この方は……深栖美鈴《ふかす
みすず》さんと仰って、私の亡き兄の許嫁。婚約者だった方ですのよ」
「なるほ……ん!? えっ……!」
写真を顔の前に。
持ち上げた。
夢の中の美鈴が。
目の前にいる。
しかも……
私に似ているって……
あっ!!
片手で口を覆う。
美鈴の許嫁。
つまり。
土岐さんのお兄さんは……
土岐仙次郎。
それに。
土岐さん。
少女時代の加奈子さんも……
いた。
写真の向こうには。
微笑みを浮かべている土岐さん。
ぞくぞくと。
戦慄が走って。
ぶるると。
震えた体。
「相川さん、大丈夫?」
「あ、うん。あの、それで……私に話があるというのは……」
土岐さんは。
何度か小さくうなずく。
「昨日。3月10日は、美鈴さんと兄の命日でしたの」
「えっ?」
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