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僕の仲間は60,000,000,000,000(60兆)人もいる。  作者: キヨ
第三章 60,000,001,000,000『人』に達した動員数のライブ
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第三十七話 波乱万丈な「女神参拝式」 気障な「信者二号」の登場

 またしても、元気のなさそうな「ストップ」があのガラス張りの小屋から響いてきた。


「一般エリア下層J区、18列103番席の方、おめでとうございます~~~どうぞステージへお上がりください~~~」

「ちっ、また選ばれなかったか……」

「もしか、もしかすると、これは先輩の信仰に対する試練なのかしら~?」

「さっさとステージに上がらせて、『月隠の顔』の前で思いっきりアピールさせてもらった方が、俺の信仰を証明できるんじゃないの?」

「最も、最も絶望的な瞬間に成功を掴んでこそ、極上の幸福感が得られるものです。『月の女神』は、まさにその巨大なギャップを先輩に体験してもらうために、敢えて早いうちに落選の悔しみを味わってもらっておくのではないでしょうか。」

「つまり、サプライズってこと?アイツ、本当にそこまで細かく考えてくれるのかな……だって『月隠の顔』が、俺みたいなごく普通のファンにそこまで気遣ってくれるわけないだろ!」

「十分あり得ますわよ。そもそも彼女ってそういう人ですもの。」

「そうかもな。何しろ、アイツって頭の中がファンのことばかり考えている、とんでもないお人よしだからな……」



 ―――――――



 今回ステージに登場したのは、わりと若くおしゃれな男性で、見たところ20代後半くらい。


 そのチャラくてけばけばしい服装からして、ろくな人間ではなさそうで、十中八九はプレイボーイだろう。


 先のおじさんとは違い、この男は素手で登場し、奉納品の気配は皆無だった。


「ようこそ女神のもとへ~おう、すげーイケメンさんじゃありませんか~~~さて、お名前を教えていただけますか?」

「相倉って言います。」

「はーい相倉さん~~~まずは『選ばれし者』の称号を授かったこと、おめでとうございます! さっきの柴間さんと比べると、ずいぶん身軽ですね~」

「ああ、俺の奉納品は量じゃなくて、質を重視してるんっす。女神様がご覧になれば、仮面の下に隠されたその美貌は、必ず笑顔が咲いてくれるものっす!いや、仮面をはずして、その美貌を俺の私物にしてくれるかもしれませんぞ~!」


 その言葉が口に出た途端、野次が飛び交った。


 この図々しい発言を聞いて初めて、真のナルシストとはこういうものだと悟った。


 花束を強く握りしめた両手で、中のバラの茎を傷つけないように、やむを得ず自分の手の細胞に命令を下し、人を殴りたくなる、行き場のない衝動を強引に抑えなければならなかった。


「おぉ~~~、なんて自信満々なんでしょう! その分、楽しみにしています! それでは、相倉さん、このミステリアスな奉納品の正体を明かしてください!」


 この自惚れ屋かつチャラ男の奉納品の渡し方と言ったら、本当に腹が立って仕方がなかった。


 どう見ても、こいつはまるで……


「一体何やってんだ??? あの気障野郎、『月隠の顔』にプロポーズしてるじゃねぇか!!!いくらなんでもやり過ぎ!!!」

「先輩、お、落ち着いてください……」

「あの畜生めのこと言っただけだ!いったい何が悪い???」


 自分の言い分に不適切な点などまるでないと思う。


 女の子に向かって片膝をつき、手に指輪のケースとしか思えないようなものを握っている場面——これってプロポーズ以外にありえるか? 借金返済だったりしてもこんな場面になるはずはないだろう?


 現場の中継カメラはとっくに、あの小さな赤いケースに焦点を合わせていた。


 蓋を開けると、古代の象形文字のようなものが刻まれた、歴史の重みを感じさせる純金の指輪が画面に映し出され、ホールのほぼ全員の口を開けたままにしてしまった。

 

「あぁ~高貴で優雅、しとやかで麗しい女神様、この指輪は古代王室からの賜物であり、我が相倉家が代々受け継いできた至宝でもあります。世にただ一つ、他に類を見ないものっす!当時の王室の勅書に記されている通り、この指輪を付ける資格があるのは、この世で最も麗しき女性のみと記されてあります。その女性と結ぶ限り、必ずやわが一族は子孫繁栄となるに相違ございません! ゆえに、この品を捧げ、恋慕の情を表す次第です!」


 あちこちから湧き上がったブーイングは、あっという間に罵声へと変わり、生中継を通じて全国各地に広まった。


 中でも、ステージ最前列にいた僕が吐き出した無礼極まりない言葉は、その代表格だった。


「貴様!!!下田よりも恥知らず!!!この指輪って古物市場で拾ったガラクタかどうかなんて別にどうでもいいけど、そもそも何千年前の骨董品で女性にプロポーズしやがる奴がどこにいるんだ???しかもいきなり『子孫繁栄』って話を持ち出しやがって、身の程知らずもいいところだ!!!」


 僕の頭上で今にも燃え上がりそうだった髪の毛は、まさに「怒髪天を衝く」という慣用句を文字通りに表現していた。


 僕がステージに飛び上がろうとしたその時、右手の袖口に反対方向からの微かな引っ張りが伝わってきた――


 清音が、精一杯の力で僕の袖口を死に物狂いで引っ張りながら、優しく諭してくれたのだ。


「先輩! どうか冷静に! あの言葉を聞き流してください!」

「あんなの無視できるわけねぇだろ!!!もうセクハラ同然じゃねぇか!」

「贈り物の際によくあることなんです。所詮はファンを楽しませるだけのサービスですから、本気にしなくて大丈夫です!」



 ―――――――



 清音だけでなく、心臓も僕を説得する陣営に加わった。


「ご主人様、向こう見ずな行動はお控えください。それはご主人様にとっても『月隠の顔』にとっても得策ではありません。」

「もう限界だ!さっき文緋があのオジサンに体を触られたのを見て、ただでさえムカついてたのに、今度はセクハラ野郎が来やがるなんて……兄貴として、見て見ぬふりなんてできるか!」

「お気持ちはわかります。他のことはともかく、長実さんが言われた通り、あれはただのサービスだけなのです。別の角度から考えてみてください。あの指輪をつければ彼が言うような効果があるのなら、指輪を受け取るだけで、指につけずに済む話ではありませんか? 減るもんもありませんし、タダでプレゼントももらえる。いかにも一石二鳥です。やらない手はないでしょう?」

「ほう、心臓さんにこんな利己的で腹黒い一面があるなんて思いもしなかったな……」

「何せ我々細胞の役目は、ご主人様のお役に立つことですから。」


 心臓と清音の共同説得のおかげで、どうにか怒りは少し収まった。


 偶然にも、ガラス張りの小屋にいる「月隠の顔」は、あたかも心臓の言葉を聞いたかのように、あの気障野郎がケースから指輪を取り出して彼女の指に嵌めようとしたところに、窓から差し出していた手を引っ込め、小屋の中で遠慮気味に手を振った。


 司会者はその様子を見てすぐに介入し、余計な手順は抜きにしてこの家宝をそのまま女神様に贈るよう勧めた。


 望みが叶わない以上、あのチャラ男は観念せざるを得ず、指輪をケースに戻して「月隠の顔」に手渡すと、先ほど柴間が見せたのと同じような「イキ顔」を浮かべ、文緋の哀れな右手を弄んだ。


「どいつもこいつもこうなんだ……ファンの機嫌を取るために、そこまで自分を苦しめる必要があるのか?」


 目の前の視覚汚染に耐えかね、視線をそらした。


 清音は、僕がステージ下部の金属製の柱をじっと見つめているのを見て、癇癪を起こした子供をなだめるように、気長に僕を慰めた。


「あの…先輩のお気持ち、深く共感いたします。でも大丈夫です。すべてのファンとのやり取りはあくまで形式的なものに過ぎません。運営側も『月隠の顔』本人も、ファンとのやり取りの節度をしっかりと保ちますし、ファンが度を越した行動をとらないよう心掛けていますから。」

「これでもまだ度を越していないって言うのか!俺から見れば、運営の許容範囲なんて海よりも広いじゃないか!」

「実際、私も初めてこうしたイベントを見た時は、先輩と同じような考えを持っていました……」

「じゃあ今は? 自分の最も憧れるアイドルがそんな風に扱われるのを見ることに、もう慣れちゃったわけ?」


 清音に対してこんな風に話すべきではないと分かっていたが、僕の詰問じみた口調は止まらなかった。


「慣れたというわけではないですが、ただ……ただ、他人のことをとやかく言う権利は自分にはないと思うんです。」

「なぜ? 気に入らないなら、無理に受け入れる必要なんてないじゃないか!」

「彼女はみんなのアイドルであって、清音の私物ではないからです。みんなが『月隠の顔』への愛ゆえに、ああいうように自制できなくなっているのだと思う限り、私は平常心で受け止められるんです。」


 つまり、僕がこれほど過激な反応を示すのは、「月隠の顔」を僕の私物扱いしてしまっているからだ。


 言い換えれば、所有欲に駆られてしまっているのだ。


 ただ、僕の「月隠の顔」に対する所有欲は、他のファンとは少し違う。


 これが正常な欲望と言えるかどうかは分からないが、「清音のように平然と受け入れてみたら?」と言われても、僕の答えはただ一つ――死んでも無理。


 とにかく、もう清音とこの話題を深く掘り下げるわけにはいかない。まだ自分の心と向き合う準備ができていないからだ。


「にしても、君は『月隠の顔』と本当に似ているね。」

「え? 先輩、と、とおっしゃいますと?」

「だって、君といい彼女といい、いつも他人を優先して自分をおろそかにするお人よしだから~」

「お、お買い被りです……女神様とは比べ物になりません……」


 照れくさそうにうつむく清音を見ながら、僕は思わず口元を緩め、ほっとしたような表情をした。

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