揺られて
心地よい。
バスの揺れに抱かれつつ。
座席に座ってから。
手の中のスマホと。
お見合い中の私。
スマホからしたら。
使うなら使う。
使わないなら使わない。
はっきりしろと。
言わんばかりに。
時折。
暗転させてくる。
それを指でタップしてはを。
繰り返す。
どうしよう。
一色くんに。
今から向かってるとか。
何時頃着くとか。
メッセージした方がいいのかな?
しなくても。
約束したから大丈夫かな。
でも。
一応。
お知らせくらいはしてもいいよね。
ぐるぐると。
檻の中の動物みたいに。
おんなじところを。
うろうろしてる思考。
よし。
背筋を伸ばして。
指先を動かす。
「今、バスの中です。向かってます」
とりあえず。
打ち込んではみたものの。
このままフリーズ。
わっ。
ブレーキがかかって。
体が前につんのめる。
前の座席の背もたれに。
片手をついて踏ん張る。
ピコン。
ん?
着信だ。
姿勢を正して。
スマホを持ち直して。
わっ。
送信してた……
あわあわしながら。
メッセージの送り主を確認する。
『菫、がんばれー、絶対、次のデートの約束だけは取り付けなよ』
微笑みが込み上げる。
志帆は。
なんだかんだ。
傍にいなくても。
私の背中を押してくれるんだね。
でもさ……
「彼女とかさ、いたらどーすんの?」
『今さら何を言ってるの。今日約束したでしょ?』
『少なくとも、私が見た感じ、彼は女遊びをするようには見えないよ』
『そりゃ、絶対とは言いきれないけどさ、菫に見て欲しいって、自分が大切にしてること』
『だから、脈はあると想うよ。ファイティン菫!!』
うん。
なんか。
私からの返信を先回りしたメッセージたち。
「ありがとう。志帆。ファイトいっぱーつ! 行ってくる!」
『うん。その意気。ちょっと違うけど』
え?
何が違うの?
小さく息をつく。
ピコン。
あっ。
『了解。気をつけて、出迎えは出来ないけど、社務所で名前を言って、僕の知り合いだって』
『簡易だけど、観覧席に通してくれるはず』
『それから、終わったらその席の辺りで待ってて』
やばい。
分かってはいたけど。
文字を目で追っていったら。
心臓が壊れそう。
口の中はカラカラだし。
なんか。
暖房入ってる?
視線をさまよわす私。
あっ。
返事しなきゃ……
えーと。
「分かった、社務所を訪ねるんだね。席まで用意してくれてありがとう」
よし。
「終わったら、待ってまし」
わっ……
間違えた。
『じゃあ、また後でね!』
気づかれてない?
みたい。
「うん。また後でね」
なんか。
頭が痛い。
『次は、赤山八幡前、赤山八幡前……』
あっ。
キョロキョロと。
降車ボタンを探す。
ピンポーン。
誰かが押したみたい。
「はぁ……」
座席に凭れる。
スマホをバッグにしまって。
両手で顔を扇ぐ。
作り出した僅かな風が。
気持ちいい。
大丈夫……?
私……
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




