神泣
翌朝、蒼汰は香りで目を覚ました。
リビングに出ると、花海がコンロの前に立っていた。彼のフライパンを手に、黄金色の小さな円盤をいくつか焼いている。今日は濃いグレーのパーカーを着ている——よく見ると、先週自分が買ったばかりのやつだ。
「……それ、俺の服じゃないか?」
花海は口に半枚の円盤をくわえたまま、もごもごと言った。「あのジャケットは目立つって言ったから、君のクローゼットをちょっと見せてもらったんだよね……あれ、十着中八着はパーカーだよ。一着くらいなくなっても気づかないでしょ?」
蒼汰はあえて追求せず、皿を受け取って一口食べた。悪くない味だ。
食べながら、昨夜聞きそびれた話をすることにした。
花海は箸を置き、地球が銀河安全協会の星系評価で「低級文明観測区域」に分類されていることを教えてくれた。人類文明は宇宙スケールで見ればまだ乳幼児期にあるのだという。
宇宙は無限に広く、いかなる組織もそのすべてをカバーすることはできない。GSAが注目するのは、惑星の生態状況、文明レベル、主要種族の特徴という三つの側面だ。さらに「守護者」と呼ばれる超個体にも目を配っている——地球上でいえば神泣が該当し、ファイルコードはEP-001だ。
「あいつはどれくらい強いんだ?」蒼汰は思わず口にしていた。
「正確なデータは覚えてないけど」花海は首をかしげて考え込んだ。「神泣は生粋の地球人だよ。たまたま特定の遺伝子断片が変異して、能力が何倍にも強化されたんだと思う。ただ、GSAの基準からすれば、別にそんなに特別ってわけでもないかな——銀河全体で見れば、まあ中よりちょっと上、くらい」
蒼汰は数秒、沈黙した。
自分がこれほど嫉妬してきた神泣が、宇宙の天秤にかければ「別にそんなに」の一言で片づけられる。では自分は何なのか。測定すらしてもらえない塵粒か。
朝食を終え、皿を片付けていると、蒼汰が言った。「今日、路上パフォーマンスに行くんだけど、お前も来るか? あそこに立ってるだけで客が集まるぞ。俺は技術で稼いで、お前は顔で集客する。役割分担だ。」
「……わたしを看板扱い?」
口ではそう言いながらも、花海は灰色のパーカーに着替えた。
街角に着き、蒼汰はいつものように帽子を足元に置き、灰色の石を拾い上げた。花海は壁に寄りかかって立っている。日差しの下で彼女はやけに目立ち、加えてあの整った顔立ちだから、まだ始まってもいないのに数人の通行人が足を止めた。
「宇宙でたった一つの浮遊マジック。本物保証、偽物なら倍返し。」
蒼汰はあえて「宇宙」の部分を強調した。ちらりと見ると、花海の口元がわずかに引きつっていた。
今日の観客は昨日より多かった。特に若い連中は、花海を見た時の表情が、困惑から驚愕、そして微妙な嫉妬へと変わっていくのが面白かった。蒼汰はそれには構わず、深呼吸して念動力を発動した。灰色の石が掌から浮き上がり、空中でゆっくりと回転する。十秒後、石は掌に戻った。額にうっすらと汗が滲み、頭の中で微かな耳鳴りがした。
パフォーマンスが終わり、収入は昨日の倍になっていた。蒼汰はラーメンを奢ると言った。歩きながら、花海がふと口を開いた。
「さっきのパフォーマンス、どうして心拍数上がってたの?」
「当たり前だろ。あんな大勢の前でインチキやってりゃ誰だって緊張する。」
「あれ、インチキなの?」
蒼汰は答えなかった。
心の中ではわかっていた。観客が見ているのは同じ光景だ——石が空中に浮かんでいる。それが本当に念動力で浮いているのか、それとも仕掛けなのか、彼らにとっては何の違いもない。
ラーメン屋に入り、二人は席に着いて注文した。花海は箸で麺を一本ずつすくって食べる。地球の食べ物は味の層が豊かだと言い、彼女の故郷の食べ物は機能性が高いが味は単調だと言う。蒼汰はそれを想像して、だいたい飼料みたいなものかと思い、ふと地球人は幸せだなと感じた。
その時、外から悲鳴が聞こえた。食器が割れる音と泣き声が混ざり合っている。
蒼汰は慌てて入り口の方を見た——人々が四方八方に逃げ惑い、倒れた電動バイクの警報器が耳障りに鳴り響いている。
通りの突き当たり、巨大な暗紅色の影がゆっくりと動いていた。それはくしゃくしゃに丸められた泥の塊のようにも、得体の知れない臓物の集合体のようにも見えた。表面は湿った筋模様で覆われ、二階建ての家ほどの高さがあり、その幅は通りをほぼ塞いでいた。街灯は曲がり、車は横に押しのけられ、舗装タイルはめくれ上がっている。
蒼汰はそれを見て、最初にまったく純粋な反射で動いた——逃げる。彼は花海の手首を掴み、椅子を後ろに蹴って、体全体を発射準備の体勢に入れた。
「行くぞ! 裏口はどこだ?」
店主はまだ厨房の入り口に立ちすくみ、明らかに恐怖で固まっていた。蒼汰が花海を引きずって厨房へ向かおうとしたその時、逆に手首を掴み返された。
花海は微動だにしなかった。まるで風に揺るがない木のように、その場にしっかりと立っている。「落ち着いて」という表情で彼を見つめ、口元にはわずかながら余裕の笑みさえ浮かべていた。
「外にあんなに大きなのがいるの、見えてる?」
「見えてる。だからどうした?」
「だから逃げるんだよ!」
「逃げる必要あるの?」
蒼汰は口を開けたまま言葉を失った。外には二階建てのビルほどの大きさで、全身から液体を垂れ流す怪物が街を破壊している。その理由だけで十分じゃないのか? 花海はため息をつき、両手を腰に当てて顎を上げ、とても自信満々なポーズを決めた。
「わたしがいるんだから、何を怖がるの?」
彼女の目に、一瞬だけ薄い金色が光った。
蒼汰ははっとして——そうか、この自分の家に転がり込んで食い扶持になってる宇宙人は、超能力を持っているんだ。しかも自分よりずっと強い可能性が高い。緊張が引くと同時に、一種の見物気分が湧いてきた。
彼は花海の手首を離し、一歩下がって腕を組んだ。「わかった。じゃあ行けよ。俺はここで見てるから。」
花海はOKサインを返し、入り口の方を向いた。深く息を吸い込み、両腕を体の横に垂らす。パーカーの裾が風もないのに揺れ、何本かの黄色い髪がふわりと浮き上がった——見えないエネルギーに持ち上げられているかのように。
「おまえら二人とも正気か!?」店主の焦った声が飛んだ。
「落ち着いて。これもショーのうちだから。」
花海はガラスドアを押し開け、一歩外へ踏み出した。外の悲鳴や泣き声や警報音が一気に流れ込んでくる。怪物まで五十メートルも離れていない。彼女はゆっくりと右手を上げ、五指を広げ、腕を真っ直ぐにその暗紅色の影に向けて伸ばした。
——その時、一つの影が天から降りてきた。
流星のように真っ直ぐに怪物の上に落下し、「ドン」という鈍く重い音と共に、肉眼で見える衝撃波が周囲に広がった。近くの窓ガラスが次々と割れる。暗紅色の肉体は衝撃の瞬間に無数の微粒子へと崩壊し、瞬時に燃え尽きて灰になった。その過程は二秒もかからなかった。
影が地上に立つ。真っ白な仮面。黒のタンクトップ。濃い色のロングパンツと黒いブーツ。
彼は瓦礫と埃の真ん中に立ち、まるで主人公のような存在感を放っていた。
神泣。
蒼汰の頭の中で何かがぐるぐる回っていた。彼は外の白い影を見て、それから目の前の花海を見下ろした。彼女はまだ「今から力を発動します」というポーズを保っている——右手を前に伸ばし、指を広げ、髪がふわりと浮いたまま。だが怪物はもういない。
彼女は約三秒間、そのまま固まった。そして、一コマずつゆっくりと振り返った。その表情は、蒼汰が見た中で最も複雑なものだった——困惑、驚愕、憤怒、悔しさ、そして少しの寂しさ。五つの感情が混ざり合っていた。
「……アイツ、わたしの見せ場を奪った。」
「アイツ、わたしの見せ場を奪った!」
神泣はわずかに首を傾げ、声の主を確認しようとしているようだった。花海は彼に反応する間も与えず、蒼汰の手首を掴んで店の外へ引きずり出した。次の瞬間、蒼汰の足が地面から離れていた——花海が彼を連れて飛び上がったのだ。一蹴りで地面を蹴り、二人は空へと舞い上がった。
風が唸り、地面が急速に遠ざかる。街全体が曲がりくねった線のように見える。蒼汰は彼女の手首を掴み、もし手を離せば自分は美しい放物線を描いて地面に激突するだろうと、ぼんやりと考えた。
「花海! ちょっと降ろしてくれ——」
言い終わらないうちに、花海が加速した。まるでミサイルのように、神泣に向かって一直線に突き進む。
神泣はすでに去ろうとしていたが、背後からの気配を感じて空中で急停止し振り返った。そして、グレーのパーカーを着た黄色い髪の少女が、今にも吐きそうな若者を引きずって自分に向かってくるのを目撃した。
彼は空中でホバリングし、腕を組んで「ちょっと待って」のポーズを取った。花海は五メートル手前で停止したが、彼女に引きずられていた蒼汰は優雅にはいかなかった——慣性で彼の体は旗のように前方へ揺れた。
「蒼汰、しっかり掴まってろ!」花海は振り返らずに言った。
三人が空中に浮かんでいる——正確には二人が浮いていて、一人がぶら下がっている。神泣が先に口を開いた。声は蒼汰が想像していたよりずっと若々しく、爽やかな男子高校生の声だった。
「君は誰? なぜ飛べるんだ?」
花海は蒼汰の手首を離し、代わりに彼の襟を支えながら、もう一方の手で神泣を指さした。「この守護者さん、どうしてわたしの見せ場を奪うんだ?」
神泣は首をかしげた。「見せ場? 何のことだ?」
「さっきの怪物! わたしがまさに倒そうとしたところに、お前が上から落ちてきて真っ先にやってのけた! あれはわたしの獲物だった!」
神泣は沈黙した。彼の全身からは大きな困惑が漂っていた——戦闘を終えたばかりなのに、突然現れた空を飛ぶ見知らぬ少女に「見せ場を奪った」と詰め寄られる。ヒーロー人生において、これはおそらく初めての体験だろう。
「あの怪物は街を破壊していた。俺が対処するのは俺の責務だ。君が近くにいることは知らなかった。」
「知らなくてもいい、でも今知っただろ?」花海は理屈っぽく言い放つ。「次にこんな場面に遭遇したら、周りに他に仕掛けようとしてる奴がいるかどうか、ちょっと確認してからにできないか? 俺はさっきもうポーズも決めてたんだぞ? 手も伸ばして髪もふわふわさせてた! あと二秒待ってくれてもよかっただろう!」
蒼汰は襟を掴まれたまま、ようやく口を挟むタイミングを見つけた。「あの、話はそこでいいから、ちょっと降りないか? 風が強くて寒いんだけど。」
花海と神泣が同時に彼を見た。神泣はため息をついた。「……一旦降りよう。君たちに聞きたいこともたくさんある。」
彼は下方へと降り始め、花海がそれに続いて蒼汰を引きずって降りた。六階建てのマンションの屋上に着地すると、花海はあまり価値のない荷物でも置くように蒼汰を地面に下ろした。彼は前かがみになって膝に手をつき、大きく息を吸った。
「次に飛ぶ時は、事前に言ってくれないか? 心の準備がいる。」
「超能力者だって言ってたじゃないか。飛べないのか?」
「念動力で自分を飛ばせない体質で悪かったな!」
花海は彼を無視した。神泣が仮面を外したからだ。
仮面の下の顔は、とても若々しかった。十七、八歳というところだろう。顔立ちはすっきりとして、肌は白く、濃い茶色の瞳が今、真剣な表情で彼らを見つめている。好奇心と真面目さが混ざった眼差しだった。
これが神泣だ。あの怪物を素手で引き裂き、人類全体の安全感を一人で支えている守護者。蒼汰が嫉妬していた存在は、高校生だった。
彼はなぜか笑えてきて、実際に笑った。それは納得のような、あるいは馬鹿らしさのような、よくわからない笑いだったが、花海に腕のあたりを抓られて——痛くはなかったが——すぐに口を閉じた。
少年は仮面を手に持つと、より一層普通の高校生のように見えた。花海と蒼汰を交互に見て、言葉を選んでいるようだった。
「君たちも……超能力者なのか?」
花海が答えようとした時、蒼汰が先に口を開いた。
「彼女がそうだ。俺はおまけだ。」
花海が白目を向いた。
神泣はまばたきをし、困惑した表情を浮かべた。




