つながりって。不思議。
「うーん……」
腕を組んだまま。
固まった風崎くん。
「なんか、特長ないか? がたいがいいとか、目が小さいとか、鼻が低いとか」
例えが独特。
志帆は私を見る。
小さくうなずく私
「あっ、確かだけど、テニスが上手かった気がする。背格好は普通かな……」
志帆と顔を合わせたまま答える。
「ふーん。テニスか……」
ん?
視線を感じる。
風崎くんが……
見てる。
私は髪を直すフリをして。
目を伏せた。
「悪い。分からん。何そいつ、相川の初恋相手とか?」
「へ!?」
肩が跳ねて。
裏返る私の声。
「ハハハ、冗談だよ。いたような気もするけど、マジで分からない」
「そ、そっか」
「赤山小は大概、赤山中に行くから、小中ほぼ一緒なんだよな」
「そうなんだ」
志帆が相づちを打ってくれた。
「覚えがないってことは、仮にいたとしても、二人が会わなくなったのは、転校とかしたんじゃないのか?」
「はーん。なるほどね」
納得してる様子の志帆。
「じゃあ、またな。って、またがあるか、分からんけど」
風崎くんは。
片手を挙げて。
微笑んだ。
「はいはい、じゃあね」
両手を振る志帆。
「風崎くん、ありがとう」
軽く頭を下げた私に。
一瞬。
風崎くんの笑みが消えて。
でも。
すぐに。
ふっと。
鼻で笑った。
そして。
くるりと軽やかにターンして。
「いちに、サンバ、にいに、サンバ……」
歌いステップを踏みながら。
颯爽と去っていく風崎くん。
その後ろ姿を見ながら。
こぼれた微笑み。
自分の想ったことを。
言葉に出来るんだよね。
志帆や風崎くんは。
イケメンな風崎くんだから。
言えてるのかなって。
告白された当時は感じたし。
じろじろ見られたのも。
いい気はしなかったけど。
私のことを。
想ってくれた気持ちは。
本物だったのかなって。
あれ以来。
話す機会はなかったし。
今の短いやり取りだけど。
そんな風に。
感じた。
自惚れなのかな。
「なんだろね、あいつ。無駄にいい声なのが、しゃくだけど」
「ふふ。確か、軽音のボーカルだったよね? それに……」
「なに?」
「あ、うん。風崎くん。根は正直なのかもね」
「正直ねぇ……て言えば、菫は分かりやすい。あいつにバレバレだったし」
「あ、うん。だね」
私は。
肩をすくめて。
舌を出した。
結局バレるのなら。
最初から。
素直に聞いてればね。
勝手に聞きづらいって。
感じて。
独りよがり。
なんだよね~。
「まあ、そこが、菫だけどね」
「はいはい、そうですよ。ああ、でも、土岐くんの話を振ってくれてありがとう」
「まあね。そこは志帆様の縄張りですから」
腰に手を当てて。
胸を張る志帆。
ん?
縄張り?
なんか違うような気もするけど。
「ねえ? お腹すいた。お昼食べてないよね私たち。もうすぐ15時になるよ」
私に顔の前に。
腕時計を突き出した。
「ああ……確かに」
「ああ、って。まあ、菫は一色くんとやらで、お腹一杯、胸一杯かもだけど」
肘で小突いてくる志帆。
「それはそれ。お腹は空いてるよ」
「じゃあ、何食べる?」
「そうだな」
「おーい!」
背後から。
風崎くんの声が通り抜ける。
息せき切って。
駆け寄ってきて。
そのままの勢いで。
話し出した。
「関係あるか、分からないけど、家の近所に、ん? 近所でもないか」
「なに?」
「ああ、土岐庵って蕎麦屋が金華橋通りの南蝉の交差点を……こっちから行ったら……左に曲がって、少し行った所にあるんだ」
風崎くんは。
視線は斜め上を見たまま。
人差し指を四方に向けていた。
「土岐庵?」
「まあ、土岐って名前が同じなだけだけど、冷やしたぬきそばの味は保証する」
志帆と目が合った。
見開いた目が。
キラリとしている。
土岐くんとの関係は不明だけど。
恐らく。
私と志帆の腹の内は同じ。
自転車だから。
行ける距離だし。
冷やしたぬきそばと耳にして。
お腹が欲しない訳がない。
「どした? まあ、役に立たない情報かもしれんが」
私と志帆は。
勢いよく首を振る。
「風崎、ありがとう」
「お、おう」
「風崎くん、ありがとう」
「あ、ああ……喜んでもらえて、良かったよ。じゃあな」
首を傾げながら。
歩いて行く風崎くん。
「やってるか、調べる」
志帆は手早くスマホを動かして。
ニヤリと私を見た。
「志帆。今日は私が奢る」
「え? いいの?」
「うん。釣り合い取れないけど。今日のお礼に」
「やったー! お代わりしよ!」
ふわりと流れた風の中で。
志帆の微笑みが。
煌々と咲き誇っていた。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




