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想いの行方  作者: ぽんこつ


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35/53

恋愛マスター志帆!?

冷たい水で顔を洗うと。

シャキッとするはずなのに。

まったく。

そうならない。

タオルで顔を拭いて。

鏡を見た。

寝癖が踊る頭に。

覇気のない表情の私。

ラブレターを読んでからというもの。

憑りつかれたみたいに。

四六時中考えていたのに。

確実なことは。

何も分からないまま。


まあ。

土岐くんにしろ。

一色くんにしろ。

夢の中の出来事と。

結び付いたとしても。

ラブレターの送り主だと。

決まった訳ではないし。

場所だって定かでない。

肩でため息を落として。

洗面所を後にした。


部屋の扉を開けると。

丸テーブルのそばに座っていた志帆は。

片手を上げた。

「お帰り菫。あのね誰だか分かったよ」

「ん? 誰って誰のこと?」

「やだなぁ、ラブレターの送り主だよ」

「え……!?」

志帆は手招きをして。

脇の床をトントンと叩く。

あっ。

テーブルの上には。

ラブレターが置いてある。

心の中で。

苦笑い。

まあ。

お互い。

プライバシーなんて。

あってないようなもの。

だもんね。

私は志帆の隣にぺたんと座る。

「ちゃんと、ラブレターに書いてあるよ、な・ま・え」

「うそ!? どこに?」

「よくある手法だよ。場所は分からなかったけどね」

「手法?」

「いい。この部分の頭文字。続けて読んでみな」

志帆はラブレターを指差した。

ん?

えーと。

ゆっくりと視線を紙面に落とす。


『一年生の……

月並みだけど……

しばらくの間……

君を見て……

とにもかくにも……

下ろした髪も……

ループするんだ……』


頭文字を繋げると。


いつしきとおル……


「どう? 分かった?」

「うん。一色くん。一色透くんだ……」

とくん。

と。

跳ねた心臓が。

頬を緩ませ。

そっと。

熱をもたらした。

「かわいい菫。食べちゃいたい」

ぎゅっと。

抱きついてきた志帆。

「もう。志帆ってば」

その腕をつかむ私。


あっ……

夢の中の。

かきつばただ……

それに。

通春の手紙にも……

名前が入っていた。

「だって。彼ならまんざらでもないんでしょ? 菫?」

「へ!? え、あ、まあ……そう、かな」

「ほらほら、ならなら、そんなベージュのブラじゃなくてさ、かわいいのに着け変えなよ」

「もう……例え、その一色くんだとしても、今日の今日は、ない」

「うんうん、分かった分かった。今日はね」

私を覗き込むようにして。

細めた瞳で。

じーっと。

見つめてくる志帆。

「し、支度するから」

私は志帆の腕を振りほどいて。

テーブルに。

折り畳みの鏡を立てかける。

少しだけ。

顔が赤い私が。

はにかんでいる。

一色くんか……

唇を噛みしめる。

「あっ。志帆、櫛取って」

「はいはい」

なら。

ポニーテールにしよう。

「そばにある、白いシュシュも取って」

「はいはい」

「それから、ポーチもお願い」

「はいはい」

私は櫛で髪を梳く。

気持ち。

私の顔が。

晴れやかに想えた。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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