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私に婚約破棄を告げたのは前世の息子でした ~冷血女王、今世は過保護ママになります!~  作者: 森下ヱンジン


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19/23

第19話 アリシア、空回りのゆくえ。

本日も更新しました。


今回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

「……理由を伺っても?」


「はい、それがユージン様を引き取ったラウネル男爵家からの条件でした。この孤児院からは、全ての縁を切るように、と」


 縁を切れ、ねえ。

 さしずめ、貴族の体面って所かしら。

 

 それはそれとして……。


「ユージン様、ここは貴方にとって第二の生家のようなものでしょう。さぞやお辛かったでしょうに」


 私の言葉に、ユージンは何故か懐かしむような笑顔を見せる。


「それが、一番良いと思ったのです」

 

 その短い言葉の奥に、様々な感情が潜んでいるのを感じた。

 そこへ、院長が柔らかな声色で話し出す。


「ユージン様は利発な方です。ここの運営が厳しいことを幼い頃から気にしていました。ね、ユージン様」


「……様はいらないよ」


「あら、それは失礼。でも、これはけじめなのよ。ご理解なさい」


 院長はユージンから再び私に向き直る。


「彼が騎士団へ入団したと耳にした後です。匿名で毎月ここの孤児院へお金が届くようになりました。子供達に使ってください、と書かれた手紙と共に」

 

「毎月、ですか?」


「ええ、今も欠かさず毎月同じ日に。その日は騎士団の賃金支給日だと、後で知りました。」 


 院長の言葉に、思わずユージンに視線を送る。

 彼は一瞬目を逸らし、小さく息を吐いた。

 

「やっぱりバレてたんだね」


「そんな気遣いは無用!……と言いたい所だけど、正直助かっているわ」


「少しでも、役に立てるかなって思ったから……」


「――ありがとう」

 


 ……なんか、いいな。


 院長とユージンの間に流れる空気は、柔らかくて、どこか眩しかった。

 ユージンには、信頼できる人が既にいるんだ。

 嬉しい。


 ――嬉しい、はずなのに。

 

 私の知らないユージンを、この院長は知っている。

 

 何だろう、私の中に何かが澱むのを感じる。

 体調でも悪いのかしら。


 それより、ユージンにとってこれほど大切な場所。

 そこに、顔を出すことすら許されないなんて。


 今の私に出来ることは……。


「……ひとつ、提案がございます」

 私はしばらくの思案の後、その内容を二人に告げる。


「定期的に、レオニエル公爵家として私がこちらに慰問をする、というのはいかがでしょう」


 突然の私の提案に、二人は目を丸くする。


「そして、ユージン様には私の護衛として同行してもらうのです。騎士としての実力は十分におありですし、何より婚約者が護衛を務めるのは自然な流れですわ」

 

 ……というか、ユージンより能力のある騎士なんて、帝国内でも片手で数えるくらいじゃない?

 

「――これなら、ラウネル男爵への説明も問題ないかと存じます」


 うん。我ながらいい案だと思う。

 公爵家の慰問となればユージンも胸を張ってここに来られるし、ラウネル男爵も従わざるを得ない。


 これは喜ぶだろうとユージンを見ると……。


 笑顔を見せながらも、その顔色は冴えない。

 うつむきながら、力を込めすぎてこわばった身体が微かに震えているように見えた。


 ――え、待って。

 私、なにか間違えた?

 

 全部丸く収まると思ったんだけど。

 どう見ても、喜んでいる態度ではない。


 言葉を失う私へ、見かねたように院長がフォローに入る。


「レオニエル公爵令嬢、あなた様のご提案はとても素晴らしいものです。実現されることを心よりお願い申し上げます」


「で、ですよね!?もちろん実現させます。ですが、その……」

 

 褒められたくて言ったわけじゃない。

 ……だけど。

 

 私は、この子の為に。

 母親として、全力で――

 

 私の中から、暗い感情が頭をもたげる。

 

「――私の提案が、余計なことだったのであればお詫びいたします。どうぞお断りくださいませ」


 私の言葉に、ユージンは驚いた様子で顔を上げる。


「違うんです!アリシア様には本当に良くしていただいてます!本当に、心から感謝しているのです」


 ユージンの必死な言葉に、私はいつもと違う思いが含まれているのを感じる。

 それでも、穏やかな気持ちは戻れない。


「何か、ご事情が?」


 わずかに棘を含む私の言葉に、ユージンはしばらくの間うつむいていたが、やがて静かに顔を上げる。

 

「……これは、僕の問題なんです。アリシア様を心からお慕いしてる、僕の」


 ――お慕いしてる?

 

 ユージンが何を考えているかが分からない。

 それじゃあ、どうして素直に喜んでくれないの?


挿絵(By みてみん)

ここまでお読みいただきありがとうございます。


続きも読んでみたいと思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいねで応援していただけると嬉しいです。


皆さまからの反応が、次の話を書く大きな励みになります。


表紙となるイラストは、画々市先生に描いていただきました。

画々市先生とは何度もイメージのすり合わせを行っていただき、私自身の持つキャラクターや世界観のイメージを余すところなく表現していただいております。


作品と合わせて、こちらのイラストでイメージを膨らませていただければ嬉しく思います。


それでは、明日20時30分にお会いしましょう。

次回からは一話づつの更新となります。



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