視界の中も。心の中も。
遠回りと言っても。
車に乗っていたのは。
10分ほどのドライブ。
車の中って。
想った以上に。
密室感というか。
一色くんしかいないから。
当たり前なんだけど。
意識が全部持ってかれてた。
車の心地よい揺らぎの中で。
このまま……
何処かへ。
連れて行って欲しい……
なーんて。
想ったりしてる自分がいて。
それで。
一段。
鼓動のギアが上がって。
自爆して。
ろくな会話も出来ず。
一色くんをチラ見しては。
そんな。
妄想。
想っただけです。
ファミレスに着いて席に座り。
オーダーを済ませると。
私はトイレに来た。
メイクをチェックして。
お母さんにメッセージを送る。
「ごめん。夕食いらなくなった」
よし。
ピコン。
『分かったよ。お泊りか菫も。頑張れ!』
返信早っ。
ん?
え?
なんでそうなるの?
そんな。
お泊りって……
ぽーっと。
暴想しかけて。
頬が染まる。
「帰る時、連絡する」
ふう……
ピコン。
『あら、帰ってくるの? そっか、残念。必要なら迎えに行くから』
ん?
どういうこと?
そんなに私に外泊させたいの?
まあ。
万一に備えて。
志帆の言う通り。
一番のお気に入りの下着は付けてるけど……
ん?
違うでしょ!?
もう……
お母さん。
絶対面白がってる。
「うん。その時は連絡する」
はあ……
なんだろ。
疲れた。
気を取り直して。
鏡を見る。
紅潮した頬。
潤んだ瞳。
恋する女子が。
見つめ返してくる。
明日の約束はしたけど。
でも。
おばあさんの用だもんね。
なんだろ……?
それより。
東京に行ってからの。
約束もした方がいいのかな。
鏡に向かって。
鼻にシワを寄せてみた。
食事中。
一色くんは。
「僕の生活は、あまり面白いことないから」
と。
前置きしつつ。
私に色々質問してきた。
テニスは続けてるの?
大学はどこ?
そして。
東京の住所も。
驚いたことに。
私が引っ越す。
東京の葛飾区というところは。
一色くんが住む。
千葉県の松戸市とは。
江戸川を挟んだ対岸なんだという。
これって……
運命?
なんて。
しかも。
この質問攻め。
私のこと。
興味あるよね……?
なんて。
やきもきしながら。
頼んだグラタンとサラダを。
ぺろりと平らげていた私。
食後のデザートのケーキを食べながら。
「神楽の感想聞いてもいい?」
そう切り出した一色くん。
「あっ、うん」
口の中のイチゴを飲み込んで。
アイスティーのストローに口をつけた。
「すごく、なんだろう。特に龍笛の音色が、心に響いたというか、魂がくすぐられてるみたいだった」
「魂かあ、やっぱり相川さんはロマンチックだね」
「そうかな、でも、高く済んだ、伸びやかな音色に包まれてたら、気持ちよかった。それこそ、あのオルゴールを聞いた時みたいに……」
想い出の記憶をノックか……
オルゴールを聞いた時に。
私が口にした感想。
確かにオルゴールも。
越天楽も。
あの夢たちが。
志帆の言う。
私の前世なのだとしたら……
「どうしたの?」
「ん?」
フォーク片手に。
覗き込むような視線を送る一色くん。
どうしようかな。
夢のこと……
話してみようかな……
「あの……」
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