いよいよの朝
薄明かるい部屋。
なんか。
目が覚めて。
ぼーっと。
天井を眺めている。
何かが。
分かったような。
分からないような。
夢の中で。
美鈴が香袋に忍ばせた匂いは。
土岐くんが。
私にくれた小瓶の香りと同じ。
そして。
仙次郎の苗字は――
土岐。
ということは。
あのラブレターの主は……?
土岐くん。
でも。
そう。
仙次郎のオルゴールは。
トルコ行進曲だって。
木目調の小さな箱の表面に。
彫られていた花。
なんだったっけ。
けど。
一色くんが持っていたのと同じ。
ん?
んん!?
どーいうことですかー!
さっぱり。
ちんぷんかんぷん。
しかも。
夢の結末。
見れなかったし……
「んー」
体をくねらし。
両手を伸ばす。
「はぁ」
でもでも。
橋の場所は……
金華橋でいいのかなぁ。
他に想い浮かばないし。
タン、タン、タン……
階段をリズムよく駆け上がる足音。
ガチャ。
ん?
「もう。まだ寝てる。ほら、遅刻するよ」
すたすたと部屋に入ってきた志帆。
シャッー。
カーテンを開け放ち。
まばゆい光が立ち込め。
「志帆まぶしいよ」
私は咄嗟に布団を頭から被る。
「はあ? 何時だと思ってるの?」
「11時でしょ……」
「分かってるなら……」
!?
掛け布団を剥がされる私。
「志帆。寒い……」
「ほら、菫。早く支度してよ。って、お腹丸出し、子供の頃のまんまだね」
「もう!」
膨れた私は。
ゆっくりと体を起こす。
志帆はデニムのホットパンツに。
白地のプリントTシャツ。
夏を先取りって感じ。
「ねえ、何着てくの?」
「ちょっと……」
クローゼットを開けて。
服を引っ張り出している。
「なんにもないね。そっか。段ボールの中?」
「そうだよ。そこにあるのは持ってかないやつ」
「ふーん。あっ、これいい。やっぱミニだよね。ミニ。下着もさ、かわいいの着けてぇ」
「はあ? なんで、そうなるの?」
「万が一、あるかもしれないじゃん。ねぇ」
肩で私を小突いて。
意味深な。
流し目を送ってくる志帆。
ぽーっとしだす私の顔。
「ないない。だって……」
「上はさ、そーだな、少し胸元が空いてるやつとか……」
「ポロシャツにジーンズで行くから」
「へ? 地味じゃん」
志帆の声をよそに。
着替え始める私。
「いいの」
「まあ、仕方がない。でもさ、誰なんだろうね。恋に奥手の我らが菫に想いを寄せてたの」
「あっ、それなんだけど……」
ピコン。
ベッドの上でスマホが呼ぶ。
ん?
岡田だ。
『赤山小の卒業アルバムに土岐ってやつは載ってなかった』
『もうすぐだな。気張らずに』
「ん? 誰から?」
「あ、岡田。例のテニスをして遊んでた男の子、お母さんが名前覚えてて、土岐くんって子でね」
「へぇ。土岐ね。私は知らないな」
「その土岐くんのこと、調べてくれたんだけど、分からないみたい」
「ふーん。確かにあいつ、なんだかんだで顔広いもんね」
「そだね」
私は岡田にメッセージを打つ。
「ありがとうね。今、志帆と一緒」
「もう少ししたら行ってくる」
よし。
スマホをポケットにしまう。
「早く顔洗ってきな」
志帆はベッドを弾ませながら。
その端に腰かけた。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
「5分で準備して」
「はいはい」
志帆の声を背中で聞きながら。
部屋を後にした。
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