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『Thank you』
目の前にはその文字があった。
数秒たつと画面が暗転し、タイトル画面に戻った。
VWVを外すと、太陽の光が目に突き刺さる。
だが、今はそんなこと関係ない!!
「よ、よ、よっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!
八周目、レベル百、パリィ禁止、短剣縛り、クリア達成!!!」
雄たけびを上げて飛び上がり、ガッツポーズを決める。
「にしても、一気にやるのはキツイな……。
今、何時だ?」
すると、空中にホログラムの時計が出てきた。
え~と、今は夜の九時か……。
正午からやってたから、九時間連続か……。
しかも、周回プレイというわけでもなく、普通にボス戦なんかをやっていたから、VWVに触れると少し熱くなっている。
ベッドから降り、机の上にある充電用スタンド兼冷却スポットにVWVをセットする。
「俺のヴァーチャルワールドビューちゃん、頑張ったね~」
冷却ファンがブーンと音を立てている。
何気なく椅子に腰かけ、頬杖をつく。
「はぁ~、暇だ」
AIがその言葉に反応し、ホログラムのディスプレイがいくつか周囲に現れた。
「今はいいよ。気持ちだけ受け取っておく……」
部屋の中を見渡すと、大量のゲームソフトと、漫画や小説が並んでいる。
有名どころのゲームはあれを除いて一通りやったし、漫画も読みまくった。
小説も、最近人気の作家の作品は読んでしまった……。
「漫画を読み返すのもいいけど、結末を知ってると面白さは半減するしな。
小説はミステリーものばっかり集めたから……。
何か新しいものをやりたい」
フォン!
目の前に、一つのホログラムディスプレイが現れた。
「何だ?
お前もこれを薦めるのか?」
そのディスプレイには、一つの記事が映っていた。
現在、最も人気のあるゲーム作品。
SECOND。
オープンワールド型のMMOだ。もちろん、仮想現実が舞台である。
今まで逆張りでやっていなかったが、どうしたものか?
まあ、記事でも読んでみるか。
見出しには大きく、こう書かれていた。
『SECOND ~第二の人生~
高難易度サーバーが登場したことで話題に!?』
どうやら、高難易度のコンテンツが追加されたようだ。
どうしようかな~。
やってみるか? いや、でも……。
さっさと決めればいいのに、訳の分からないことを考えて迷っていると、一つの通知がディスプレイに表示された。
「何だ?」
送ってきたのは……と。
カグレイか。
一緒にどこかのダンジョンにでも潜らない? とか、そんな誘いかな。
『モズ!
多分やらないと思うけど、一緒にSECONDの高難易度やらない?
気になってるけど、MMOを一人でやるのは、なんていうか寂しい……』
何言ってんだか。いつも一人でレベル上げとか素材集めとかしてるくせに。
そういう性格じゃないだろ、あの脳筋女。
だけど、やってみるのもアリだな。
始めたいとは思っていたけど、一人だと少し心細い気もしていたからな。
『俺も気になってたからいいよ。
あれって基本プレイ無料だっけ?』
すると、すぐに返信が返ってきた。
『君、ホントにモズ君?
確か、基本プレイは無料だよ~』
『あんがと。
それじゃあ、ちょっくらダウンロードしてみるわ。
先に少し操作感に慣れるために始めとくぞ』
『おけ。
私のプレイヤーネームは、家具レイだよ』
んじゃ、ちょっくらやってみるか!
VWVを充電スタンドから取り、頭にかぶせる。
『システムオールフリー。
バッテリー残量、残り80%』
俺のAI、バラーがVWVに乗り移る。
急速充電のおかげで、バッテリーは十分だな!!
「ショップを開いてくれ」
『森宮みずきの生体反応を確認。
モズとしてログインしました。
仮想現実を起動します』
周りが暗闇に包まれる。
匂いも音も、あらゆる感覚がなくなり、立っているのか浮いているのかさえ分からない。
『聴覚情報のリンクを確認しました。
触覚情報のリンクを確認しました』
少しノイズのようなものが聞こえ、何かの上に立っていることが分かった。
『嗅覚情報のリンクを確認しました』
スーパー特有の匂いが鼻を突く。
『視覚情報のリンクを確認しました』
暗闇が消え、目の前には大量の商品が並ぶスーパーマーケットが広がっていた。
指をポキポキと鳴らす。
「よし、いい具合につながってるな!
さてと、それじゃあ、お目当ての商品がある場所まで移動しますか!
バラー、低重力状態にして」
体が軽くなる。
軽くジャンプすると、三メートル近くまで飛び上がった。
「やっぱ、これが最高に面白いな!」
わざわざ探すよりも、ゲームランキングのある場所に行った方が早いかな?
ランキングなら、あそこか!
五百メートルほど先に、大きな電光掲示板が見える。
脚に力を込め、姿勢を低くする。
膝を折り畳み、手を床につく。
いわゆるクラウチングスタートだ。
「ふっ!」
足に込めていた力を一気に解放し、地面を蹴る。
浮かないように、できるだけ姿勢を低くして走る。
腕を振り、体の重心を安定させる。
「よいしょっと!
バラー、タイムは?」
『五秒です』
「いい感じにサーバーも安定してるな。
無重力にしてくれ」
地面を蹴ると、体が浮いた。
どうせSECONDはランキング上位だろう。
SECONDのジャケットに触れれば多分そのままダウンロード画面に移るだろうと思い、空中を泳ぐ。
「やっぱりな」
ランキング一位には、相変わらずローマ字六文字のSECOND君が君臨している。
「やらないぞ! って思ってたけど、もう限界だ。
まあ、ここは開き直って、めちゃくちゃ楽しむぞ!!」
SECONDのジャケットに触れると、スーパーの景色が切り替わり、どこかの城下町の外れへと移った。
どうやら、バラーがすでにダウンロードしてくれていたようだ。
「初めまして!
ゲームの難易度を選んでください!」
一人の女性が話しかけてくる。
すると、目の前にいくつかの難易度が表示された。
「多分、一番難しいやつ」
多分、ハードとか、そういうレベルではないのだろう。
「それでは、今までにクリアしたゲームの実績を見せてください」
そんなに難しいのか?
まあ、トロフィーでも見せればいいのかな?
「はい」
「ありがとうございます。
プレイ条件は満たされています。
この難易度では、痛みなどが伴う危険性がありますが、大丈夫ですか?」
なるほど、そういう系か。
この手のゲームは久々だな。
にしても、あの大手ゲーム会社、だいぶ大きな博打に出たな。
「ああ、大丈夫だ」
「最後に、このゲームでは死亡すると、装備品とレベルがリセットされますので、気をつけてください」
まあ、高難易度なら当たり前……。
いや、待て。レベルリセット?
「装備品やレベルは、死んだ場所に行けば戻るのか?」
「戻りません。取り戻すには、自分を殺した相手が自分の装備を持っていた場合、その相手を殺して略奪することができます。
ですが、通常はすべて最初からです。
お楽しみください」
これは想像以上にまずくないか?




