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想いの行方  作者: ぽんこつ


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11/11

茜色に染まる教室

一色くんの部活……

なんだっけ……?

ダメだ。

さっぱり想い出せない。

「くしゅん!」

ああ。

ちょっと寒気がしだした。

布団の中にもそもそと潜り込んで。

丸くなる。

あのオルゴールの放課後は。

覚えているのに。

スマホを抱きしめながら。

目をつむる。


そう――

夕焼け色の教室。

オルゴールが止んで。

「活動的だけど、ロマンチストなんだね、相川さん」

一色くんの声に射抜かれて。

鼓動を消化出来ないでいた。

「相川さん、テニスはいつからやってるの?」

「あ、えーと。小学校から。両親がテニスをやってて。物心付いた頃には、ラケット握らされていたみたい」

「ハハハ。そうなんだ。英才教育だ」

「ううん。そんなこともなくて。ただ、好きなだけだよ。小学校の頃が、私のテニスのピーク」

「そうなの?」

「うん。地区ではそこそこね。低学年だと男女も区別なく試合するんだけど、どうしても勝てない男の子がいたんだ」

「ハハハ。負けず嫌いなんだ。相川さん」

「そうなのかな。でも、その子、ぷっつり見なくなったんだよね」

「そっか」

「あっ。ごめんなさい。なんか私ばかり喋っちゃって」

「いや、構わないよ。それより……」

一色くんは。

こめかみを人差し指で。

ぽりぽりとかいて。

目を細めながら。

私を見つめてきた。

きゅって。

金縛りになったみたいに。

釘付けになった。

「よかったら、一緒に帰らない?」

思わぬ問いかけに。

夕陽に照らされた私は。

一段と赤くなっていた。

淡い黄色の光を帯びて微笑む。

一色くんの眼差しから。

逃れるように。

視線を逸らして。

うつむいて。

でも。

膝の上の指はせわしない。

ちょっと。

どうするの?

呼吸と鼓動がちぐはぐになって。

行きなよ。

一緒に帰るくらいでしょ。

いやいや。

何を期待してるの?

なんにもないよ。

今日、初めてまともにしゃべったんでしょ?

いやいや。

わかんない……

「無理ならいいんだ。相川さんともう少し話してみたいなって思っただけだから。じゃあ……」

オルゴールを手にして。

前に向き直った一色くん。

ごそごそと動いて。

背中を見つめるだけの私。

ぎー。

椅子が引かれて。

一色くんは立ち上がる。

「気を付けてね相川さん。じゃあ、また来週」

声が出せなくて。

何も言えなくて。

ただ。

うなずいていた。

とんとん……

足音が。

ゆっくり離れていく。

その背中を目で追って。

一色くんは廊下に消えた。


ふにゃふにゃと。

タコのように。

机に突っ伏した。

その表面が冷たくて。

火照った頬の熱を吸いとっていく。

心地よいのがしゃくだけど。

余韻をひきずる鼓動は。

収まる気配はなくて。

色んな私が会話をしだす。

チャンスだったんじゃない?

見せかけの勇気の私が。

ぽろりとこぼす。

分かってるよ。

でも。

しょうがないじゃん。

そんなに上手に出来ないよ。

志帆なら。

いいよって言える。

亜季なら。

連絡先の交換とかしてる。

あー。

じたばたと。

足踏みをする。

はぁ……

ため息を一つ残して。

ゆっくりと体を起こす。

はぁ……

ぼんやりと眺めた窓の外。

暮れなずみはじめた街並みに。

一つ二つ。

明かりが灯りだしていた。


それから。

一色くんとは。

休み時間に話す程度の仲にはなった。

他愛のない内容。

授業のこととか。

ただ、あの日の偶然のように。

二人だけで。

何か心が震えるような。

会話は出来なかったし。

誘われることもなかった。


ピコン。

あっ。

いけない。

返信忘れてた……

ていうか。

一色くんの部活って……

あれ?

岡田じゃなかった。

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