恋の斬り込み隊長
『菫にも恋の予感!!』
『誰なの? 行くの?』
『いいなぁ、ラブレター。羨ましいな』
志帆からの連投メッセージ。
そもそも聞いた質問の返答になってるような。
なっていないような。
「志帆は、心当たりない? 送り主に?」
『ないよ。ねえねえ行くの?』
「うーん。迷ってる。相手が分からないし、どこの橋かも分からないし」
『金華橋じゃないの?』
「どして? 橋の名前書いてないよ」
『でも、高校に行くとき使ってたのは金華橋でしょ?』
「そうだけど」
『私、暇だから、ついていく』
「それはありがとう。嬉しい。亜季も岡田も予定があるんだって」
『そうなんだ。だって気になるよ。菫にも恋の季節がやってくる』
「でも、何もわからないからさ、ねぇちゃんと考えてよ」
『んー。菫さ、テニスに夢中だったからなー。部員の子とかは?』
ん?
テニス部の子?
えーと。
1年の時、同じクラスだったのは……
渚ちゃんだけだ。
男の子はいない。
「男子同じクラスにはいなかった」
『ますます、ミステリアスだね。どんな人かな。楽しみ』
「志帆なら、躊躇いなく行きそうだもんな」
『そりゃあ、行くでしょ。夜なら考えるけど、昼間でしょ?』
「うん、流石にお昼の12時でしょ。夜なら怖いけど」
文字を打ち込んで。
ぶるぶると寒気がした。
『でもさ、橋の上でしょ? 逃げ場がないね』
「確かに……」
長良川は大きな川だから。
架かる橋も長い。
橋の真ん中って設定とか。
ロマンチックだなって想うけど。
実際、志帆の言うように逃げることは出来ない。
仮に金華橋だとしても。
相手は私のことを知ってるけど。
私は誰だかさっぱり見当もつかない。
『菫より、私の方がドキドキしてるかも。まさに恋の架け橋』
「金華橋なのかな」
『だと思うけど。お城が見える橋で、菫に関係がありそうなとこって、他にある?』
うーん。
お城か。
なんの違和感も持って居なかったけど。
だって。
お城と云えば岐阜城しかありえない。
「あのさ、岐阜城以外にお城ってあるのかな」
『あるでしょ? 知らんけど。何か他に心当たりでもあるの?』
「ううん。ない」
『まあ、あれこれ考えてもしょうがないよ。金曜日。行ってみよう』
確かに。
でもさ。
考えちゃうでしょ?
好きって。
書いてあるんだもん。
私は。
まだ。
言葉にも。
文字にも。
したことがない。
そうだね、独りより。
志帆がいてくれから心強いし。
「うん。そうだね。ありがとう」
『いいよ。じゃあね』
口を尖らせて。
息を吐きながら立ち上がる。
そして。
ベッドにうつ伏せに倒れ込む。
うーん。
手紙一つで。
友達たちの言葉にも。
テンションが。
上がったり。
下がったり。
なんか。
疲れた気もする。
志帆の言うように。
場所が金華橋なら。
金曜日に誰だか分かるけど。
違う場所なら。
恋した君は分からないまま。
「ふわぁ」
あくびをしながら。
寝返りを打って。
天井を見つめた。
瞼が重くて。
ゆっくりと閉じられて。
……だめだめ。
片付けないと。
力を入れて目を見開く。
けど……
睡魔に勝てないみたいで……
もぞもぞと布団の中に潜り込んでいた。
ぬくもりが追い討ちをかけて。
夢の中へと――
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