↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想いの行方  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/70

あの頃のまま

カカカン。

カカカカカ……

金属音に遮られた言葉。

懐かしい音色。

テーブルの上に置かれた小さなオルゴール。

「相川さんと話して、覚えててくれたから持って来た」

一色くんは。

頭をかいて。

苦笑い。

「音色。あの頃のままだね」

「そうだね、僕にとって……」

言葉を飲み込むように。

一色くんは。

少しうつむいて。

両手で顔を洗うような仕草をすると。

顔を上げて。

クスクスと笑った。

「ん? どうしたの?」

「あの時間は、数少ない青春の1ページだったなって」

微笑む一色くんの顔が。

あの時の笑顔とダブって見えて。

ファミレスなのに。

日が暮れてるのに。

オルゴールの奏でがそうさせたのか。

あたかも。

夕焼けの教室に居るような。

錯覚を覚えて。

ううん。

ひととき。

確かに。

そう。

想えてた。

ふわっと。

分かりやすく熱を持つ頬。

「うん。私もかも」

口にしたとたん。

鼓動がフル回転。

「でも、あの頃は、勇気がなくて、いや、自信もなかったのかな……いや、今も自信があるわけじゃないけど……」

一色くんが。

オルゴールの蓋を閉じて。

音が止む。


カラン。

お冷の氷が揺れた。

なんだろ。

なんか。

ざわざわする。

目を伏せて。

肩を寄せて。

腕をさすって。

抱きしめた。

「相川さん」

「はい」

ビクッとして。

背筋が伸びる私。

「まさかね、会えるとは想ってなくて、でも、会えたから」

オルゴールを包んでる。

一色くんの指が。

その表面を行ったり来たり。

「よかったら、東京でも……また、会えないかな」

「あっ……」

「どう?」

「あ、え、うん……」

うつむく私。

たぶん。

顔から火が出てる。

大きなため息が聞こえてきて。

「違うんだよ……」

小さくこぼれた一色くんの声。

「ん?」

「あ、そうじゃなくてね、あの、相川さん……」

「……はい」

「僕と……付き合ってくれないかな」

「ふぇ?」

変な声が出て。

咳払いをする私。

なに……?

この展開?

告白されてるよね?

今日の今日……?

えっ!?

志帆の言った通り。

このまま……

妄想の波に呑まれそうになって。

慌ててお冷やに口をつけた。

「ああ、ごめんね、いきなり困るよね……」

そわそわしてる一色くんは。

オルゴールの底のネジを回し始めた。

カチッと。

巻ききると。

そっと。

オルゴールをテーブルに置いた。

「あの時、言えなかったけど、僕は、相川さんのこと好きだったんだ」

両手で持ってるグラスが。

汗をかいている。

でも。

ちょっと冷静な自分がいるのが怖い。

「今は……?」

つばを飲み込んで。

上目遣いに様子を窺う。

「え……? 今? ああ、今も、好きだよ。昼間、相川さんと再会して……あの頃のままだって、その、かわいいままだったから」

頭から湯気が出た。

ううん。

もしかしたら。

噴火したかも。

「答えは、うん。すぐじゃなくていいよ……久しぶりに会って、今日の今日だし」

ずっと。

一色くんらしくなくて。

その。

はちゃめちゃさが。

私には。

かえって。

本当の気持ちのように想えた。

口をすぼめながら。

お冷を口にする。

グラスの氷は当に溶けていて。

温い水だった。

どうするの?

菫……?


トン。

テーブルにグラスを置いて。

両手を膝に。

一色くんを見つめた。

目線が交わって。

首をひねった一色くん。

私は。

小さく息を吸って。

「よろしくお願いします」

目一杯。

微笑んだ。

すると。

目の前の。

一色くんの顔が。

みるみるうちに。

眩しく。

煌いていく。

それは。

私が知る。

今までで。

一番の笑顔だった。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。