面白いって
メッセージを送ってきたのは。
従兄の拓海兄ちゃんだった。
『おはよう菫。昨日はごめんな、食事会行けなくて』
「おはよう。拓兄ちゃん。お仕事でしょ仕方ないよ」
『今日の昼。岐阜駅まで出てこれるか? 何でも食べたいもの奢るよ』
うわ!
おごり……
と言えば。
玉宮の『スシノキブン』で。
お寿司だよね。
でも。
だるいんだよね。
うう。
お寿司食べたいけど……
「拓兄ちゃん。嬉しいんだけど。なんか今日ね風邪っぽいんだ」
『そうか。残念だけど仕方ないな。日曜だったもんな引っ越し。当日は必ず会いに行くからな』
「うん。ごめんね。せっかく誘ってくれたのに」
『気にするな。じゃあ、また連絡する』
あっ。
聞いてみようかな……
「あのさ、お兄ちゃんってラブレター書いたことある?」
『ん? なんだ急に。ラブレターなんて書いたことは……ある』
「え!? そうなの? 男の人がラブレター書く時ってどんな心境なのかな?」
『うーん。人によると思うが、俺は、その時の偽りのない気持ちを書いただけだな。どうした? 好きな男でも出来たのか?』
「ううん。違うんだ。実はね……」
私は差出人のないラブレターのことを拓兄ちゃんに伝えてみた。
すると。
拓兄ちゃんから。
電話がかかってきた。
「もしもし」
『メッセージより話した方が早いからな。確かに少し鼻声だし、なんかこもってるな声』
「布団の中です」
『アハハ。そうか。しんどいとこ悪いな』
「ううん。全然いいよ。私が聞いたんだから」
『そのラブレター面白いな。名前を書くのを忘れたのか。それとも敢えて書かなかった。とか』
「ん? どして? 敢えて書かないとかってある?」
『うん。名前がなかったら誰からだろって気になるじゃないか。イタズラって思われるかもしれないけど』
「まあ。確かに」
『内容も何度か読み返すよな。文面から誰だろって探そうとして』
「うん」
『それだけ心に残る可能性がある。要は印象付けられる。分からないのが、会う場所を特定できないというところ』
「お城が見える橋だもんね」
『そう。ただ、これに関してはこの差出人と菫の間にしか分からないことがあるのかもしれないな』
「ん? どういうこと?」
『例えば、二人にとって、想い出の場所とかな』
「二人にとって……」
『まあ、相手が勝手にそう思い込んでるだけ。という場合もある。いずれにせよ面白い』
「そっか。一応ね、高校の頃、使ってた金華橋かなって、志帆と一緒に行くことになってるんだ」
『なるほど。金華橋ね。確かに一人で行くよりはいいな。まあ、用心に越したことはない』
「うん」
『そっか。うまくいったら菫にも彼氏ができるかもしれないわけか』
「え? わかんないよ……」
『まあ、今日は養生した方がいいと思う。じゃあ日曜』
「うん。ありがとう拓兄ちゃん」
ツー、ツー。
「うーん」
拓兄ちゃん。
面白いって言ったけど。
お城が見える橋が。
私との想い出の場所?
敢えて名前を書かないか……
拓兄ちゃんこそ。
面白いこと考えてるよ。
「ふわー」
あくびが眠気を誘う。
ああ。
そうだ……
一色くんの……
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




