眩まして
部屋に駆け戻ると。
ぴょんとベッドに飛び乗って。
ぺたんと座り込む。
岡田宛に手早くメッセージを打ち込む。
「ごめんね岡田。頼みがあるの。あのさ、赤山小学校出身の友達とか知り合いいない?」
「いたら、赤山小学校にいた、土岐くんって、男の子のついて聞いて欲しいの」
「その子の下の名前と、今どこにいるか。分かったら教えて欲しい」
ふぅ……
我ながら随分勝手なメッセージだなぁ。
そう。
想いもしたけど。
私の周りには。
赤山小学校出身の子はいないから。
でも。
あんな出逢いだったなんて。
入院してた記憶もない。
私の記憶のあやふやさは。
その時の影響なのかな。
仮に。
ラブレターの送り主が土岐くんとして。
誰に私のことを聞いたのかな?
一色くんにしても。
でも。
どうなんだろうね。
土岐くんに対しては。
恋という気持ちは。
なかったと想う。
一色くんに対しては――
スマホを握ったまま。
ころんと。
横になる。
淡い想いはあったけど。
吹奏楽部か……
何の楽器やってたのかな。
夢の中の笛ってことはないか?
でも。
夢繋がりなら。
土岐くんがくれた小瓶の香り。
なんだけど。
やれやれ。
こんだけ考えて。
調べても。
この二人だという確証もない。
もし全く知らない人だったら……
このモヤモヤした時間が。
とっても虚しいものになる。
土岐くんは。
何も言わずにいなくなった。
一色くんは……
ああ。
高校1年の終業式の少し前。
部活の合間。
トイレに行った帰りに。
昇降口で会った時に――
「相川さん、お疲れさま、今日も頑張ってるね」
「あっ。一色くん。今、帰り?」
一色くんは。
トントンと、
爪先を地面に打ちつけた。
「うん」
首の後ろを。
手でさすりながら。
はにかむ一色くん。
あっ。
胸元に手を添えて。
膝をこすり合わせた。
弾き始めた鼓動が。
口から出そうになる。
でもね。
嫌な気はしなくて。
どんな風に想ってるのかな。
って。
「あのね。僕、転校することになったんだ」
「へ?」
「大好きなテニス頑張ってね」
「え? あぁ……うん」
胸に添えた手が。
ぎゅっと。
ウェアを握りしめていた。
何か言いたいのに。
声が出ない。
一色くんはゆっくりと歩き出した。
顔が斜めに。
横に。
そして。
後ろ姿に。
ピタッと止まった一色くん。
夕焼けを背に、
ゆっくりと振り返る。
ビクン。
体が小さく跳ねた――
気がした。
「相川さん、その……」
うつむいた一色くんの顔に。
斜陽がほんのり影を作る。
ごくりと唾を飲み込んだ私。
胸に添えた片手を。
もう一方の手で。
そっと包み込む。
「な、に?」
息を吸った気配がして。
顔を上げた一色くん。
「元気でね」
あっ。
髪が淡く赤に染まって。
金色に縁取られだ輪郭が。
目映くて。
見惚れてしまって。
微笑みを残して。
背を向けた一色くんを。
ただただ。
見送ることしか出来なかった。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




