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第24話 家族とは?(哲学ではない)

初めましての方も、またお目にかかりましたね、の方も。

ようこそいらっしゃいました。

本日の更新です。

 執務室に入った私たちは、向かい合わせのソファへ腰掛ける。

 

「今日は一日、目まぐるしかったっすね」


 本当に。

 密度の濃い一日だったと私も思う。

 

「そうね。だからこれで今日は終わりにしましょう」


「リオーネ作戦会議っすね」

 

 エルミナの率直すぎる作戦名に微笑みつつ、相づちを打つ。


 ――実はその話ともう一つ、エルミナに話そうとしていることがある。

 それは、私の前世の記憶。


 私の覚悟が決まった以上、彼女には打ち明けた方が良いのではないか。

 このままではいずれ、私とエルミナとの間に認識の齟齬が生まれ、彼女からの不信を招く恐れがある。

 

 ならば――


 ――いや、違う。

 私は恐れている。


 エルミナが私を拒絶することを。

 幼い頃から積み重ねてきた、私たちの関係が変わってしまうことを。


 記憶を取り戻した直後の私は、ユージンにだけ嫌われなければいいと思っていた。

 でも今は、エルミナが私から離れてしまうことにも恐怖を感じている。


 家族にも、周囲にも疎まれていた私を、ただ一人受け入れてくれた人。

 その関係が変わってしまうくらいなら、黙っていた方がいい。

 

 ――止まらない思考を頭に巡らせた私は、エルミナに声をかけることができず押し黙る。

 

「アリシア様、どうかしたっすか?お疲れなら明日にでも」


「……エルミナ」


「はいっす」


 

「――もし私が、前世で王だったことを思い出した、なんて言い出したらどうする?」


 しまった。

 思考の波に溺れたせいか、つい言葉に出してしまった。


「……それはもう、どっひゃあ、っすね」


「そ、そうよね。バカみたいなこと言ってごめんなさい」


 私が慌てて冗談に変えようとすると、エルミナは少しだけ目を細めた。


「今のはきっと、聞かなかったことにした方がいいやつっすね」


「え?」


「私がうっかり納得したら、アリシア様が困りそうですし」


 彼女は一拍置いて、肩をすくめる。


「なので冗談扱いということで。ただ――」


 いつものエルミナの表情に戻る。


「私は今のアリシア様を敬愛するメイドっすよ。どうぞご安心を」


 ――エルミナの言葉に、胸がすうっと軽くなる。


 どんな私でも、私。

 それを彼女は受け止めると言ってくれている。


 ありがとう、エルミナ。

 今日何度目かの、心からの感謝を。



「お髭を生やしたアリシア様、見てみたいっすねぇ……」

 

 エルミナがなんか言ってる……。


 ◇

 

「それで、殿下から賜る人員の扱いなんだけど」

 

「はい、彼らは協力者であると同時に、アリシア様達を監視する間者である事は明白っす」


 私たちは最後の確認として、殿下直属の配下への対応について協議した。


 彼らを使うことは同時に、レオニエル公爵領の内情が帝室に筒抜けになるということ。

 貴族領の運営として望ましいことではないけれど、この際は仕方がない。


「そう。だから帝室から干渉される口実を、極力与えないようにしたいの。今の段階では殿下と私たちの利害は一致してるけど、今後はどうなるか分からないから」


「では、私に彼らを統括するようお命じください。私と、私の実家の連絡網で、逆に彼らの行動を監視するっすよ」


 エルミナならこのような監視や情報収集はお手の物だろう。

 私は彼女の言葉に頷いた。

 

「……メイドの役割もあって大変だとは思うのだけど、頼めるかしら?」


「任してくださいっす!」


 疲れを感じさせない声で承諾してくれたエルミナは、そのまま立ち上がる。


「それでは早速、ウチの実家の皆へ馬車馬になるよう伝えるっす。あ、アリシア様はもうお休みください」

 

「ふふ。人を使うことにかけては流石ね、エルミナ」


「それは……アリシア様の真似をしているだけっすよ」


 一拍おいたあと、微かに意地悪な笑顔浮かべながら彼女は応える。

 

「え?わたし、そんなに皆をこき使ってる?」


「ええ、それはもう。帝都に居ながら領地運営できちゃうくらいには」


 ……それはそうだ。

 私も反省しなきゃと思っていると。

 

「――ただ、アリシア様の命令と聞けば、ウチの実家を含め領地の皆さんは嬉々として動いてますけどね」


 楽しそうに話すエルミナに、私は微笑みながら頷いた。

 それは貴方がそういう雰囲気を作ってくれるからよ、と思いながら。

 

 ◇

 

 エルミナに促がされ一人ベッドに入った私は、今日一日の思いを噛みしめる。

 記憶は関係なく、今世(いま)の私にとって。

 

 ――ユージンとエルミナ。

 

 血は繋がらなくても。

 立場はそれぞれ違っていても。

 

 隣にいてくれる。

 それだけで十分だ。


 私の心がじんわりと温かくなる。

 その日、私は今世で一番の眠りについた。


 ◇

 

 翌日の朝、使者からの下命により、四日後、第二皇子殿下からの正式な任命式に私たちは出席することが決まった。


 ……その日が思いもよらない展開になることを、今の私は知らない。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


続きも読んでみたいと思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいねで応援していただけると嬉しいです。


それでは、明日20時30分にお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
かなり、優秀な人物のようですが、エルミナは何者なのでしょうか?気になります。
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