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SECOND ~リアルすぎるオープンワールドをプレイするのは苦難の日々です~  作者: 虎ノ介


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光を閉じ込めし右腕

 目の前の城下町の景色が変わり、白い神殿のような場所に変わった。

 祭殿のような場所に怪しげな光がある。


「何だここ?

 あの光っている場所に向かえばいいのか?」


 普通なら、最初はキャラメイクかオープニングイベントだが……

 自分の体を見ると、既にキャラメイクが済んでいた。


 現実の俺の肉体を反映させて作っているのか?

 それにしては少し筋肉質だが……


 服装はパンツ一丁で、腰にはベルトで短剣らしきものが括りつけられている。

 靴は革を雑に縫い合わせただけのものだ。

 内側の革のごわごわした部分が足に擦れて、少し痛い。


 祭壇の前に立つと、怪しげな光が目の前で揺らいでいる。

 少し暖かいように感じる。


「これに触れればいいんだよな?」


 怪しげな光に触れると、手に燃えるような痛みが走った。

 マジか!

 ここまでやんのかよ。


 光の中には肘くらいまで腕が埋まっていて、手の先は燃えているように見える。

 体毛が焼けたせいか、硫黄のような臭いが鼻を突き抜ける。

 構わず光の奥へと手を伸ばしていくと、何か一つのボタンがあることが分かった。


 燃えるような指の痛みを我慢しながら、ボタンを押した。

 すると、怪しげな光は自分の右腕の中に入ってきた。


「クゥ!!」


 爛れた皮膚の中で、入ってきた光が暴れながら吸収されていく。

 目の前の視界は、あまりの激痛によって白い光が点滅し、頭の中ではガラスのコップが割れるのではないかというくらい高い音が鳴る。


「はぁ、はぁ、フー!!」


 歯を食いしばって痛みに耐えていると、少しずつ痛みが和らいできた。

 これは本当に仮想現実だよな……


 誰だよ、こんな馬鹿なイベントを序盤に置いたやつ。

 

 思考するほどの余裕が出てくると、すぐに痛みは引いていった。

 腕を見ると、焼けたせいか赤黒くなった皮膚の隙間から、内部で光が揺らいでいるのが見える。


「何なんだよ、さっきのは!!

 これをしないとストーリーが進行しないとか、頭おかしいんじゃないのか!?」


 すると、祭壇のすぐ左に立っている看板に気づいた。


『注意!

 この光に触れると激しい痛みに襲われます。

 ゲーム内の痛みはこれほど酷くありませんが、もしも止めたい場合は、すぐにやめてください。

 ストーリーを進行させたい場合は、奥の扉へお進みください』


「え、これって痛いのが苦手な人向けに作られたやつ?」


 それじゃあ、さっきの俺の努力は?

 いや、その努力の結果がこの禍々しい右腕なんだけど……

 こんな中二病的な力、要らないよ?


「最悪だぁぁぁぁぁー!!!」


 とりあえず、ストーリー進行用の扉まで進むか……


 とぼとぼと歩きながら右腕の動作確認をしてみるが、特に異常はない。

 ただ、動かすたびに皮膚の隙間から光が漏れるのは、どうにかならないのだろうか?


「もう少し目立つ扉にしてくれよ!」


 モデルが神殿なのだから、しょうがない話なのだが、今は八つ当たりしたい気分なんだ。


 扉を押そうとすると、どうやら石でできているので、結構重い。


 扉はギギギと音を立てながら、少しずつ開いていく。

 

 フォン!


『光が閉じ込められし腕を確認しました。

 デバフとして、常時敵を引き寄せる状態異常を永続的に付与します』


「は!?」


 すると、扉が急に開き、俺はその先にある、白い光が渦巻く穴へと落ちていった。

 

 ちょっと待て!

 あんだけ苦労して手に入れたアイテムなのに、得られる恩恵はアホみたいなデバフ!?

 敵をおびき寄せるのは、レベル上げのときなんかに使えるけど、永続発動は頭おかしいだろ!!


 フォン!


『キャラクターの外見を選んでください』


 あの独特な音とともに、目の前にあのディスプレイのようなものが現れた。

 ここでやっと自分の体を選べるのか……


 う~ん、何とも嫌な外見をしているな……

 この禍々しい腕は消せないのだろうか?


 ディスプレイには、自分と同じくらいの背格好の人間が立っている。

 顔立ちはランダムで決められるようだが、案外いい顔なので、このままでいい。

 どうせ防具とか着たら、ほとんど見えなくなるのがオチだ。


 だが、この右腕だけは絶対に変えたい!!

 何か隠せそうなものはないのか?


『義腕:右腕用』


 お! いいのがあるじゃないか!

 本来は、現実でも義手をつけている人がバランスを取りやすいように用意されているものなのだが、今の俺にはちょうどいい!


 それを選択すると、一気にキャラクリ用のポイントが減った。

 まあ、この右腕を隠せるならいいか。

 あとは下半身用のズボンでいいかな。


 適当に紺色のジーンズの短パンに決めた。

 上半身は、まあ後でゲーム内で購入すればいいか……

 義腕の肘から先から少し光が漏れ出ているが、これくらいなら全然いい。


「んじゃ、これで決定で!」


『ペットの姿をお選びください』


「ペット?

 ああいうのは、はっきり言って何でもいいんだよな……

 可愛いし、猫でいいか!」


 少し毛がふさふさした黒猫に決定した。

 

『バビロンの空中巨大庭園に移動します……』


 白い光が俺の周りをぐるぐると回り始めた。

 さっきのこともあるので、少し怖い。


 *****************************


「モズ様、起きてください!」


 何かふわふわしたものが、ほっぺたを押しているような気がする。

 モズ様とは、多分俺のことだろう。

 

 目を開けてみるが、近くには誰もいない。

 ペットとして設定した、あの黒猫だけだ。


「誰だ? 俺のことを呼んだのは?」


「私です!」


 黒猫の方から声が聞こえたような気がした。

 SECONDは動物ふれあい系ゲームではなかったような気がするんだが……


「モズ様の専属AIのバラーです!!」


「は!? バラー、お前が!?

 だとしたら、何でそんな姿になってるんだよ!!」


「このゲームの機能ですよ!

 それにしても、執事としてゲームの中でもモズ様をサポートできるのは嬉しく思います!」


 バラーって、こんな感じに話すんだ……

 それにしても、バラーがこんな外見になるんだったら、もう少し、いいやつを選んでくればよかった。

 これじゃあ、黒猫がキラキラした目で「守ります!」とか言っているだけで、まったく頼りにならなそうだ。


「ありがとよ。

 それじゃあ、とりあえず進めるぞ」


「分かりました!」


 それにしても、ここはどこだ?

 今、自分が立っている場所は、だだっ広い草原だ。

 北の方には山があり、上の方は雪をかぶっている。

 東には大きめの城が見え、周りは壁で囲われている。

 南には大きな針葉樹が立ち並ぶ森が見える。

 

 そして西には、こちらに向かって猛スピードで移動してくる人影が見える。


「初心者狩りか……

 いいね、プレイヤーキル(PK)マークを気にしないところ。

 受けて立とう。こっちも同類だからね」


「装備からして、双剣使いであると考えられます!」


 こういうサポートをしてくれるのか!

 俺は義腕を滑らかに動かし、短剣を抜いた。

 右腕の光が短剣に乱反射し、少し眩しい。

 

 敵は俺の右腕を見て一瞬驚いたものの、そのままこちらに突っ込んできた。

 バラーの予想どおり、相手は双剣使いだ。赤と青の剣を持っている。

 

「おそらく、炎の剣と水の剣です!

 蒸発効果による倍増ダメージには注意してください!!」


 バラーの警告が聞こえると同時に、俺も敵に向かって走り出した。

 右腕からは光が漏れ出し、一本の線のようなものを描いていた。


「最初の戦いがまさかのプレイヤーか!

 最高じゃねぇか!!」

読んでくれてありがとうございます!


語句の説明などです

PKマーク:プレイヤーをキルした場合につくマーク、特定のNPCの反応が変わったりするが、贖罪をすることによって消すことが出来る。

バビロンの巨大空中庭園:元ネタのバビロンの空中庭園とは違くこちらは本当に浮いている。

プレイヤー達が冒険するマップ、多種多様な動植物がいる。

専属AI:森宮 みずきの世界ではスマートフォンが進化し一人一人に専属のAIがいる。

自動でアップデートされるので生まれた時からいる。

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