味わい
部屋の中は。
電気が灯されていて。
畳張りの和室の真ん中に。
焦げ茶色をした長方形の大きなテーブルがあった。
その右手に。
紺色の座布団が2枚。
左手に1枚。
敷かれていた。
「こっちに座れってことかな」
一色くんが。
奥に座って。
私は手前に腰を下ろした。
ふかふかな座布団の上で正座する。
「あ、相川さん、足、楽にしてていいよ」
「え? あ、でも……」
「固くならないでって、上のばあちゃんも言ってたし、大丈夫だよ」
「うん。じゃあ……」
ぺたんと。
女の子座りをすると。
座布団から足がはみ出た。
きぃきぃ……
廊下から足音が近づいてきて。
土岐さんが入ってきた。
「そうそう、楽にしてて下さいな」
「はい」
「ね? 言ったでしょ?」
「あらあら、内緒話?」
笑顔の土岐さんは。
テーブルの脇で。
膝をついた。
そして。
お盆の上から。
湯気の立ち上ぼる。
湯呑み茶碗と。
切り分けられた羊羮が乗った小皿を。
私と一色くんの前に。
手際よく並べていく。
左手で着物の袖をしぼる所作も。
滑らかで。
凛として。
見入ってしまう。
土岐さんは。
最後に自分の分と。
大きな急須をテーブルの中央に置いて。
するりと。
立ち上がり。
裾を直すようにして。
向かいに腰を下ろした。
「つまらない物ですけど、召し上がって下さい。お口に合うかしら」
「その挨拶って、おかしいよね? いつも想うんだよね、お客様につまらない物を勧めるって、相川さんも、どう想う?」
「え? ああ、相手におもんばかってなのかな、奥ゆかしさかも」
「相川さんの仰る通りです。透も雅楽を志しているけど、日本人の心を知るにはまだまだ、精進が足りないね」
「ハハハ……参ったな」
一色くんは。
羊羮に楊枝を刺して。
口に運んだ。
「ささ、相川さんも、召し上がれ、話はそれから。ね」
「はい。じゃあ、遠慮なく頂きます」
羊羮なんて。
何年振込口座だろ。
お爺ちゃんとお婆ちゃんの好物だから。
小さい時かな……
粘りのある甘味が広がって。
瀬戸物の湯呑み茶碗を。
両手で持って。
フーフーと。
息を吹きかけて。
お茶を口に含んだ。
んん?
美味しいお茶だけど。
しょっぱい……?
口の中で。
甘さとしょっぱさが混じる。
「あら? 昆布茶は苦手でした?」
「あ、いえ、初めて飲んだんで、ちょっとびっくりして、甘じょっぱいの好きなんで、嬉しいです」
「アハハ、そうでしたか。そうよね、甘い羊羮を食べて、しょっぱい昆布茶を飲む。クセになるでしょう?」
「はい。この羊羮も美味しいです」
「それは、それは……喜んでもらえて私も嬉しいです」
和やかに微笑んだ土岐さんは。
胸元から。
花柄の袱紗を取り出した。
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