第16話 孤児院での騒動。
本日も更新しました。
今回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。
ユージンが剣を携えて向かったという孤児院。
一体、何があったの?
孤児院への襲撃?
騎士団寮で見た、彼の強さは覚えている。
それでも、万が一を想像した私は言葉を紡ぐこともできない。
「アリシア様。無理はしないで欲しいっす」
私の様子を見て、エルミナが心配そうに声をかけてくれる。
私は彼女の言葉に頷きつつ、馬車を目一杯走らせるよう指示した。
車内でじっとしていることすらもどかしい。
――そして今、簡素な門扉の前に二人で立っている。
◇
一見した所、人の姿は確認できない。
もしかして、既に建物内で何かが行われているかもしれない。
「アリシア様、今度は私が先に入ります」
焦りの表情を浮かべる私に、エルミナが諭すように言う。
私たちは失礼を承知で門扉を開け、孤児院の玄関に張り付いた。
少しでも気配がないかと耳を澄ませていると――
微かに、ユージンとその他の人々の声が漏れ出ていた。
私は神経を研ぎ澄ませながら、その声を聴き分ける。
「えへへ、ユージン、捕まえたー」
「あ、ずるいぞ!ユージンを独り占めするなよ!」
「ほらー、ケンカしないの」
「ユージン、後で俺に剣術教えてくれよ!」
「ねえねえ、あのね。このアップルパイ、ユージンのために作ったのよ。はい、あーん」
「――あ、ありがとう、みんな」
「……」
一緒に耳を澄ませていたエルミナと顔を見合わせる。
「聞こえました? アリシア様。これは……」
「……荒事にしては、ずいぶんとかわいらしい声が聞こえるわね」
私たちは中を確かめるため、玄関脇の小さな庭へそっと足を忍ばせた。
小さな窓を見つけた私は、息を潜めてこっそりと中をのぞき込む。
そこに見えるのは、ささやかなパーティの飾り付けを施した部屋の中で、子供たちに囲まれているユージンの姿だった。
彼は困惑しながらも、優しそうな表情で子供たちと戯れている。
子供たちは、恐らくここの孤児院に住んでいるのだろう。
あんな表情もできるのね、ユージン。
あなたにとって、ここが大切な場所であり、大切な子供たちだということは態度を見ればすぐに分かる。
部屋の中に居る子供たちと息子を見ながら、私は思わず笑みがこぼれた。
あの子が危険な目に遭っているわけではないことに、心から安堵した。
「――馬車に戻りましょう、エルミナ」
彼女に声をかけつつ、門扉へと足を向ける。
「え?いいんすか? 第二皇子様からの大切なお話があったのでは……」
私の後ろを追いながら、エルミナが声を上げた。
「もう、いいのよ。エルミナ」
「アリシア様……」
エルミナが心配そうな表情で私を見つめている。
「あんな楽しそうな場より優先する要件なんて存在しないわ。邪魔者はひとまず去りましょう」
努めて静かに振る舞う私の言葉に足を止め、エルミナは小さく眉を寄せて思案顔になる。
「……それでは、せめてアリシア様があの方の身を案じてここまで必死な表情で、それはもう今まで誰にも見せたことのない表情でいらしたという事実だけは、きっちりと申し伝えてまいります」
「え、ちょっと待ってエルミナっ」
慌てて彼女を止めようとする私を尻目に、彼女は再び孤児院の玄関ドアへと向かう。
そのときドアが開き、初老の女性が姿を現した。
エルミナが名乗り、私の名を告げると、女性は突然何かに気づいた表情で奥へ向かう。
「ユージン!公爵令嬢様がいらっしゃったわよ!貴方が言っていた婚約相手ではないの?」
やがて、廊下を走る大きな音が近づいてきた。
「――こ、これはアリシア様!なぜこちらへ? あ、いや、アリシア様との約束を忘れた訳ではな」
「落ち着きくださいませ、ユージン様」
驚いたような、困惑したような、焦っているような表情のまま慌てて弁解しようとするユージンを宥める。
彼が少し落ち着くのを待った私は、ここに来るまでの経緯をユージンに話し始めた。
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それでは、明日20時30分にお会いしましょう。
明日も二話掲載予定です。




