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僕の仲間は60,000,000,000,000(60兆)人もいる。  作者: キヨ
第三章 60,000,001,000,000『人』に達した動員数のライブ
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第十三話 着席早々、最大のピンチに陥る

 休憩エリアを出ようとしたその時、先ほど道案内をしてくれた女性スタッフが前方で待っているのが見えた。


「安達さん、舞台裏の道は入り組んでいますので、お時間を無駄にしないよう、私が座席エリアまでご案内させていただきます。」


 その女性スタッフが近づいてきて、親しみを込めて僕の許可を求めてきた。


 実のところ、ここまで通ったルートをすでに記憶に刻んでいたので、自分一人で出られると思ってはいたが、この気遣いを断るのも気が引けた。


 それに、一人で舞台裏を歩き回っていると、誰かに声をかけられたり、かえって不必要なトラブルを招く恐れもある。


 結局、その女性スタッフについていき、舞台裏の出口へと向かうことにした。


「わざわざ道案内してくださり、本当にありがとうございます。ここからは一人で大丈夫です。」

「本当によろしいですか? 座席エリアはかなり広いですし、私がご案内した方が無難だと思います。これも北崎さんがあらかじめ手配しておいたことなんです。」

「いいえ、結構です。皆さんお忙しい中、お手間を掛けるわけにはいきませんし。それに、北崎さんにいつもあれこれ手配してもらうのも、ちょっと気の毒で……」


 目の前で、後頭部を撫でながら、間抜けな笑顔をしているこの男を見て、あの女性スタッフは思わず吹き出してしまった。


 おそらく、普段の業務の場では、僕のようなドジで口下手な生き物にはめったに会わないからだろう。


「どうしてもとおっしゃるなら、お言葉に甘えさせていただきます。もしお手伝いが必要でしたら、座席エリアのスタッフに、手の甲にあるVIP席専用の蛍光マークをご提示ください。このマークさえあれば、いつでも様々なサービスをご利用いただけます。」


 えっ?僕の手にはマークがあるって?しかも、そんな使い道もあるなんて? 


 だからチケットチェックの時に、係員が変なスタンプのようなもので、僕の手に全く見えないものを押していたわけだ。


 でも、その使い道については何も教えてくれなかった。どうやら、VIP通路を通る人なら誰もが知っている常識だと決めつけられていたようだ。


 初めてコンサートに来た田舎者の僕は、これがコンサート特有の入場記念儀式だと思い込み、恥ずかしくて聞くに聞けなかった。


「わかりました、教えてくれてありがとうございます! じゃあ、これで失礼します!」と、お礼を言ったけど、スタッフさんに「手に印がついていることに気づいていなかった」という事実がバレてしまうだろうか……



 ――――――――



 スタッフさんと別れた後、急ぎ足で座席エリアへと向かい、途中で熱心な道案内サービスも受けた。


 とはいえ、これは僕の『特権マーク』とは関係ない。輝英館のロビーエリアにいるスタッフは、助けを必要とするファンなら誰に対しても平等に対応してあげるからだ。


 言い換えれば、もしこのスタッフたちがいなければ、たとえ総理大臣並みの権力を持っていたとしても、自分で道を探さなければならないだろう。


 今思えば、両親とは別々に入場して本当によかった。そうでなければ、自ら進んで親を案内する僕の姿が、後々彼らにからかわれるネタになってしまう。


 普通のスタッフに加え、目も常に座席エリアへの道を探すのを手伝ってくれており、筋肉の豊富な部位は僕の体を素早く移動させている。


 総じて言えば、僕の細胞たちは皆休むことなく働いている。


 それは僕の主体的な意識に基づいたものであり、精神空間から直接下した指令ではなかったが、僕たち間のコミュニケーションは途切れることはなかった。


「ご主人様~、前方の看板に『座席エリア入口』と書いてある! あそこですよ! 早く、早く~」

「ねえ、目さん、お前は本当に俺よりも興奮してるな…。」


 僕に最も近い座席エリア入口が目の前にある。開いたままの電子ドアで、その横には入場者を歓迎するスタッフ二人が立っている。


 多分、ほぼ全てのファンがすでに着席しているおかげか、入り口は想像していたほど賑やかではなく、通行に問題はない。


 しかし、100万人の来場者のうち、僕が99万人目以降に入場することになるかもしれないし、開演の10分前くらいになってようやく到着したことを考えると、これは絶対に真のファンらしい振る舞いとは言えないだろう……


「ようこそ!『月の女神』の聖なる光の中で、安らぎと慰めを得られますように!」


 これは会場内に入った際、入り口のそばにいた二人のスタッフが贈ってくれた、中二病全開の歓迎の挨拶だった。


 一体どんな大規模な宗教儀式の現場に来てしまったのだろうか?中に入ったら、みんな同じ方向に向かってひざまずいて拝むことになるのだろうか?


 まあ、この3年間、僕もそんなことしたことあるし、しかも一度や二度じゃないけど……


 しかし、僕を照らす光があまりにもまぶしすぎて、これは「月の女神」の聖なる光などではなく、陣港市全体の夜間照明需要を満たせるほど強力な、会場内の照明設備から放たれているものだと、一瞬で判明した。


 全開で稼働する照明機器のおかげで、広大な会場内がくっきりと見渡せた。


 高さ400メートル近い空にある自動開閉式屋根から、会場の真ん中に位置する巨大なステージ、そしてステージ後方にあり、防波堤としても使えるほど巨大なスクリーンに至るまで、例外なく視界に収まった。


 観客席に至っては無論、満席である。周囲の座席をざっと見渡しただけでも、どこもかしこもコピー&ペーストしたかのような味気ない光景が目に飛び込んでくる――


  苛立ちに満ちた魂たちが、あちこちに座り込んでいる。空席はまるで濾し取られた不純物のように、「月の女神」の信者たちが集まって形成したこの大海原には存在しない。


 人生で初めてライブコンサートを現場で観るという体験は、入場した瞬間からこれほどまでに心を揺さぶるものとなった。


 ならば、本番が始まった後、特に会場全体の雰囲気が最高潮に達する瞬間は、どれほど凄まじいものになるのだろうか?


「60兆の歓声が頭の中で同時に響き渡る」という体験をしたことがあるせいか、こうした場面に馴染みがある。


 桁違いの差はあるものの、僕は「百万は60兆より大きい」という荒唐無稽な見解を固く信じ、今夜の主役が成し遂げた偉業に足を止めて感嘆した。


「さすがだなあ。これが輝英館の内部か……この最高級の会場に、うちの妹の公演を見にくる人々がこれほど大勢いるなんて……これから会場のテンションがクライマックスに盛り上がったら、屋根が吹き飛ぶほどになるんじゃないか?」


 入り口で棒立ちにしながら、うっとりしていたこの兄は、自分の目に現実に引き戻された。


「あの~ご主人様~~~、ちょっと失礼ですが、お席はどこでしたっけ??」

「VIP席の最前列、150番だよ?」

「じゃあ、今私たちはどこにいます? こんなに高い場所って、VIP席っぽくないですよ?」

「ちょっと見てみよう……ここは……」


 振り返ってみると、背後の電子ドアの真上に「上層一般席エリア―――入口E」と書いてあるのが見えた。


「なるほど、今、上層一般席エリアにいるんだ……待って、上層一般席??? なんでここに来ちゃったんだ!?」


 よく考えてみると、さっきは自分に一番近い入口を探すのに夢中で、VIPエリアに一番近い入口を探すのを忘れていた……


 初めてコンサートに来る人はみんな、こういうミスをしちゃうものだろう? そうよね? そうよね?


「安心してくださいご主人様!今から急いで行っても遅くはありませんよ~まずはVIPエリアがどこにあるか探してみましょうか?」

「確かステージの真前だと思う…」

「あそこですか?」


 視界の中で、ステージ前の高級席が設けられた一角が明るく光り出した。


「きっとあそこだ!まずは道を探さなきゃ……くそっ、ここからあそこへ続く道なんて、そう簡単には見つからないぞ!」


 さっき、北崎さんの部下が案内してくれるのを、誰が自信満々に断ったっけ?


「ご主人様、我々脚の能力を使ってみませんか?ここからVIPエリアまで直接跳べば一瞬で着きますよ!」

「ふざけるな!数百メートルの高さから飛び降りて、たとえ死ななかったとしても、百万人の観客の前で『空中アクロバット』ごっこなんて、俺の知名度をもっと上げたいっていうの?」

「ご主人様~我々皮膚の表面にあるアレを、使ってみてはいかがですか?」

「何の『アレ』だ?お前たちは一体どこの皮膚なんだ?」

「私たちはご主人様の右手の手の甲の皮膚ですよ~実は会場に入った瞬間から、表面に何か妙な化学物質が付着しているような気がしていました。免疫細胞たちの検査で、これらの物質が人体に無害であることを確認したので、ご報告はしませんでした。でもさっき舞台裏で、あの女性人間が『ご主人様の手の甲には何かマークのようなものがある』って、お困りの時に役立つかもしれないと思うのですが……」

「そうだ!このVIP席専用のマークが使えるじゃないか!俺としたことが、焦るとすぐ忘れてしまう……教えてくれてありがとう!」



 ――――――――



 僕はすぐに踵を返して電子ドアの外へ駆け出した。今時僕に最も近いスタッフは、ドアの外側で来場者を出迎えている先ほどの二人のスタッフなのだ。


 厳密に言えば彼らは座席エリア内にはいないが、一か八か試してみるしかない。


「すみません! ここからVIPエリアまでの最短ルートを教えていただけませんか?」

「お客様、お席はVIPエリアですか?」

「はい。会場が広すぎて、うっかり道を間違えてしまって……」

「喜んでご案内いたします。お持ちのVIPマークをご提示いただけますか?」

「はい、確か右手にあるはずですが……」


 係員は腕に装着した時計で、僕が差し出した右手をスキャンすると、すぐに営業スマイルを浮かべた。


「安達池様、ご指定の席はVIPエリアの第一列150番席と確認いたしました。ご安心ください、すぐにVIPエリアへご案内いたしますので、こちらの搭乗プラットフォームまでご同行ください。」

「はい! よろしくお願いします!え? 搭乗プラットフォームって? まさか……」


「搭乗プラットフォーム」といった言葉は、通常、駅や空港、あるいは虎視島のような場所でよく耳にするものだ。


 建設から80年以上も経ったこの古い建物の中に、まさかこのようなエリアが設けられているとは。一体何のためのものなのだろうか?


 心の中で疑問を抱きつつも、係員の後を追い、いわゆる「搭乗プラットフォーム」へと向かった―――最上層の観客席の間に設置された、展望台としても使えるほど広々とした空中プラットフォーム。


 その中央には、短距離・低空飛行用の小型乗用飛行機が1機停まっている。


 この機械を見た瞬間、自分がどのような方法でVIP席に到着することになるのか、ピンと来た。


 その派手さという点では、超能力を使ってここから直接飛び降りるのと大差ないほどだ。


「すみませんが、もしかしてこの乗り物でVIPエリアまで飛ぶのでしょうか?」

「はい、安達様。ここから飛べばすぐ着きます。こうした乗り物は、終身名誉会員やVIP席のチケットをお持ちの方専用で、館内の複数の階に配備されており、このような緊急事態に備えているものです。」


 やはり予想通りだった。『陽の国航空安全管理法案』によれば、この手の小型飛行機は軍隊、宇宙開発、消防などの特殊分野に限定されており、民間の交通手段としての使用は禁止されている。


 つまり、市場でこういう乗り物を購入する方法はそもそも存在しない。


 では、コンサートの主催者である北崎さんと彼女の事務所は、どうやってこういう乗り物を手に入れ、合法的に使用しているのだろうか?


 のみならず、スタッフの話を聞く限り、会場内に配置された飛行機は1機だけではないそうだ。


 これを実現するには莫大な資金と労力を要することになる。これほどの手間暇をかけて、ただ「VIP」へのサービスを行うためだけなのか……


 皆さん、もしご兄弟やご姉妹がいらっしゃって、しかも名門の出身でないなら、ぜひ彼らをアイドル業界へ導いてあげてください! 上層階級への登竜門になるかもしれません!


「安達さん、どうぞお乗りください。すぐに出発しますので。」

「はい―――!」


 子供が初めて遊園地に行って、バンパーカーやバイキングといったアトラクションに乗る時、おそらく今の僕と同じように、有頂天になることだろう。


 初めて宇宙船を操縦した時の「夢が叶った」という気持ちとは異なり、今のこの高揚感の半分は「月隠の顔」を間近で見られるという興奮から、もう半分は、空中に舞い上がる僕を、現場に集まった100万人近い人々が、驚きと畏敬の念を込めて見つめていることによるものである。


 率直に言えば、どんなに「存在感ゼロ」の人生に慣れていても、心の底ではやはり注目されることを渇望しているのだ。


 注目される理由は、僕の体内に起きたいわゆる「全く新しい変化」でもなければ、人目を引くような真似や非道なことをしたせいでもない。ただ普通に、自然に人々の注目を集める。それだけの話だ。


「月隠の顔」のおかげで、僕のささやかなわがままも、短い一瞬ではあったが満たされた。



 ――――――――



「安達様、まもなく着陸します。降りる準備をお願いします。」


 飛行機はVIPエリアの横にあるヘリポートのような空き地に穏やかに着陸した。


 数多くの同様の場面を経験してきたせいか、VIPエリアの観客たちは、突然空から降りてきた飛行機に対して大した反応は見せず、彼らの目には、地面に降りて歩く鳩と同じくらいごく普通のことのように映っているようだ。


 そう言えば、両親は僕を見かけているだろうか……


「安達様、VIP席はすぐ前です。席までご案内いたしましょうか?」

「いえ、結構です。ありがとうございます。自分で向かいますから。」


 まるで執事の如き行き届いたサービスだ。お姫様抱っこで席まで運ばれる寸前だ。


 このまま人に世話をされ続けていたら、自活能力を失った廃人になってしまう恐れがある。だから、どうしてもお断りしなければならない。


「承知いたしました。それでは、私はこれで失礼いたします。何かご用がございましたら、座席の呼び出しボタンをお使いください。専任のスタッフが対応いたします。『月の女神』が、あなたの心に癒やしを、魂に御加護を授けてくださいますように。」


 うわっ、この中二病全開のセリフに、まさか別のバージョンまであるなんて……コンサートが終わったら、絶対に文緋に意見を言わなきゃ。


 まずは両親を見つけ、メガネを渡すことが急務だ。開演まであと8分余り、間に合うはずだ。何か予期せぬことが起きなければの話だが。


「えーと……親の席は3列目の72番と73番だっけ。3列目……3列目……ここだ!」


 VIPエリアの外周をぐるりと回りながら探していると、すぐに3列目を見つけた。


 両親の席まで行くには、この列の前の隙間を通らなければならない。


 そこで僕は身を屈め、映画が上映している部屋の中を歩く時と同じ姿勢で慎重に通り抜けた。うっかり誰かお偉方の視界を遮らないようにと気を配りながら。


 でもコンサートはまだ始まっていないのに……きっと、陽の国の国民として身につけた礼儀作法のおかげなんだろう。


 しばらくすると、僕はついに、「密偵」のような格好をした「変人」たちの前にたどり着いた。


 彼らが正座している様子からして、コンサートを見に来たようには見えず、むしろ法廷の傍聴に来ているかのようだった。


「もう~池、遅かったじゃない? 北崎さんと何話してたの? ハハも聞きたい~~~」

「そうよ、開演直前まで話してたって、とんだ長話……まあ、それは後で聞かせてもらうから、とにかく早く席に戻りなさい。さもないと、開演時に文緋に見られたら大変だぞ!」

「北崎さんから、このメガネをあなたたちに渡すように言われました。時間が限られているので、早くかけて!そして俺の言う通りに操作して!」


 両親は僕の手からメガネを受け取り、僕の指示通りに操作してみた。


 彼らからメガネが透視モードに切り替わったことを確認して、やっと胸のつかえが下りた。


 雑念をすべて振り払い、これから奏でられる至高のメロディーを心ゆくまで楽しみ、隠されたその姿が放つ、この世のものとは思えない美しさを堪能できる時がついに訪れてくる。


 しかし、まさか以上が僕の都合のよい思い込みであるなんて思いもよらなかった。ちょうど自分の席へ向かおうとした瞬間、親父に呼び止められた。


「池、一つ聞きたいことがあるんだけど、このメガネは本当に北崎さんからもらったものなのか?」

「ええ、彼女自らが手渡してくれた。家族全員分用意してくれたそうだ。どうしたの、親父?」

「おかしいな。構造上、このメガネの機能は、あらかじめ使用者の虹彩データを登録しておかないと作動しないはずだ。お前のことはさておき、私と十香子の虹彩データは、彼女がどこから手に入れたんだ?」

「うーん、写真か動画から取得したんじゃないかな?」

「そうでしょ!そんなことすら思いつかないなんて、あなた、物理学を専攻しているくせに!あたしたち二人は、それなりに知名度もあるし、公開されている写真や動画なら少し探せばすぐ見つかるでしょ? 北崎さんはあれほど人脈が広いんだから、こんな些細なことは楽勝だよ。そんなに大騒ぎする必要ある? 池、お父さんのことは放っといて、早く自分の席に戻りなよ!」

「わかった、じゃあ行ってきます!」


 母の説明も一理あるけど、親父のあの言葉も無視できない。席に戻る途中、これまで気づかなかったある疑問について、考え続けていた――


 北崎さんというすごい人物が、なぜ私たち家族のためにこれほどまで気を配ってくれるのか?本当に文緋から引き続き利益を搾り取るためだけなのだろうか?



 ――――――――



 実際、人が思考に全神経を集中させると、視覚や聴覚をはじめとする感覚機能が一時的に低下しやすくなる。


 例えば、見えるはずの人や物が見えなくなったり、聞こえるはずの音が聞こえなくなったりするのだ。


 そして、僕こそがこの現象の最も象徴的な例だった。


 自分の席に着き、ほっと一息ついて座ったその瞬間まで、僕の思考は依然として二つに分断されたままだったからだ。


 半分は「北崎さんの真意を分析する」ことで埋め尽くされ、もう半分は「文緋は、今日両親がコンサートを見に来ることを知っているのだろうか」という考えに占められており、周囲からの感覚刺激に対して適切な身体反応を示しようがない。


 だからこそ、僕はすぐには、自分の右隣の席に旧知が座っていることに気づかなかったし、その人が何度も僕の名前を呼んでいる声さえ聞こえなかった。


 微かに震える手が僕のそばに伸びてきた。その指で軽く二回つつかれたことで、ようやく思索にふける僕はその状態から目覚め、思わず右を向いた。


 旧友との再会は本来、驚きと喜びに満ちたものであるはず。今のように驚きばかりで喜びがなく、しかも戦々恐々としているような状況じゃあるまい……


「先輩、ま、まさか、本当に、本当に、先輩ですか~~~~~?」

「清、清音????? なんで君が隣に座ってるの!!!!!」


 これは、このコンサートの開演前に、神様が僕に課した最後の試練であり、最も難易度の高いものだ。


 少しでも油断すれば、僕と文緋の人生は粉々に打ち砕かれてしまうかもしれない。


 ライブ開演まで、あと5分。

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