神崎夜斗
神泣は目の前の二人を見つめた。
「君たちは一体、何者なんだ?」
花海と蒼汰は顔を見合わせた。最終的に、蒼汰が先に口を開いた。
「俺は藤野蒼汰。こっちは花海。俺は地球人で、彼女は……まあ、外国から来たってところだ。」
「外国?」
「すごく外国。」蒼汰は真面目な顔で言った。
神泣は花海の目立つ黄色い髪を見て、次に明らかにサイズの大きすぎる灰色のパーカーを見た。その説明も間違いではない気がした。
花海は蒼汰にこれ以上説明させる気はなかった。腰のポーチから銀河の徽章を取り出して、神泣に差し出した。
「銀河安全協会C級要員、番号GSA-0417、花海。星系の定期巡察を担当している。簡単に言えば、わたしはこの星の人間じゃない。」
「……そうか。」
花海は一瞬固まった。
「それだけ?」
「何か驚くべきことでもあるのか?」
「驚かないの? 疑わない? 何か質問はない?」
神泣は首をかしげた。
「君が飛ぶのを見た。地球人は飛べない。飛行機か特殊能力がない限り。君には飛行機はないし、その能力は俺のとは違う。だから君は地球人ではないんだろう。」
花海は口を開けたまま、何も言えなかった。
蒼汰は横で笑いをこらえた。この高校生は実力だけでなく、観察力もずば抜けている。話し方はストレートで、想像していた守護者のような神秘的でクールな雰囲気はまったくない。
「じゃあ、君は?」神泣が蒼汰に向き直った。
「俺? 普通の地球人だ。超能力はあるけど、すごく弱い。」蒼汰は手を振った。「君は世界を救い続けてくれ。俺のことは気にしなくていい。」
「彼も超能力者だよ。」花海が容赦なく暴露した。「念動力使い。」
「念動力? すごいな。」
「慰めなくていい。」
「慰めてるんじゃない。」神泣は真剣な顔で言った。「俺も昔、念動力で物を動かそうとしたことがある。でもできなかった。」
蒼汰は言葉を失った。
「君でもできなかったのか?」
「できなかった。俺の能力は肉体強化とエネルギー放出に偏っていて、精密な制御は得意じゃないんだ。」
蒼汰は何と答えていいかわからなかった。
しばらくして、彼は尋ねた。
「そういえば、お前の本名は何なんだ? 神泣って、多分他人がつけた名前だろ?」
神泣はしばらく沈黙した。そして答えた。
「神崎夜斗。」
花海が夜斗に向き直った。
「いつ覚醒したんだ? 自然覚醒か、それとも外部要因か?」
夜斗は少し驚いた様子だったが、素直に答えた。「中学の時だ。あの日、友達の家から帰る途中、空から何かが落ちてくるのを見た。」
「隕石か?」
「多分そうだ。」
彼は続けた。「それは小さな石で、着地した後、青い光を放っていた。近づくと、それは普通の黒い石に変わった。手を伸ばして触れたら、それ以降の記憶がない。」
「気がついた時、地面に倒れていて、隕石は灰になっていた。それで体に変化が起きていた。」
「例えば?」
「遠くの音が聞こえるようになった。地球の動きを感じられるようになった。それから、飛べることに気づいた。」
花海はうなずいた。「外部要因型覚醒だ。君の隕石には特殊なエネルギーが含まれていて、それが君と共鳴して、隠されていた能力を活性化させたんだろう。」
彼女はそこで言葉を切った。「こういうケースは、銀河系では実は珍しくない。」
蒼汰はそれを聞いて、少しだけ気が楽になった。
夜斗の能力は、隕石がもたらしたものだ。でも自分の能力は違う。彼の超能力は生まれつきのもので、藤野蒼汰としてこの世に生まれたその日から、自分自身のものだった。弱くてみじめな力だけど、少なくとも外から与えられたものじゃない。
「じゃあ、君は生まれつきなのか?」夜斗が突然尋ねた。
蒼汰ははっとした。
「どうしてわかった?」
「君の表情だ。」夜斗は真剣に言った。「さっき、俺が外部覚醒って言った時、君は明らかにほっとしていた。」
蒼汰は黙った。この高校生は、観察力が強すぎる。
「……そうだよ。生まれつきだ。」
花海が手を叩いた。「よし、本題に戻ろう。」
彼女は夜斗を見据えた。「君がEP-001、地球の守護者だな?」
「EP-001?」
「Earth Protector 001。銀河安全協会が記録する、地球で最初の守護者。評価はB+。能力は超怪力、飛行、エネルギーバリア、高強度防御、高速移動——」
花海は自分の手環を指さした。「さっきの怪物、わたしはラーメン屋にいる時点でスキャン済みだ。レベルは大したことない。わたし一人で十分倒せた。」
彼女の口調が次第に不満げになる。「なのに、いざやろうとしたら君が先にやってのけたじゃないか。」
夜斗はしばらく沈黙した。
「……すまなかった。」
花海の用意していた長文の抗議が、一瞬で霧散した。「……まあいいや。今度は気をつけてくれ。」
「ああ。」
蒼汰は夜斗を見つめながら、ずっと聞きたいと思っていた質問を口にした。
「夜斗。」
「なんでお前は表に出ないんだ?」
「仮面をつけて、戦いが終わったらすぐに立ち去る。誰にも正体を明かさない。わざと神秘的に振る舞ってるのか?」
夜斗は手の中の白い仮面を見下ろした。「……この世界を、影から守りたいんだ。」
彼は真剣に言った。
蒼汰は言葉を失った。
彼は十六歳の自分を思い出していた。あの頃の自分も、ヒーローになることを夢見ていた。鏡の前で「みんなを守る」なんて台詞を練習したこともあった。
でも今、本当に強大な力を持っている人間が目の前に立っている。世界中から「神泣」と呼ばれる少年が、真剣に「影から世界を守る」なんて言っている。
蒼汰はついに一つのことを確信した。
こいつは……
本当に中二病だ。
「じゃあ仮面をつけてるのは、正体を隠すためか?」
夜斗はうなずいた。
「お前、考えたことないのか? 神泣として表に出て、自分が存在するって知らせてもいいんだぞ?」
夜斗は首を振った。「必要ない。俺は自分ができることをやってるだけだ。誰かに名前を知られても知られなくても、それは関係ない。」
屋上に静けさが訪れた。
花海は二人を見比べて、思わず笑みをこぼした。彼女にもわかった。蒼汰が今この瞬間に思っていることは、たぶんたった一言だ——この高校生、めっちゃ中二病だ。
夜斗はそれ以上何も言わなかった。彼はそっと地面を蹴った。突風が巻き起こった。
蒼汰が再び目を開けた時、屋上には自分と花海だけが残されていた。
夜斗は去っていた。
「戻るぞ。」
「俺のラーメン、まだ食べ終わってないんだけど。」
蒼汰は夜斗が消えた方向を見つめながら、しばらく沈黙した。
「花海。」
「ん?」
「さっきお前、あの怪物をスキャンしたって言ったな。レベルは大したことないって。お前一人で倒せるって。」
「そう言った。」
「じゃあお前の能力って、一体何なんだ?」
花海は振り返り、神秘的な笑みを浮かべた。
「当ててみろよ。」
蒼汰は彼女を見つめながら、急に嫌な予感がした。この居候中の宇宙人は、自分の想像以上に強いかもしれない。あるいは、自分の想像以上に頼りないかもしれない。
「行くぞ。」蒼汰は階段の方へ向き直った。「お前は飛んで降りろ。俺は階段を使う。もう一度空中散歩を体験する気はない。」
「弱虫。」
「命を大事にしてるだけだ。」




