お節介な勇気
「だって、女の子から、もらったんだよこのあめ」
私は舌を出して。
あめの欠片を志帆に見せる。
「じゃあ、私が気づかなかっただけかな」
志帆は。
怪訝そうに。
口を尖らせた。
「そうじゃない」
辺りに視線を配るも。
遊ぶ子供たちの中に。
さっきの女の子の姿は。
見つけられなかった。
ん!
志帆が私の腕に抱きついてきて。
コツンと。
私の肩に頭を乗せる。
「まあ。結果的に一色くんと、お近づきになれたわけだし、良かったんじゃない」
「うん。ま、あね」
「あいつとか、ラブレターとか気にしてるんだろうけど」
志帆は。
さらりと。
風のように。
私の心の声を言い放つ。
「よく、ご存知で……」
苦笑いしかない。
「今はさ、とにかく、一色くんのことを考えようよ」
「はい」
「うむ。いいお返事。それに、ベンチに座ってた二人の姿。お似合いだったな~。それこそ恋人みたいで」
うつむく私を。
下から覗き込む志帆。
「え、そ、そう……?」
唇をすり合わせる私。
「それに彼、地味で真面目そうには見えたし」
「一色くんは真面目だよ。昔と全然、雰囲気とか変わってなかったし」
「まあ。人は見かけによらないからね。ああ見えて。夜は熱いかも~」
ぎゅーっと。
腕にしがみつく志帆。
「はあ?」
「はいはい。でもさ、祭りの夜なんていいよね」
まるで。
自分が行くみたいに。
嬉しそうな志帆は。
私の二の腕をもみもみしだす。
「ちょっ。くすぐったい」
私は腕を振りほどいて、
二の腕をさする。
「あっ。そうだ、志帆も一緒に行かない? お祭り」
「なんで?」
「なんでって、一人で見に行くのもあれかなって」
「だって、その後、彼と会ったりするんでしょ?」
ぶんぶんと。
首を振る私。
「は? ただ、その和楽器バンドの演奏を聞きに行くだけなの?」
「ふん。ああ、バンドじゃないよ」
がくりと。
うなだれる志帆。
「あのね……あっ、連絡先交換したんでしょ?」
「ふん」
「じゃあ、今から私が言う通りにメッセージ送って」
「ん? なんで?」
「いいから、早く、スマホ出して」
志帆は。
急かすように。
両手で私の腿を揺する。
「分かったよ……」
言われるがまま。
バッグからスマホを取り出す私。
時刻は。
14時半になろうとしていた。
「じゃあ、言う通りに打ってよ」
「どうぞ」
「さっきは、話せて嬉しかったです。演奏が終わったあと、また、話せますか? 返事、待ってます」
「は? 何これ」
「はい、送る」
志帆の指先が。
素早く動いて。
送信ボタンを押していた。
「ちょっと」
あわあわして。
スマホを落としそうになる。
「よしよし。なんて返事来るかな」
足をバタバタさせて。
ニコニコ顔の志帆。
「もう。どーすんの?」
「ちょっとくらいデートしちゃえばいいじゃん」
「いきなり?」
「ねえ、菫。浴衣は?」
「は? あるけど」
「じゃあ、浴衣着て行きなね」
「春なのに?」
「春でも夏でも。男子はうなじに弱いから」
自分の後ろ髪を持ち上げて。
私に見せる志帆。
「なんか。気合い入れすぎじゃない?」
「菫はそれぐらいしなきゃ、あれ? この子、俺に気があるのかなって。想われるように」
「でも、心の準備があるでしょ?」
「早く返事来ないかな~」
志帆は。
胸の前で両手を合わせて。
首を左右にかしげている。
「もう。聞いてる?」
まあ。
全て。
志帆の仰る通りなんだけど。
一色くんが。
オーケーしたら……
あっ。
ごくり。
小さく砕けたあめを飲み込んだ。
ピコン。
手の中のスマホが鳴る。
志帆と目が合って。
志帆は視線を。
チラチラとスマホに投げる。
大きく息を吐いて。
スマホを持ち上げた。
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