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第26話 ユージンの勇み足、アレク殿下に喝破される。

初めましての方も、またお目にかかりましたね、の方も。

ようこそいらっしゃいました。

本日の更新です。

「……どういうつもりだ。説明せよ」


 殿下の許しをえて、彼は応える。


「はい、理由は二つあります」

 

 ――え?あるの?

 ちゃんとした理由。


 やきもきする私を尻目に、ユージンは語り始める。


「まず一つ目は、リオーネ領と、レオニエル公爵領。両者の位置関係です」


 その言葉に、わずかに第二皇子の片眉が上がる。


「隣接したこの二領が婚姻によって結びつけば、帝国内での勢力としては多大なものとなります。これは、私のような者には余りに過ぎた力かと存じます」


 ……驚いた。

 

 帝室や他の貴族からの警戒が深まるだろうというのは私も懸念している。

 ユージンの具申は思った以上に真っ当だった。


「もう一つは、アリシア様の置かれた立場です」


 え?わたし?


「今回のご命令、万難を排し完遂する所存です。しかし、万が一統治に失敗した時は、総督を命ぜられた私がその責を負うのは当然であります」


「……ふむ、それで?」


「アリシア様は、あくまで私の補佐役。ですが婚約者である以上無関係ではいられなくなります」


「なるほど。婚約したままだと、アリシア嬢にも罪が及んでしまう。それを危惧しておるのだな、貴様は」


「……殿下のご慧眼、誠に敬服いたします」


 ――なるほど。よく考えたわね、ユージン。

 私を守りたいが故の提案だというのも伝わってくる。

 

 本当に、嬉しい。

 ――でも。


「貴様の言は理解した。ではユージン、余からも問おう」


「はい」


「まず、貴様にも分かる程度の懸念、余が抱かぬとでも思ったか?」

 

 薄く、そして鋭い目線でユージンを見下ろす殿下の問いかけに、彼は微かに背中を震わせながら頭を垂れる。


「……いえ、決してそのようなことは」


「そしてもう一つ」


 平伏したままのユージンに、殿下は更にたたみかける。


「アリシア嬢が婚約者でなければ、貴様にとって彼女は単なる他家の令嬢だ。 余は、総督の私情で公爵家の娘を危険な地へ送る命を出すつもりはない。貴様はリオーネ領へ一人で行くつもりなのか?」


「あっ!そ、……それは」


 ユージンは驚いた表情で顔を上げ、何かを言おうと口を開きかけるが、そのまま黙り込む。


 ――殿下の言う通り。

 ユージン、貴方の婚約破棄宣言で私は同行できなくなるのよ。

 そこまでは思い至らなかったの?


「……っ!」

 

 顔を赤くしながら口を何度も開きかけるが、言葉を紡ぎ出せないユージン。

 見かねた私は思わず声を上げる。


「――殿下、恐れながら申し上げます」


「……発言を許す」


「ユージン様の願いには私欲がございません。彼の帝国への忠義心は本物であり、全ては帝国のため。そして、私を庇うための思いから出た言葉でございます。それに――」

 

 ユージン。

 

 貴方が真摯に私のことだけを考えてこの提案をしたのはよく分かる。

 本当だったら飛び上がって抱きつきたいくらいよ。


「私は、私の意志によってユージン様と共にリオーネへ赴くのです。どのような立場であれ、ユージン様と同じ責任を負う覚悟にございます。ですからどうか、どうか彼の今の発言をご容赦くださいませ」


 一瞬の、そして長い沈黙。

 そして、殿下は静かに呟く。

 

「……仲の良いことだ」

 

 私に視線を合わせ、わずかに含みのある笑みを浮かべる。


「今回はアリシア嬢に免じて、貴様の失言は聞かなかったことにしておこう。――良きパートナーに恵まれたな」

 

 その言葉に一瞬だけ、仮面の奥にある別の表情を垣間見た気がした。

 けれど次の瞬間にはもう、為政者の顔へ戻っている。

 

「成功すれば一定の自治権を与えるとは言ったが、それはあくまで帝室の裁量下にある。貴様の心配は杞憂に過ぎぬよ。――それより貴様は他に考えることがあるだろう」


 殿下の言葉に、ユージンはハッと顔を上げる。


「戦う前から負けることを考えるなど愚の骨頂だ。大切な人を守りたいのなら、その身を以て守り抜け」

 

 私に一瞬だけ目を向けてから、殿下は告げる。

 

「彼女は、貴様が身命を賭するに値する女性と心得よ。――以上、退出を許す」

 

 殿下の号令により、ユージンがうなだれるように深く頭を下げる。

 私もそれに続く。

 

 ……ユージンをフォローしてくれた。


 ユージンの発言は、本人に自覚はなくともれっきとした帝室批判だ。

 にもかかわらず、アレク殿下はこの子の立場が悪くならないよう言葉を下した。


 殿下自身が思い描く計画の為だろうけど、それでもユージンへの配慮はありがたい。


 それと、相変わらず私への評価が過大だなあ。

 

 ……でもまあ、悪いことではないか。

 

 私は心の中で、殿下へお礼をつぶやく。

 

 こうして私たちは解放された。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


続きも読んでみたいと思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいねで応援していただけると嬉しいです。


それでは、明日20時30分にお会いしましょう。

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