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僕の仲間は60,000,000,000,000(60兆)人もいる。  作者: キヨ
第三章 60,000,001,000,000『人』に達した動員数のライブ
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第三十五話 波乱万丈な「女神参拝式」 開幕

 今夜で2回目となる3分45秒が終了すると、第3ステージは、100万人の人間と数十兆の知的生命体からの喝采、ホール全体を照らす絢爛たる照明、そして空一面に舞い散る銀白色のリボンと共に幕を閉じ、この殿堂入りパフォーマンスに完璧なフィナーレを飾った。


「月隠の顔」は、ダンサーや演奏者全員に囲まれながら、ステージ中央で観客全員に深々とお辞儀をした。


 一晩中張り詰めていた神経が完全に緩んだせいか、彼女の足取りは少しふらついているように見えた。


 一方、僕の頭の半分は、本人以上に高ぶる達成感に酔いしれている。残りの半分は、最後の目玉イベント―――ファンがステージに上がり、「月隠の顔」と直接交流するコーナーを心待ちにしていたため、そのことにはあまり気にしていなかった。



 ―――――――



 司会を務める男性が登壇すると、終わりのないほど続いた拍手と歓声がようやく徐々に収まっていった。簡単な自己紹介の後、司会は交流コーナーの具体的な流れについて説明を始めた。


「敬虔な信者の皆様―――!まだ盛り上がっている最中で、『月の女神』とお別れするのが辛いでしょう? まあまあ、落ち着いてください! 皆様がこの最後の目玉イベントを待ち望んでいたことは承知していますが、仲間入りしたばかりの新しいファンの方々にも説明しておかなければなりませんからね! OK! それでは、毎回のライブに欠かせない恒例イベント―――胸躍る『女神参拝式』となります!『女神参拝式』とは、私の後ろの大型スクリーンに座席番号がランダムに表示され、『月隠の顔』がその中から20名の幸運な方を抽選で選んだ後、その方にステージに上がっていただいて、女神様に『奉納品』を捧げていただくイベントです!もちろん、抽選は公平に行われて、どなたにでもステージに上がるチャンスがあることを保証しますので、ご安心ください!」


 これって、白々しい嘘じゃない? 一人当たりの確率が百万分の1という超低確率であることならともかく、もし他のファンに、20人のうち僕みたいな「当選が内定済み」というコネを持つ者がいることが知られたら、その場で史上最大規模かつ最も激しい集団暴動が勃発するだろう。


 僕に取って代わられた名もなき友よ、心からお詫びする……


 罪悪感は一旦脇に置いて、この極めて貴重な枠を他人に渡すつもりはない。


 この「絶対にモノにしてみせる」という気迫は、バラの花束をぎゅっと握りしめた両手や、そわそわと待ちきれないような体の姿勢からも見て取れる。交流コーナーが正式に始まるまでまだ少し時間があるというのに。


 確かなのは、このボディランゲージが単に僕個人の意志によるものだけではなく、僕の体内にいる知性ある生き物たちの欲望が具現化された結果でもあるということだ。



 ―――――――



 そこへ、僕の右腕がまた軽く二回つつかれた。


 振り向くと、僕の持つ花束に惹かれる瞳の潤みが光っているのが見えた。


 偶然にも、これらのバラの蕊は雄しべが多い。さらに偶然なことに、若く美しい女性にじっと見つめられると、一部のバラの花びらがオジギソウのようにつぼんでしまい、その鮮やかな真紅とは少しそぐわない様子。


「まさか先輩も、『月隠の顔』はバラが好きだって、ご存じでしたか?」

「う、うん、そうだよ!バラが彼女の一番好きな花だって聞いたから、それで……」

「でも、『月隠の顔』は、どの花が好きか公開したことはついぞありませんけど……」

「ええ──────? こ、これはどういうこと? じゃあ、清音、なぜ彼女がバラが好きだって言ったの?」

「恥ずかしい限りです。実はこれは私が、長い間観察してまとめた推測なんです。ファンからのプレゼントを受け取るたびに、その中にバラ、特に赤いバラが入っていたら、いつも手放せないような様子を見せますし、顔も明るくなるんです。というわけで、きっとバラが好きなんだって思いました……」


 仮面越しでもこれほど細やかに観察できるなんて、これがいわゆる『筋金入りのファン』の実力ってやつか……


 僕は清音より少し多くの裏情報を把握しているほか、ファンとしてのあらゆる面で彼女には到底及ばない。彼女の終身名誉会員の地位は、決して文緋の気前の良さで得たものではない。


 その一方、偶然に「月隠の顔」の好みに当たったのは、まさしく「まぐれ当たり」といったところだ。とはいえ、それを「テレパシー」と言い換えたほうがずっとロマンチックだ。


「なるほど……じゃあ、花を高く挙げて『月隠の顔』に見えるようにすれば、俺を選んでくれるかもしれないね~」

「先輩は、そうしなくても、絶対に選ばれると思いますよ。」

「は? な、何言ってるの?俺なんてさ、商店街の前の福引で一度も当たったことないくらい不運なんだ……参加賞くらいのポケットティッシュすら当たったことないんだぞ!」


 清音は目を細め、手で口元を覆い、それから無邪気な口調で答えた。


「だって先輩は、私が今まで出会った中で、一番真心込めた『信者』ですもの。だからこそ『月の女神』はきっと先輩の願いを叶えてくれると信じています。」


 僕は一瞬呆気にとられたが、やがて彼女と同じような口調で答えた。


「じゃ、あなたの言う通りになりますようにね! 運に関しては自信がないけど、真心ならそこそこ自信はあるから~」

「はい!私も先輩の願いが叶いますよう、精一杯お祈りします!」

「えっと、何ならこうしましょう!もし本当に選ばれたら、俺が代わりに『月隠の顔』に、あなたが贈りたいプレゼントを渡してあげる! どう思う?」


 清音も一瞬呆気にとられたが、やがて目からまるで救世主を見たかのような輝きを放った。ただ、その輝きは長くは続かず、すぐに色あせてしまった。


「 でも、私、まともな、まともな贈り物を何も用意してなくて、差し出せません……」

「大丈夫~心がこもっていればそれでいいんだ! 大事なのは『月隠の顔』への想いが伝わることだし、値段なんて二の次だ! それに、彼女はファンを宝物のように大切にしているんだから、ファンからの贈り物が高価かどうかなんて気にしないに決まっている! だからそんなこと考える必要なし、気軽に贈れば十分だ!」

「先輩の、先輩のおっしゃる通りです。では、何か贈れるものは無いものでしょうか、うーん……これ、これでは如何でしょうか?」


 清音はショルダーバッグから、お守りっぽい小さなアクセサリーを取り出し、僕の手に渡した。


 見た目はほぼ新品同様で、針目の一つ一つが細かくて、丹念な仕上がり。


 総じて言えば、プロの職人さんによる作品に比べても劣らないほどの細工の精巧さ。


「これがお守り? 作り込みがすごく丁寧だね~。どこの寺で買ったんだい?」

「このお守りは市販品ではなく、私が自分の手で、自分の手で縫ったものです。実はもともとペアで、一つは自分で持っていて、もう一つは私にとってとても大切な人に贈るつもりで、今日まで取っておいたんです。」

「なるほど~~~『とても大切な人』って、まさか恋人のことじゃないよね?」

「か、必ずしも、必ずしも恋人とは限りません!!!だったら私、先輩に、これを……」


 僕がそう言うと、清音は急にうつむき、床の隙間に顔を埋めてしまいそうになった。


 言いたいことをぐっとこらえているその様子が、かえって僕の好奇心を掻き立てた。


「誰にあげるつもり? 周りがちょっとうるさいから聞こえない……あ~~~まさか、本当に好きな人がいるの?」

「い、いません―――! 先輩、その話はもう、もうやめてください……」

「ごめんごめん~ちょっと調子に乗りすぎちゃって……これからはもう、余計なことは言わないから!」

「怒ったりして、してませんもん……それより、お願い、お願いですから『月隠の顔』にこれを渡して頂けませんか?」

「任せて~~~当選さえすれば、必ずあなたの想いを『月隠の顔』に伝えてあげるから!」

「それじゃあ、先輩に、先輩にお任せいたします!あっ、もうすぐ、もうすぐ抽選が開始します!」

「おぉ~~~!いよいよ始まるぞ~~~!」

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