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想いの行方  作者: ぽんこつ


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そばにいる

「菫?」

「うん」

そっとスマホを持ち上げて。

唇を噛みながら。

画面に視線を落とす。


どきん。


と。

鼓動が頭で一つ。

大きく鳴った。

『いいよ。神楽は1時間くらいの予定だから、終わったら。連絡するよ』

なんでだろ。

一色くんの声で。

文章が脳内再生されてる。

「おーい。菫?」

私の目の前で。

志帆の手のひらが。

上下していた。

「ん?」

「固まってないで、返信して」

「あ、はい」

えーと……

「分かった。連絡待ってるね」

よし。

「ちょっと待った」

「なに?」

「その前に、ありがとう。楽しみにしてる。って。入れて」

「え?」

「え? って。楽しみじゃないの?」

「そりゃあ、楽しみだけど……」

「うん。なら入れて」

微笑みながら。

首を傾げる志帆。

「分かったよ」

口をすぼめて。

画面を見つめる。


じゃあ……

そっと。

指を動かす。

「ありがとう。楽しみにしてる。連絡待ってるね」

なんか。

ほっぺたが熱いかも。

「うん。よきよき。素直な菫はかわいい」

「はあ?」

「ほら、送って送って」

「もう……」

送信ボタンを押す指先が。

ほんのわずか。

震えて……

息を飲んで。


えい!


スマホを握りしめた手と一緒に。

胸を撫で下ろす。

「よしよし。頑張った。菫は偉い!」

私の頭を撫でる志帆。

もう……

半ば呆れながらも。

一抹の想いがわいてきた。


チラッと隣を見る。

ご機嫌そうな志帆は。

踵を上げ下げ。

鼻歌中。

ん?

このメロディ……


MONGOL800の『小さな恋の歌』。


ふふふ。

恋の歌だけど。

今の私にぴったりかも。

さすがは幼馴染みだな。

「志帆。ありがとう」

「何? 急に?」

「今日さ、一緒に居てくれて」

「ん? どした? 改まっちゃって」

「たぶん。私一人なら、今日こうやって、一色くんと会えなかったと想う」

「そう?」

「うん。それに、また話せる機会も作れなかったかな……って」

「まあ、それに関しては、私の方が一日の長がある分野だしね」

「確かに」

肩を揺すって。

私が笑うと。

「私も恋した~い」

志帆は両手で伸びをして。

後ろ手に体を支えながら。

顔を上げた。

私も。

そっと。

顎を伸ばす。


枝葉の隙間から。

降り注ぐ。

光のシャワー。

柔らかな風が。

私を追い越しては。

巻き散る光線。


夢の中の。

さよも。

姫様も。

美鈴も。

結末はどうあれ。

自分の気持ちに素直だった。

どの時代も。

事情やしがらみはある。

だけど。

ちゃんと意思を持った女性たちだった。

もし。

彼女たちが。

私の前世とまで云わずとも。

えにしがあるのだとしたら。

今。

私だけが。

尻込みしてちゃ。

いけないような気がして……


そう。

想えたのも。

少しの勇気と。

志帆や。

亜季に岡田。

みんなが。

私のことを想ってくれている。

それが。

私の背中を。

ううん。

私の想いを。

確実に。

後押してくれたのには違いないから。


ピコン。

何気に覗いた画面。

ふわりと。

緩む口元と。

ゆっくり。

下がった目尻。

『僕の方こそ楽しみにしてる』

一度。

体温が上がった気がする。

「いい顔してるよ。菫」

「へ……?」

目が合った志帆は。

ウインク一つ。

「恋する女はきれいさー!」

「それ、志帆のお父さんの十八番じゃん」

私は志帆の腕に抱きついて。

その続きを。

一緒に歌った。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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