第28話 旧リオーネ王国へ。
初めましての方も、またお目にかかりましたね、の方も。
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私はユージンに声をかけた。
「その呼び方は、変」
現在、私はエルミナと一緒に目的地へ向かう馬車の中にいる。
ユージンはというと、何故か軍馬にまたがりつつ併走しているのだ。
リオーネ領に入って2日目。 私たちは今、総督府のある領都セレスティアへと向かっている。
――この状況はおかしい。
本来は総督であるユージンこそ馬車に乗るべきなのに、彼はその馬車を護衛している。
私は馬車へ一緒に乗って欲しいと頼んだのよ。
なにしろ、総督になったユージンが一番の護衛対象なんだから。
けれど、それではアリシア様を守れませんとか言って、頑なに譲らなかった。
私たちの警護を担当する兵たちも困り顔だったけど、ユージンの頑固さは騎士団内でも有名みたいで。
渋々ながら承知した彼らは馬車から少し離れ、それぞれの位置で周りを警戒している。
「これから婚約者として私たちは過ごすのよ。帝都でも話したけど、私だけユージンを呼び捨てにするのはおかしいでしょう?」
「それは理解できるのですが……」
「――ねえユージン。リオーネ行きが決まってから私たち、色々な決め事をしたわ」
「その内のひとつが『言葉遣いを婚約者モードに変える』っすよね」
私の向かいに座るエルミナが補足をする。
リオーネを平定する一年間、総督府がユージンと私にとっての拠点となる。
到着次第、そこで現総督との交代式を行う予定だ。
そして、総督府が置かれているのは旧リオーネ王国の王宮を改修したもの。
――前世の私が、暮らしていた場所。
同時に、ユージンが生まれた場所でもある。
「ですが、アリシア様を呼び捨てにするのは、どうも……」
「ほらね。帝都での約束も守れないんすよ、この人」
ユージンの言葉に、エルミナが呆れたように言葉を投げる。
私達を乗せた馬車は、騎馬や歩兵の護衛に守られながら山林を抜け、なだらかな丘陵のふもとへと差し掛かる。
ユージンの頑なさに思わずしびれを切らせた私は、更にユージンへ声を上げる。
「私たちの仲が良いって周りに思わせた方が、今後やりやすくなるって話したじゃない。もう」
「わ、分かりました、アリシアさ――。ア、アリシア!」
「絶叫してどうするっすか……」
「ぷっ、……ふふふ」
笑っちゃいけないんだけど、ユージンの必死な態度とエルミナの冷静なツッコミを見て、私は思わず吹き出してしまった。
◇
「そういえば、リオーネに行くのは初めてじゃないのよね?ユージン」
「はい、男爵家に引き取られた後、ラウネル男爵の案内で一度だけ」
これはまだ帝都にいた時、ユージンから聞いていた話だ。
――帝国からの圧政に耐えかねたリオーネの民が反乱を起こし始め、一時総督府が占拠されるほどの劣勢に立たされた時代。
そんな物騒な時に、ラウネル男爵は何故かユージンをこの地に連れてきたというのだ。
その時はこの子の過去を掘り返すのは良くない気がして、それ以上は聞かないようにしていた。
――でも、やっぱりユージンのことは何でも知っておきたいじゃない?
これは単なる好奇心じゃなくて、母心なのよ、うん。
こうして自分を納得させた私は、ユージンへさらに質問を続ける。
「そう。どなたかと良い出会いはあった?」
何気なく問いかけた私の言葉に、彼はふと懐かしそうな表情をする。
「……そうですね。一人、今でも印象に残っている方がいます」
「へ、へえ。それはどんな人なの?」
ユージンの意外な回答に少しだけ私は戸惑う。
「それは――」
何か言いかけたユージンは、一瞬別の場所へ視線を向けた後、突然他の騎士たちへ指示を出した。
「十時方向、丘陵の頂に武装集団を確認!総員、警戒態勢を取れ!」
ユージンの言葉に、それまで私たち一団を覆っていた和やかな空気が、明らかに緊張していくのを感じた。
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それでは、明日20時30分にお会いしましょう。




