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想いの行方  作者: ぽんこつ


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22/33

お城は知っている。

二人いる。

岡田に言われるまで。

全く。

想い出しもしなかった。

というか。

忘れてた。

えー。

でも。

告白された人って。

忘れちゃうものなの?

なんか。

自己嫌悪。

「はぁ……」

重い吐息を吐いて。

のそのそとハイハイして。

そのまま床に降りる。

高校の卒業アルバムを取って。

テーブルの上に置いた。

「よいしょ」

膝を立てて座る。

そっと。

ページをめくる。

まずは一人目。

何組だったんだろう?

彼は。

4組にいた。

風崎豪かぜさき ごうくん。

まあ。

かっこいいとは想う。

目鼻立ちが整って。

目に力があって。

確か。

軽音部だったような……

告白されたのは。

クラスが一緒だった。

1年生の夏休み。

しかも。

たまたま会ったのは。

金華橋……

えー!?

絶対違うし。

彼があんな手紙書くイメージがない。

って。

余り喋ったことないんだけど。

あー。

想い出してきた。

うん。

金華橋だけど。

橋のたもと。

早朝で。

部活の練習に行く時。

向こうから声をかけてきたんだ。


まだ6時を過ぎたぐらいなのに。

蒸した空気が。

テニスウェアから覗いた肌に。

のぼりかけの陽射しと共に。

じとっとまとわりつく。

元気な蝉の声を浴びながら。

長良川の土手へと続く。

坂道を上る。

視界に入ってくる。

山の上のお城。

濃い緑と青い空に挟まれて。

その白さが一層際立っていた。

信号は青。

横断歩道を渡って。

金華橋にさしかかった時。

「よっ、おはようちょっと待って」

息せき切った声が。

背後から飛んできた。

ん?

私?

ブレーキをかけて。

サドルからお尻を下ろして。

自転車を跨いだまま振り返る。

キュッ。

ブレーキの音を鳴らして。

並んで止まった自転車に乗っていたのは。

えーと。

同じクラスの風崎くん。

私を見て微笑んで。

「おはよう。相川」

片足を跳ねあげて。

自転車を降りた。

「おはよう。何かよう?」

「ああ」

風崎くんの視線が。

上から下へ。

そして。

また上がる。

もう慣れたけど。

なんか湿気みたいで。

でも。

自転車のハンドルを握ってるから。

なす術なし。

「かわいいな、似合ってる」

いきなり言われて。

ドクン。

て。

鼓動のスイッチが入って。

少し視線逸らす私。

「そう?」

「なあ、今日、部活何時に終わるの? 終わったら飯でも行かない?」

「うん。行かない」

うるさい心臓がバレないように。

すまし顔で。

平静に。

そもそも。

この格好で行けないし。

その……

「ん? え?」

「部活遅れちゃうから」

自転車に乗ろうとする私。

「ちちちち、ちょっ、待って」

「もう。まだあるの?」

私を覗き込むように。

屈んで目線を合わせる風崎くん。

「俺のこと嫌い?」

「ん?」

私は思考停止。

「あ、それとも、好きな奴とかいるの? え? もしかして彼氏いる?」

なんか。

こっちまで。

混乱してきそう。

「あの、用件は?」

「いや、だから……まあ、しゃあないか」

風崎くんは。

ため息ついて。

姿勢を正した。

「ん?」

「俺と付き合ってくれない?」

「……なんで?」

「そりゃあ、お前のこと好きだから」

ハンドルを握る手は。

汗をかいていた。

本当に?

心臓が頭痛みたい。

でも。

ん?

また、風崎くんの視線が上下する。

「どうせ。みんなに言ってるんでしょ? 私は……」

「は? 何それ? 俺、正真正銘の初告白ですけど、何か? まあ、証明出来ないけど」

キレ気味に捲し立てられて。

あわあわする私。

「あ、えーと、ごめんなさい……言い過ぎた」

「……いや、で、どう? 俺、好きだからさ付き合ってよ」

言われたことのない。

言葉に気圧されるけど……

小さく息を吸った。

「じろじろ見すぎ」

じろっと。

睨む

私。

「あっ、しゃーねんじゃん。好きな女が。こんな格好なら見るだろ男なら」

「清々しい逆に」

「で? どう?」

「悪いけど、今はそういう気持ちになれない」

「じゃあ、いつになったら? そうなる?」

「うーん。永遠」

「うわっ。マジか。俺結構かっこいい方だとおもうけどな」

ここまで。

振り切れてたら。

少しおかしくなった。

確かに……

「うん。それは認める。けど……」

「なんだよ」

「きっと……ううん。私は好きじゃないから。ごめんね」

「そ、そうか。案外言うんだな。いい意味意外。そっか……悪いな」

「ううん。じゃあね」

「……ああ」

風崎くんは。

高く片足をあげて。

自転車に跨がる。

そして。

舐めるように私を一瞥して。

颯爽と橋を渡り始めた。


その後ろ姿が小さくなっていく。

全身の力が抜けて。

ハンドルを握ったまま。

手をグーパーさせた。

きっと。

上手くいかないよ。

自信ないもん。

それになんか。

付き合う目的がねって。

想えちゃったし。

川の水面が光を撒き散らして。

風がポニーテール揺さぶった。

お城がそんな私を。

ただ。

黙って。

見守ってくれていた。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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