いざ……
バスから降りると。
ひんやりとした空気に包まれた。
赤山八幡神社前という停留所だけど。
神社はすぐ傍にあるわけではなくて。
ここから少し歩く。
通りに面したこの辺りは。
お祭りという感じはしない。
よし。
気合いを入れてはみるものの。
頭も心も鼓動も。
何もかも。
落ち着くはずもなく。
住宅が建ち並ぶ路地を進んでいく。
思いの外。
人通りはあって。
みんな同じ方向に進んでいる。
家族連れや女子の集団が。
笑顔や会話を咲かせている。
自転車に乗った子供たちが。
奇声をあげなが。
ら追い越していった。
やがて。
畑が点在し始めて。
小さな川に架かる橋を渡ると。
出店が道路の両端に並び始めた。
ソースの香ばしさやお菓子の甘い匂いが。
風に混ざって伝わる。
道の右側に丘が張り出してきて。
鳥居が見えてきた。
赤山八幡神社はこの丘の上にある。
人々の流れに乗りながら。
鳥居をくぐり。
階段のぼっていく。
私の前は。
母親に連れられた。
小さな女の子で。
段差を一段一段。
数えながら進んでいた。
階段の両脇には。
吊るされた提灯が連なり。
辺りを夕焼けみたいに染めている。
さすがに。
一人で来ている人は見かけない。
よいしょっ。
最後の一段をのぼる。
前の女の子のお陰で。
階段が八十八段だったことを知れた。
石畳の参道が。
真っ直ぐ奥に伸びていて。
また。
鳥居をくぐる。
境内は広く。
すでに大勢の人で賑わっていた。
手水舎でお清めをして。
反対側にある。
社務所らしき平屋の建物を目指す。
人だかりの中を縫うように進んで行く。
人の熱気なのか。
照明のせいなのか。
歩いてきたからか。
それとも……
体に火照りを感じる。
吐息を落として。
ショルダーバッグのベルトを握りしめる。
社務所の面前には。
おみくじや記念スタンプが置かれている。
その一角に。
受付と記されている窓口があった。
窓ガラスの向こうには。
同世代くらいかな?
巫女装束に身を包んだ。
女性が座っていた。
「こんばんは、私、里村といいます。その、一色くんの……知り合いなんですけど」
「こんばんは、ようこそお参り下さいました。里村様ですね。承っております。係の者がご案内致しますので、そちらで、少々お待ちください」
私の左側を手のひらで指し示し。
微笑みながら席を立った女性。
何かのキャラクターのような。
高くてかわいらしい声。
満面の笑顔に。
快活な話し方だった。
しかも。
私が名乗っただけで。
観覧席に案内する客だということを憶えていたわけでしょ。
感心しながら。
私は。
窓口から離れて。
案内係の人を待った。
バッグからスマホを取り出して時間を確認する。
17時51分。
「お待たせしました」
さっきの女性の声がして。
顔を向けたら……
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




