第27話 ユージンとラウネル男爵。
初めましての方も、またお目にかかりましたね、の方も。
ようこそいらっしゃいました。
本日の更新です。
「……誠に失礼いたしました」
皇宮から出た途端、ユージンが心から申し訳なさそうな面持ちで私に頭を下げた。
「何があったかは知りませんが、まーたこの人のやらかしっすか?」
「くっ、返す言葉もない」
すっかり砕けた口調のエルミナに、ユージンは反論もできない。
「ま、まあ、せめて事前に私には伝えて欲しかったわね。そうすればもう少し対応の仕方もあったでしょうから」
「……はい」
飼い主に悪戯がバレた子犬のようなユージンの様子を見て、ふと疑問が頭をよぎる。
男爵家は、孤児院との関係を絶たせるほどの条件を課してユージンを引き取った。
だけどその割には、この子に貴族としての教育を不思議なほど施していない。
――何か、男爵家の行動が噛み合っていない気がするのよね。
「……アリシア様?」
男爵家の真意について思いを巡らしているうち、気づくとユージンが心配そうな表情で私を見つめている。
「……ユージンが私を慮ってくれたのは素直に嬉しかった。その気持ちは受け取っておくわ。だから、あまり自分を責めないようにね」
「――は、はい!」
私がユージンを労ると、すかさずエルミナからツッコミが入る。
「余り甘やかさない方が良いっすよ。どうせまた暴走しそうですし」
ここ数日、私達三人はリオーネ領について話し合いを重ねている。
時が経つにつれ、ユージンとエルミナとの関係性が変わったようだ。
ちょっとヒヤヒヤする所もあるけど、関係が深まっているのは何よりだと思う。
◇
私たちが帰路につこうと馬車へ向かっていると、後方から声をかけられた。
最初に気づいたユージンが、先ほどまでとは打って変わった態度で応える。
「ラウネル男爵。本日はお越し頂きありがとうございます」
――ラウネル男爵!?
先ほどまで思案していた張本人に会えるなんて、と偶然の一致に驚いたが、彼の次の言葉で納得する。
「何、義理とはいえ息子の晴れ舞台だ。参加するのは当然だろう」
――父上とは呼ばないのね、ユージン。
少し緊張気味の彼を見て、男爵家内の複雑さを感じ取る。
男爵と直接会うのは初めてになる。
壮年の誠実そうな紳士といった印象だ。
「レオニエル公爵令嬢。リオーネ領へ行かれる前にお話する機会があることを嬉しく思います。ユージンは貴方様のお気に召しましたかな?」
……男爵なりに、ユージンのことを気遣っているのかしら。
「それはもちろんですわ。彼と一緒にいると守られている実感がわいてきますの。女としてこれほどの喜びはありません」
私は淑女の礼と共に、男爵へ言葉を述べる。
正確には、母として、だけどね。
私の言葉に、男爵の目がほんの一瞬だけ細くなった。
真偽を見定めるかような視線を向ける。
だが間をおかず、すぐに彼の表情は温和なものに戻る。
「レオニエル公爵令嬢――貴方ならこの子を任せられそうだ。ユージンをよろしくお願いします」
会釈をする男爵の言葉を受け、ふとユージンに目を見やる。
彼は男爵へ静かに目礼したままだ。
「ええ、私もユージン様を頼りにしております。どうぞご安心くださいませ」
その後、男爵と幾つか形式的な会話を交わし、私たちは再び馬車へ向かう。
◇
「ねえ、ユージン。貴方から見てラウネル男爵ってどんな方なの?」
私は、なるべく不自然にならないような口調で問いかけた。
「……厳しい人です。でも、理不尽を言われたことはありません」
「そう。そうなんだ」
「ただ男爵は、騎士としての資質以外についての僕には無関心なようです。なので、僕はいつも自分に与えられた役割を考えてました。僕を拾ってくださったあの方の望みに応えるための」
その健気な物言いが、私の胸を刺す。
ユージンの、男爵家での立場を垣間見た気がしたからだ。
今は、これ以上ラウネル男爵家について話さない方が良い。
いずれタイミングを見て、改めて聞き直そう。
「――それじゃあ二人とも、このあと引き続き打ち合わせをしましょう」
「「はいっ!」」
◇
出発までの慌ただしい日々は、あっという間に過ぎていった。
そして旅立ちの日。
私たちは、新たな、それでいて懐かしいリオーネの地へ向けて歩みを進めた。
――その三日後。
私たちは彼の地で、手ひどい歓迎を受ける。
それは、襲撃という名の暴力だった。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
ここまでで帝都編は終わりになります。
次回からは、アリシアにとって因縁の土地、リオーネ編となります。
舞台もガラッと変わって、新しいキャラも出てきますので、是非お楽しみに!
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それでは、明日20時30分にお会いしましょう。




