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私に婚約破棄を告げたのは前世の息子でした ~冷血女王、今世は過保護ママになります!~  作者: 森下ヱンジン


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12/22

第12話 第二皇子アレクシス

本日もお越しいただきありがとうございます。

「アレクシス=ルクス・ザイフェルト第二皇子殿下。このたびは、私などをお召しいただき光栄に存じます」

 

 私的な謁見にふさわしく、室内に他の者の姿はない。

 彼に促され、ソファーへ座る。


 私は、この部屋へ入る前に決めたことを思い出す。


 ここは前世を思い出す前の――『じゃない方』のアリシアのままでいよう、と。


 前世の知識や経験をちらつかせたところで、不審がられるだけだ。

 相手の目的が不明な以上、警戒するに越したことは無い。


「私のことはアレクと呼んでくれ。毎回そんな呼び方をしたら疲れるだろう」

 

「いや、ですが……」


「というか、私が疲れる」


「…………」


「それとも、命令ってことにしないと、聞いてくれないのか?」


「……アレク殿下、でよろしいでしょうか」


「うん、それでいい」


 彼は満足げな表情で微笑んだ。 


 この方はどこか人を惹きつける雰囲気をまとっている。

 さすがは聡明と名高い第二皇子ってところかしら。

 

「今回アレク殿下から賜りました召喚は、殿下ご自身が命じられた、私とユージン様との婚約について話を聞きたい、というお話でよろしいでしょうか」


 私からの問いかけに殿下は頷く。

 

 私は極力やわらかい口調を心がける。

 本音を悟らせないように。

 

「今回、ユージン様はお呼びになさらなかったのですね」


「彼の前では話しづらいこともあるだろうと思ってのことだ」


「過分なご配慮、誠にありがとうございます」


 私の言葉に、ふっと殿下は目尻を下げ微笑む。


「それにしても――なかなか上手くいっていそうで何よりだ」


「何故、そう思われるのでしょうか?」


「既に彼をファーストネームで呼んでいるからさ」


「……っ!」

 

 彼の言葉に、私は頬を染めながらうつむく。


 ――『じゃない方の私』できてるかしら。


 意図的に()()()()()と呼んだのは、間違いではなかったようね。


 「アリシア嬢。君は一体、彼のどういった所に惹かれたんだい?この話は公爵令嬢として割り切ってるものと思ってたのだが」


 少し間を置いてから、私は静かに応える。


「……自分でも、分かりません。今まで、このような感情を知りませんでしたので」


 ん。この返答、いい感じでしょ。私。


「へぇ。ユージンも中々隅に置けないな。君もそんな表情をするのか」


「えっ、私いまどんな表情してますか?」


「――慈しみ、って感じだな」

 

 私は小さく息を吐き、演じた笑みを崩さないよう改めて気を張る。


 これで第二皇子にも、私とユージンの仲が悪くないって思ってもらえたはず。

 以前までのアリシアを演じる、私の擬態も上手くいってるみたい。


 ユージンには悪いけど、いま婚約破棄を彷彿させるような言動はできない。

 政治的な話はもちろんだけど、何より――


 あの子と私の接点がなくなっちゃうもの。


 それだけは、嫌。


「ところでアレク殿下、もしお差し支えなければ、今回私たちの婚約を決めた意図をお伺いしても?」

 

 そう、これが今回の主題。

 これがハッキリしない以上、私としても策の立てようがない。

 建前でもいいから、まずはこの人の狙いを見定めないと。


 しかし、アレク殿下は私の質問には直接答えなかった。


「アリシア嬢。私は君に期待しているんだよ」


「……へっ?」


 しまった。

 言葉遣い間違えた。

 

 しかし彼は特に気にする風でもなく、話を続ける。


「聞く所によると、レオニエル公爵家の実務は君が担ってるそうだね。父君には失礼だが、彼は統治にあまり熱心とは言えないようだ」

 

 その言葉に、一瞬喉が詰まるような感覚。

 

「だが、レオニエル公爵領は安定している。税の徴収に問題はないし、民の不満もほぼ上がらない。これは君の手腕だろう」


「何故、それを……」


 いきなり当家の泣き所を指摘され、一瞬私はうろたえる。


「私の部下も、それなりに優秀でね」


 そう言って、彼は微笑んだ。

 

「君は十歳からは殆ど領地には戻らず、帝都の別邸にいながら指示を出していると報告があった。これを聞いた時は私も耳を疑ったよ」


 アレク殿下の言うとおり、私は十歳の時に帝都へ連れられた。


 そして、その時から()()()領地に戻ったことはない。

 やりとりは書簡、もしくはエルミナに任せている。


 それでも今まで何とかなったのは、優秀な逓信(ていしん)魔法の担い手であるエルミナと、彼女の生家からの全面的なサポートがあったからだ。


 この人は、どこまでレオニエル公爵家の内情を知っているのだろう。

 少なくとも今の公爵家が、見かけの華やかさだけを取り繕う空虚な器と化していることは把握してるはず。

 

「見事だ――私は、その才覚を買っているのだよ、アリシア嬢」


 その声は、先ほどまでの穏やかな口調とは違う色が混じっていた。

 

 私の動揺をよそに、殿下は意外な方向へ話を持っていく。


「旧リオーネ王国領――いや、帝国領リオーネ地方について、君は何か知っているかい?」


 ――そんなの、知ってるに決まっているじゃない。

お読みいただきありがとうございます。

今回のお話の中で、何か心に残るものがありましたら嬉しいです。

続きが気になると思っていただけましたら、リアクション・感想・ブクマなどで応援いただけると励みになります。

それでは、明日20時30分にお会いしましょう。


次回も二話掲載予定です。

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