第25話 婚約破棄宣言(10日ぶり2度目)
初めましての方も、またお目にかかりましたね、の方も。
ようこそいらっしゃいました。
本日の更新です。
「アリシア・レオニエル公爵令嬢との婚約。今一度のご再考を願います!」
「……ほう?それを本人ではなく余に言うか、ユージン」
「殿下に対し無礼であるぞ!ユージン・ラウネル総督!」
脇に控える官吏の咎める声にもユージンは動じない。
リオーネ領平定のため、ユージンの総督への任命式が行われていた謁見室。
広大な空間には近衛兵が整然と並び、一部の貴族たちが後方でなにやら話し込んでいる。
そこへユージンの宣言がひときわ大きく響き渡り、残った出席者たちは騒然となった。
彼の後ろに控える私は、この宣言に思わず卒倒しそうになる。
ご再考を願うって……、実質的な婚約破棄宣言じゃないの。
今までせっかく私が慎重に慎重を重ねて積み上げてきたものを、あっさりひっくり返しちゃったわ、この子。
だいたい、そんな話するなんて一言も聞いてなかったわよ。
まるで成長していない……。
その時はそう思った。
◇
事の始まりはこうだった。
皇帝陛下の代理として玉座に座る第二皇子殿下。
殿下と向かい合わせて、少し距離を置いた場所で跪き、臣下の礼を取るユージン。
私はさらに、ユージンの斜め後ろに控えていた。
殿下の脇に控える官吏が手にした巻物を開き、そこに書かれている勅令を読み上げる。
「ユージン・ラウネル」
「はっ」
「貴君をリオーネ地方総督に任ずる。期間は一年とする。その勲功顕著なるときは、引き続き同地の総督として、一定の自治権を認める」
官吏の言葉に、謁見室内をどよめきの波がさざめいてゆく。
それは決して、友好的なものではない。
猜疑が半分、不満が半分といった所だろうか。
まあ、ユージンの立場を考えれば、仕方のないこと。
むしろ、もっと反対の声が大きく上がると思っていた。
恐らくだけどここに居る貴族たちは、今回の話をユージンが昇格する機会ではなく、扱いづらい地方への厄介払いとして命じられたと判断しているのだろう。
「微力ながら、全力を尽くすことをここに誓います」
周囲の喧噪にも構わず、宣誓の声を上げるユージン。
……こういう所は、変に肝が据わってるのよね。
「そして、アリシア・レオニエル公爵令嬢」
「はい」
「貴君はユージン・ラウネルの婚約者としてその任を助け、共に恒久なる平和をリオーネ領にもたらすことを命ずる」
「……ユージン様が彼の地を見事平定されるよう、影で彼を支えることをここに誓います」
再び室内が騒がしくなる。
公式の場に直接婚約者、それも女性が呼ばれ、直々に勅令を受けるなど異例なことだ。
今度は好奇の声が殆どって所かしらね。
いい見世物だわ。
さぞかし貴族的にふさわしい噂話として、帝都に住む他の貴族たちへ吹聴するのでしょう。
もっとも、この程度の扱いは予想内だ。
そうでなくても、魔力を持たないことで私たちは差別の目で見られているのだから。
「両者とも、その任を全うせよ。以上、これをもって任命と定める」
官吏の宣言により、任命式の終了が告げられた。
私達がアレク殿下からの退出の許可を待っていると、ふいに彼から問いかけられる。
「ところで、他に望みはないのか?これでも話を強引に進めたことを自覚していてな。特別に何かあれば聞こうではないか」
――そんなのある訳がない。
公式の場でのこのような呼びかけは、単に形式的なものだ。
殿下、いや帝室が寛大だとアピールするための。
「……それでは、ひとつだけお願いの儀がございます!」
まって。
待って待って。
何を言い出すの、ユージン。
これは貴族に対する儀礼以上の意味なんてないのよ。
このくらい、あなたも貴族の家に属するのであれば理解……。
…………。
おしえていなかったー。
私が教えなきゃいけなかったー。
ねえ、何か考えがあってのことなの?
どうなのよユージン。
そして冒頭の宣言に戻る。
この展開は予想していなかったー。
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それでは、明日20時30分にお会いしましょう。




