旅立ちの骨
しーのさまかえってくるって
「大将、ちょっと良いかな?」
「給料は上げねー」
「いきなり金の話かよ!違うわ!」
「そうじゃなくってさパックスを辞めたいんだ・・・」
「おいおい、前も言ったと思うが
前の任務失敗の件は気にするなよ?
アレはオメーのせいじゃねーからな!
むしろオメーいなかったら全滅だったんだ」
「ありがとう、大将。でもそれが理由じゃないんだ。
以前言ったことなかったっけ?
この世界で最初にお世話になった人がいて、
その人が帰ってくるんだ」
「おぉ、確かイコン族のシーノさんだったか?
憧れの女性か?ウリウリ、おーん?」
「ち、ちげーよ!!ただ世話になったし・・・
気になることもあるし、ちょっと戻りたいんだよ!!」
「ガハハハハ、初々しいのぅ」
「もういいよ。
まぁ、、、散々世話になるだけなって、いきなり辞めたい
というのも不義理なんだろうけどさ・・・」
「いいや、こっちもオメーには随分助けられたさ。
不義理なんてことはねーよ。決心は固いんだろ?」
クライドは無言でうなずく。
「よーし、わかった!うだうだ引き止めたりしねー!
気持ちよく送り出そうじゃねーか!」
「大将・・・」
「まぁ、クライドよう、引き止めねーけど
オメーがいなくなるのは痛手ではあるんだ。
だからよ、戻ってきたくなったらいつでも戻ってこいや!
いや、初めてオメーと会った時
オメーは魔王軍で羽ばたきたいと言ったな。
よーし、クライド、次は俺たちを迎えにこい!
魔王軍として俺たちを使え!
一緒に仕事をしようじゃねーか!」
■
クライドがパックスを辞めるという報告は
ほどなくメンバー全員へ行われた。
クライドはパックスの面々へと挨拶を個々に
それとなく行っていた。
「旦那ぁ、行っちまうのかい?他のみんな逝っちまったよ。
生死の現場にいるとは言え今回は堪えるぜ」
ちょっと寂しそうな、そんな顔をしたワンがつぶやく。
「ワン・・・
いろいろあったけど、とにかく世話になったよ。
ありがとう。
多分、たぶんなんだけどまた会える気がするんだよ。
だから、永遠の別れじゃなくてさ
しばしの別れと思ってくれよ」
「旦那ぁ!」
顔をくしゃくしゃにしたワンとしばらく話し込む。
クライドは、他のパックスの面々と挨拶を交わしながら、
ゴロムの姿を探す。
だが、ゴロムの姿はどこにもない。
他の者に聞くと、どうやらゴロムは任務に出ているらしく
まだ帰還していないそうだ。
初めてパックスに来た時と言い、最後の日と言い、
ゴロムとはどうやら、そういうめぐり合わせらしいや。
ちょっとおかしくなって微笑むクライドの後ろから
シックスの豪快な声が聞こえる。
「クライド!大宴会といこうや!!!」
■
翌朝、パックスの面々は昨夜の大宴会のせいで
みんな寝ている。
クライドは、そんな連中の様子を一通り見渡すと
そっとパックスの砦を出ていった。
砦の門をくぐり、ひとしきり歩くと
クライドは、砦の姿を眼に焼き付けようとふと振り返る。
すると、砦の上や門や窓からパックスの面々が顔を出し
にこやかにこちらを見ていた。
クライドがそれに気がつくとパックスの面々は
手を振りながらそれぞれがクライドに別れの言葉を叫ぶ。
みんな一斉に叫ぶもんだから
何いってるかわかんないんだけどね。
そんな中、門の中央に立っていたシックスが
誰よりも大きい声で
そして誰よりも大きく手を振りながら
「クライドぉぉぉぉーーー!達者でなーーーーーー」
と叫ぶ声が聞こえた。
クライドも大きく、何度も何度も手をふりかえし、
パックスの砦を離れていく。
スケルトンなんだから眼なんか無いんだけど
目に当たる穴から謎の汁が出てるなー。
何の汁なんだろーなー。
なんてごまかしながらクライドは街道を歩いていった。
■
魔王軍で羽ばたくんだ!なんて言ってイコン族の屋敷を出て
魔王軍の仕事にかかわることはできた。
4軍団の影はちらほら見えるけど
結局正式な魔王軍に入ることはできなかったな。
と考えながら一人道中を歩くクライド。
この世界に初めて来た瞬間はこころが踊ったよ。
だって転生者だよ?
前の世界で読んでた小説は、
転生者がチートな能力を手に入れて
俺ツエエェェェェェェなハーレムナイトなんだよ?
そりゃ心踊るっしょ!?
ところが、転生した姿は、ただのスケルトン。骨だ骨。
スケルトンと言っても強大な魔力を持つリッチなんて
モンスターもいるわけだから、もしかしたら?
と思ったけど、結局もしかしてなだけで、認めたくないけど
自分は、ただのノーマルスケルトン。骨だったわけだ。
絶望だな、絶望。
そんな絶望な中、この世界の魔物に見つかってしまう。
それがイコン族の面々。
そしてそれがシーノさまとの出会いでもある。
怪しまれまくって連行される途中で青い顔した
謎の者と出会った。今ならわかる。ハイアンデットだ。
魔王軍の一員であるジュード・アーク軍の幹部である
ベルザ・アークからの手の者だろう。
ベルザ・アークはシーノさまを愛人にしようと企んでる
とんでもねー奴だ。
気絶しちゃったから結局どうなったかわかんないけど
とりあえず危機は脱することができて
シーノさまのはからいで、イコン族で
生活できることになった。
イコン族の屋敷では田舎者口調のスケルトン、
スケベイ(とんでもねー名前)。
ダークエルフのちゃきちゃく娘、ボニー(150歳)。
という気さくな仲間ができたり
イコン族当主エイトさんの無茶振りで
破壊工作する一族であるナグル族に命がけで
行くことになった。
けど、なんだかんだでナグル族当主である
ワズム・ナグルさんとも仲良くなることができた。
なんだかんだでシーノさまのおかげだ。
そんなシーノさまが嫁に行くってことで、
なんだか悶々としてたら
シーノさまから、外の世界で羽ばたけって言われて
イコン族の屋敷を出ることになったんだ。
そしてパックスの面々と知り合うことになったわけだ。
全然能力が無い自分をパックスのリーダーである
シックスは気持ちよく受け入れてくれたな。
そんな自分を鍛え上げてくれたのが
パックスのベテランメンバーであるゴロムだ。
パックスではいろんな任務をこなしたよ。
おかげで少しばかりたくましくなれた気がする。
パックスでは、シックスの大将やゴロムやワン
他にもたくさんのパックスの面々に世話になったし
この世界のいろんなことがわかってきたし
色んな連中と知り合いになれた。
本当に感謝だ。
だけど、結果的にパックス最後の任務になった任務だけが
心残りだ。
任務失敗、いや失敗だけじゃない。
多くの仲間を失ってしまった。
その原因は、ベルザ・アーク。
なぜベルザ・アークが、わざわざ仲間をはめるような罠を
しかけたのか?
真相はわからない。
だけど俺が思うに
魔王親衛隊の全滅が目的だったんじゃないかと。。。
魔王親衛隊には、シーノさまが嫁に行った相手がいたんだ。
魔王親衛隊に嫁いでちゃシーノさまに手は出せない。
そこで魔王親衛隊を全滅させてシーノさまを
イコンの屋敷に戻そうとしたのでは?
そして再び魔の手を伸ばしてシーノさまを愛人に
しようとしてるのではないだろうか?
たんなる俺の妄想だ。
だけど結果的にシーノさまはイコン族の屋敷に戻ってきた。
だからイコンの屋敷に戻ろうと思ったんだ。
ただ怯えていただけの、あの頃と違う。
少しだけど俺も力がついた。
勝つことはできなくてもシーノさまをお守りすることは
できると思うんだ。
そんな決意の中、クライドの眼に
懐かしいイコン族の屋敷が見えてきた。
あついおとこたちと、そうしゅうへん




