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想いの行方  作者: ぽんこつ


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4/33

忘れていたこと

おじいちゃん、おばあちゃん。

伯父さんや伯母さんから、餞別という名のお小遣い貰って。

嬉しいような。

寂しいような。

家に帰ってきて。

お風呂に入って。

すっきりして。

でも。

頭の中に居座ってる。

もやもやの原因は晴れないまま。

亜季や志帆からの返事もこない。

例の手紙と写真をベッドの上に並べて。

また、迷路の中に入り込む。

せめて。

指定された橋が分かればいいんだけど。

家から近いのは金華橋。

上流には長良橋、下流には忠節橋。

もちろんそれ以外にも橋はあるけど。

私が使ったことがあるのはこの三つくらい。

返事はともかく。

誰なのか気になるでしょ?

もし、場所が分かったとしたら。

岡田の言う通り、亜季と志帆に付き合って貰おうかな。

ピコン。

スマホが鳴る。

先に返信が来たのは亜季だった。

『何それ? 怖くない?』

慎重な亜季らしい一文。

「そうかな? でも、どう? 心当たりない?」

『高1の時でしょ? 中学の時のあの子は? あーん。名前出てこない』

『確か、1、2年の時、一緒のクラスだった。学級委員やってた子』

え?

中学?

私はベッドから飛び降りて。

ダンボールの中から、中学の卒業アルバム。

それから集合写真を引っ張り出す。

高校以上に分からない。

わっ。

懐かしいなぁ。

私の視線が捉えたのは。

気になっていた。

テニス部の神田くん。

高校はテニスの強豪校に進学して。

高1の時にインターハイに出場して。

新聞にも載ってた。

手の届かない遠くに行っちゃった感じがしたのを覚えている。

頬が緩んで。

あっ。

違う違う。

えーと。

学級委員って言ってたよね……

1年の時の集合写真を指でなぞって。

指が止まる。

端にしゃがんで微笑みを向ける男の子。

名前は……

スマホ手にメッセージを打ち込む。

「沢田くん?」

『そうそう! その子じゃない?』

「でも、高校違うよ」

沢田くんは名古屋の進学校に行ったから。

『そっか』

ん?

「どうして? 亜季は沢田くんだと想ったの?」

『だって、あんなことあったじゃん』

「あんなことって?」

『え? まじで言ってる? 覚えてないの?』

へ?

「……なに?」

『菫、それはない。あんたさ、沢田くんに助けられたでしょ?』

助けられた?

あっ。


あれは中学1年の夏休み。

部活の時のこと――

男子部員のイタズラで。

テニスボールが木の枝に引っ掛かって。

私はラケットを伸ばしながらそれを取ろうとしていた。

背伸びして。

もう少しで届きそうで。

よし。

少しかがんでジャンプして。

ラケットの先がボールに当たって。

やった。

地面に着地した時に。

「……っ!」

右の足首をひねって。

その場にしゃがみこんだ。

立ち上がろうと、足を動かすと痛みが走る。

靴下の上から足首を触ると。

熱を持って。

少し腫れているみたいだった。

参ったな。

声を出して誰かを呼ぼうとしたら。

「どうしたの?」

顔を上げると。

剣道着姿の沢田くんが立っていた。

「ちょっと、足を挫いちゃって」

「立てる?」

私は両手を地面について。

左足だけで立ち上がろうとして。

「痛っ……」

尻餅をついた。

「ちょっと見せて」

沢田くんはしゃがみこんで。

投げ出された私の足を見て。

「触るよ」

優しく微笑んだ。

「うん」

私はスカートを押さえて。

顔を伏せる。

「痛い……」

「ごめん。捻挫だな」

「そっか……」

「捕まって」

「え?」

「立たせるから」

「え。あ、うん」

戸惑いながら。

沢田くんの首に手を回す。

汗の匂いがして。

息づかいが近くて。

走ってもいないのに心臓が早い。

すると、私を抱えて。

軽々と立たせてくれた。

しゅっと、手を引っ込めて。

お礼を言おうとしたら。

「わっ」

瞬く間にお姫様抱っこされていた。

「え! ちょっと」

スカートの裾を押さえようとすると。

「スコート履いてるんだろ? そんなことより、早く冷やした方がいい」

「……はい」

「それから、病院行った方がいい」

そう言いながら歩き出す沢田くん。

「で、なんで、あんなところで足挫いたの?」

私が理由を説明していると、保健室に着いた。

そして、アイシングをしてくれて。

顧問の先生を呼びに行ってくれた。

保健室で休んでいると。

イタズラをした男子部員が謝りに来た。

後で知ったんだけど。

沢田くんが、本人たちや部長にめちゃくちゃ怒ったんだって――


助けてくれたお礼は言ったけど。

その後のことのお礼は言えてなかったな。

しかも、亜季に言われるまで。

忘れちゃってた。

「想い出しました。そうだった。でも、それだけでしょ?」

『沢田くんの方は、そうでもなかったみたいよ』

「??? 初耳だけど」

『まあ、岡田から聞いた話だけどね』

「ふーん。そう言えば沢田くん、どうしてるのかな?」

『分かんない。岡田なら何か知ってるんじゃない? あいつ剣道部だったし』

「わかった、ありがとう。あのさ明後日ってひま?」

『あー。ごめん。デートだわ』

「そっか、ありがとう」

『うん。またね』

私は、卒業アルバムの沢田くんの写真を見つめた。

センターパートで分けた髪型。

真面目な雰囲気そのまんま。

「その節は、ありがとうございました」

ぺこりとお辞儀をした。

ピコン。

手元のスマホが震えた。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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