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第四話 初の定例身体検査 権力者たちに囲まれた円卓(2)

「上座の4名の来賓は、左から順に、北ロシット王国同盟の王族であるアリゲル公爵殿下、黄金の瓦7カ国連合の共同リーダーの1人であるファリティ王子殿下、 そして世界の富豪ランキングトップ5に名を連ねるお二方のうち、お一方は核融合技術を開発したエネルギー分野のリーディングカンパニー『NewClear Energy Frontierニュークリア・エナジー・フロンティア』の創設者、ウィル・グレイツ閣下、もうお一方は、世界のマスメディア業界で最も知名度の高いメディア企業『Monopolitanモノポリティアン』の創業者のご子息であり、業界の最有力者であるアカパティ・モノ閣下です。」


 下田が最終ボスたちの名を告げたのを聞いた瞬間、耳元で「ブーン」と鈍い音が響き、あまりにも膨大な情報量が、荒れ狂う波のように両耳の耳道から侵入し、頭蓋骨の障壁を強引に突き破った後、脳内のあらゆる余計な雑念を覆い尽くした。

 その刺激は、麻薬を服用した際に生じる感覚刺激よりも激しく、やがて全身に、感電のような痺れ、蟻が皮膚に這うようなチクチク感、筋肉の痙攣といった身体的症状を引き起こした。

 率直に言えば、足がガクガクして体勢が崩れる寸前の僕は、危うく自発的に土下座の姿勢をとるところだった。

 改めて、隔離病室でゲームをしていた時のひどい体験を思い出した。ステージボスと最終ボスのステータス差が、ゲームのバランスを崩すほど大きかった。一体どこの馬鹿がこんなRPGゲームを作ったんだ?


「四名様のご来賓のご臨席は、小官および虎視島の全員にとりまして光栄の極みでございます。」


 そう言うなり、下田は敬意の度合いが最も高く、90度に近いくらい深くお辞儀をした。どんなに機転が利かず、人情や世間の常識に疎い僕であっても、今回は下田に言われるまでもなく、自動的に90度を超える深々としたお辞儀を共にした。

 このような場面では、先ほどの二組の相手を取り扱った時と同様に、何らかの敬意を表す言葉をかけなければならないはずだ。ところが、発声を司る神経はまださっきの過度の刺激に浸ったままで、脳は完全に脳卒中患者のような失語状態に陥っている。「口は災いの元」というよりは、この「沈黙は金」の状態をそのまま維持したほうがよいだろう。

 この時の視界には床と自分のつま先しか映っていないはずなのに、前方四つの方向から襲いかかる鋭い視線が、何か尋常ならざる方法で僕の網膜に焼き付いている。前の実業家や公務員たちからは、人類に貢献し、福祉を図るという誠意がほんのわずかでも読み取れたのに対し、人間社会のピラミッドの頂点から一切衆生を見下ろすこの数々の瞳からは、以下のものしか見出せなかった――

 過剰な好奇心、ほぼ無限の欲望、そしてこの惑星で必然的な存在だとされる何かの法則を塗り替えようと企む野心。これら三つは、どれも底知れぬ深淵だ。


「二人とも、顔を上げてよい。」


 四人のうちの誰が、私たちが尽くすべき礼儀を省いてくれたのかは分からなかった。僕は下田と一緒にゆっくりと姿勢を正し、前方に広がる深淵と真正面から向き合った。言葉のやり取りも、身振り手振りもなく、ただ無表情に立ち尽くすだけだ。まるでグラビア撮影中のセクシーなモデルがポーズを決めて、自分に向けられた数多くのカメラのレンズに対して微動だにせず構えているように。


「公爵陛下、王子殿下、御二方の閣下、どうか安達君の失態を寛大にお許しください! 彼はまだ未熟で、礼儀作法にはまだ至らぬ点が多々ございます。決して意図的に粗相をするつもりはございませんでした……」

 

 先生も、僕のこの見苦しい姿には耐えられなかったのだろう。だから、あのように慌ただしく僕を助けようとしたのだ。


「形式ばった儀礼は不要だ。下がれ、教授。」


 凍り付いた顔をしたアリゲル公爵が下したこの簡潔な命令は、たとえ即時通訳装置によって変換された機械的な声であっても、背筋が凍るほどの圧倒的な貫禄を放っていた。


「承知いたしました……」

「皆様、聞きたいことが山ほどあるでしょう。それでは、安達君、前に出てきてくれたまえ。」


 先生が引き下がったところで、もう一人の王侯貴族――ファリティ王子が、その尊い口を開き、僕を前に呼び寄せた。一瞬、反応できなかった僕は、下田に後ろから軽く背中を押され、やっとのことでおずおずと一歩前に踏み出した。それは、目の前の深淵にまた一歩近づいたことを意味していた。

 よく見ると、さすがは気品あふれる王子殿下。見てくれと出で立ちから王族のオーラが漂ってくる。それだけでなく、声も柔らかく清らかで、隣にいるアリゲル公爵とは完全に正反対の存在だ。もし王子が歌手としてデビューするとしたら、「月隠の顔」にも劣らない人気を博することができるだろう。


 その時、ある哲学的な問いが僕の前に投げかけられた。


「それでは、余が問うことにしよう……安達池……汝は己の存在価値を心得ているか?」

「えっ? 僕の……存在価値?」


 この疑問を突きつけたのは、かつて何度も世界の富豪ランキングの首位に立った偉人、ウィル・グレイツだった。とっくに古希を過ぎているが、人類文明を飛躍的に前進させたその功績は、時の流れとともに色あせることはない。

 僕の理解では、偉人からの問いかけである以上、偉大な覚悟を持って答えるべきだ。つまり、綺麗事で済ませるということだ。


「あの……閣下、わたくし安達池は、もともと凡人であり、ただ個人の理想を果たすために宇宙飛行士という職業を選んだに過ぎません。しかし今、自分の潜在能力が生物医学の発展に寄与し、全人類に幸せを届けることができると知り、大変光栄に存じます。及ばずながら、お役に立てるよう尽力させていただきます!」


 100点満点で言えば、自分の答えに90点をつけたいところだ。それくらいなら大げさじゃあるまい。


「ふむ……どうやら汝はまだその奥義を見極めぬようだな。」


 えっ――?この大義名分のこもった演説で、グレイツ閣下を感動させられなかったのか?先ほど、どいつもこいつも僕をああいう風に煽てていたじゃないか?僕はただ、お前らの褒め言葉を参考にして答えただけなのに……

 

「余が目にせしもの、それは汝の語りしものよりも広義の存在なり。やがて、汝は己の価値なるものとは何たるかを、自らの目に焼き付けるべし。」


 リチャード先生、文緋、母さんに続き、このグレイツ閣下はここ1ヶ月半の間、僕の人生に現れた4人目のなぞなぞの達人だ。「全く新しい変化」、「どこか変な感じ」、「よそ者を見るような眼差し」、そしてこの「自身の価値」と呼ばれるもの――これらの謎は、まるで太陽の周りを公転する地球型惑星と数多くの惑星のごとく、一つの中心点をしっかりと取り囲んでいる。

 しかし、僕は、この惑星に生命を与えた、光り輝く太陽と自分を同列に置くことなど、一度も考えたことがない。


「閣下のご教示を拝聴いたしました……」

「確かにこの人には比類なき能力が備わっているようだが、百聞は一見に如かず。わしは自分の目で確認した物事にしか信頼を置かない。」と、通訳装置から再び冷ややかで機械的な声が流れた。

「どうやらアリゲル陛下は、この安達君の特異性について未だに疑問をお持ちのようですね。それでは、虎視島側より本日の議題を正式に始めてもらおう。会議の時間は限られている。我々の来た甲斐があるように願う。」

「承知いたしました、王子殿下。この盛会に際しまして、小官は陽の国政府および虎視島の全職員を代表し、本日ご臨席の各国の貴賓の皆様に、心よりの挨拶と感謝の意を申し上げます!今回の会議により、望ましい成果が挙げられますよう願っております!」


 下田氏の祝辞が終了すると、今回の権力者サミットのメインイベントである――つまり僕という「異常な人間」が初の定期検査を受ける様子を見物するという娯楽イベントが、正式に幕を開けた。


「安達君とリチャード教授は、どうぞ検診エリアへお進みください。検査チームの皆はすでに準備を整えております。今回の検査の監視映像と諸検査結果は、ご来賓の皆様の目の前の小型スクリーンにリアルタイムで表示されます。」

「承知いたしました。では私と安達君が、しばらく失礼させていただきます。安達君、こちらへ。」


 僕は先生と共に皆に一礼すると、健康診断エリアへと向かった。後ろの円卓はどんどん遠ざかっていくが、あの十三人の気配は影のように僕にまとわりつき、たとえ虎視島を離れ、京空市を離れ、さらに地球型惑星を離れたとしても、その「影」から逃れることはできそうにない。これが、いわゆる「呪い」というものなのだろう。


「安達君、あの賓客たちのことなんて、あまり気にしなくていいよ。身分や地位はともかく、彼らはあくまでこの合同チームの視察代表に過ぎない。気にする必要はない。」


 先生は、僕の本音を率直に言い当ててくれた。


「ありがとうございます、先生……でも、やはり信じられません。あれほど名だたる人物たちが、ただの一般市民である僕にこれほど大きな関心を示して、しかもわざわざ足を運んで、会いに来てくれるなんて、僕には身分不相応じゃないですか……」

「それは不思議なことではない。何しろ安達君の経験はまさに生命の奇跡と言えるものだから、誰だってそれを知れば興味をそそられるだろう。彼らみたいな権力者さえも例外ではない。」

「それもそうですね……」

「彼らがわざわざ来訪したもう一つの目的は、国際的な協力の機会を求めに来たこと。現時点では、各代表者とも協力の意向を示しており、安達君の検査結果次第では、今後、複数の分野で大規模なコラボレーションを展開する機会が生まれるかもしれない。」

 

 何も知らされていない安達池は、この13人の貴賓が自ら虎視島を訪れることになった真の理由を知らず、教授がこの話題を意図的に避けていることなどに気づくはずもなかった。


「そうなんですか……まあ、上層階級のやり方には合ってますね。利益第一主義ですから~~~でも、先生、もし事前に少し教えてくださってたら、僕も心構えができて、返答の際にミスを犯さずに済んだかもしれませんが……」


「ハハハ~すまん、すまん。私の配慮不足で、君の立場を全く考えていなかった。許してくれ。」

「いえいえ、先生、誤解です! 決して先生を責めているわけではありません!」


 先生こそが、僕の気持ちを気遣いすぎて、代表たちとの面会について隠してくれたのだと、よく分かった。今となっては、むしろ先生に感謝すべきだ。


「ならよかった……あそこが健康診断のエリアです。行こう、安達君。」

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