「王都」
圧巻だ…。
利央は王都の真ん中に堂々とそびえ立つ巨大な王城に思わず目を奪われる。
夢の国にある有名な城…あんなに綺麗では無いが歴史を感じる情緒ある雰囲気。全体的に石で出来ているのだろう、白くて西洋風の塔や門があるのが分かる。そしてとにかく巨大で、うちのクーズー城よりも一回り大きく見える。
そんな巨大で荘厳な城を中心として、王都には何重にも壁が張り巡らされている。
壁と壁の間には家屋が立ち並び、区画がきっちりと分けられているのか、煙が常に立ち上る場所だったり、大勢の人々が行き交う市場のようなものもあるようだ。
「すげぇ…」
利央は思わずそんな声を漏らす。
森でのニート生活が長かったせいか、初めて東京に行った時のような高揚感を感じる…いやー、都会って良いね。賑やかで楽しそう。
クーズー城の周りもこんな感じにしてみようかな?…なんてね。
利央はそんな事を思いながら、オベロン王国の王都を行く。
ゆっくり王都散策と行きたいのだが…ケル吉とスネ夫、そしてチャカの周りにはこれでもかと兵士みたいな人達が張り付いている。
もう警備はいらないんだけどなあ。
王都の中だし、襲われる心配は無いと思うけど…。
兵士が沢山付いていて、巨大な一団になってしまっている為、なかなか自由に歩けない。小さなパレードのような状態になってしまっている。
お祭りの屋台みたいなのが立ち並んでいるので、屋台の食べ物を食べてみたいんだけど…。
更に、周囲には沢山の民衆が集まって、こちらを驚愕したような様子で眺めてくる。チャカ達を見てびっくりしているのであろう。
民衆からは驚きの声と同時に
「あの人凄いね!!お母さん!」
「そうね、あんなに強そうな魔獣を引き連れているんだもの。凄いわね」
「おお!あれがケルベアーか、あっちの蛇は??」
「あれはヴェノムボアだな!毒沼の王なんて呼ばれる魔獣だぞ?」
「あの人が騎乗してるのはなんなんだ??」
「見た事ないが…まあケルベアーを従えるような方だ、とにかくすごい魔獣かなんかだろう」
などと称賛の声が沢山聞こえてくる。
うーん…悪い気はしない。
というかめっちゃ気分良いな!
こんなに人からチヤホヤされるのはいつ振りだ?
リアルに幼稚園以来では無いだろうか?
基本的に人に褒められるような事をした覚えが無いしな…。幼稚園の頃の記憶があるかと言えば、ほとんど無いが…
それでもあの頃はまだ両親とも仲が良かった気がする。両親に褒めて貰いたくて、色々と頑張っていたような記憶が無いことも無い。
「と、止まって頂きたい!!」
昔を思い出していたら、どうやら王城の前に到着したらしい。馬に乗った人が大声で止まるように言ってきた。
正直、チャカと普通の馬では何十倍も体格差があるので話している人はほとんど見えていないのだが…
「授与式までは王城内にてご休憩をと考えております!」
「ありが…うむ、助かる」
そういえばジーバ君に出来るだけ偉そうに喋るのも貴族として重要な事だと言われていたのを思い出し、それっぽく喋る。
王城の門が開かれ、利央は中へと入るようチャカに言おうとするが…背後から声が聞こえてくる。
「お名前は…お名前は何というのですか?!」
振り返ると小さな女の子が兵士の間をすり抜けてすぐ近くまで来ていた。
利央はチャカから降りて、女の子の前に立つ。
ん?この子見た事ある気がするような…
あ!!!
猫を追いかけてトラックに轢かれそうになった子!!あの子にそっくりだな。
「俺の名前は利央だよ!…君は?」
「リオ…英雄リオ!…カッコいい!!私はココっていうの!」
「英雄リオ?!…なかなか良いこと言うねココちゃん。じゃあ一つココちゃんにアドバイスを言っておこう」
「なあに?」
「猫に夢中になり過ぎて道に飛び出したりしてはいけないよ?今度は助けないからね??」
「??」
ココは不思議そうな顔を浮かべる。
「こら!君、駄目じゃないか!!お母さんのところへ戻りなさい!」
ココは兵士に連れ戻されていった。
「ココ!!駄目じゃない勝手に飛び出したりしたら!!!貴族様がいたらどうなっていたことやら…」
「お母さん!!あの人リオって名前なんだって!!」
「でかしたな嬢ちゃん!おいっ!みんな!新たな英雄の名前はリオって言うらしいぞ!!」
利央の名は瞬く間に集まっていた民衆に広がる。
「きゃー!リオ様ー」
「リオ様ー!!こっち向いてー!!」
「その魔獣はどうやって手懐けたんですか?!」
「英雄リオの誕生だー!!」
「わー!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」
「素敵ー!」
ハリウッドセレブにでもなった気分だ。みんながみんなキラキラした目で黄色い声援を送ってくれる。
利央は調子に乗って民衆に向かって手を振ってみる。
「きゃあー!!リオ様!!」
「おお!英雄らしい立ち振る舞いだ!!」
「王国を救って下さい!」
「ちょっ、ちょっと!!待ちなさいよ!!!目つきの悪い男!!」
「帝国に鉄槌を!!」
「リオ様ー!!こっち向いてー!」
物凄い盛り上がりだ。いやー、これは調子に乗っても良いよね?
それと、なぜか聞き覚えのある声が聞こえた気がしたが…気のせいだろう。
利央は自身が思うかっこいいポーズを決め、民衆の反応に気分を良くしながら王城の中へと入っていった。




