表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/10

第三章 隔離病室での一人暮らし、初日

教授の最後の言葉を聞いて、池は少し戸惑い、呆然と自分の体を見つめた。手のひらを胸に当てたり、お腹に当てたりしながら、頭の中では「全く新しい変化」という言葉が繰り返し響いていた。触れているのは明らかに血管の正常な鼓動なのに、なぜかそれが自分の体内で生まれたある種の「全く新しい変化」が脈打っているように感じられた。この皮膚と筋肉の向こう側、体内の奥深くで、一体何が育まれているのだろうか?


「俺の体の中で、本当に何か恐ろしい変化が起きているの? バイタルサインも全部正常に見えるのに......一体どうなっちまうんだろう……全身がドロドロになるのか? それとも、たくさんの腫瘍ができるのか? ホラー映画に登場のゾンビみたいな生ける屍になっちまうのもわるくねいな……」


この瞬間、池の尽きることのない想像力が存分に発揮されたが、その方向性は少々不気味なものだった。頭の中で繰り広げられる、まるで魔物たちが乱舞するような妄想劇が十数分続いた後、病室のドアが再び開いた。今回ようやく専門チーム医師たちが到着したが、池はもはや彼らを救世主とは見なしていなかった。


「安達さん、治療計画を策定しましたので、早速治療を開始いたします。」

「そうか、それは良かったです。」


池は、この治療が単なる形式的なものに過ぎないことをよく知っていた。彼は感情のないロボットのように、ぎごちない口調で相槌を打った。


「では、具体的にどう治療するつもりですか? 腹を裂くような大手術はごめんですが……」

「ご心配なさらず、そこまでする必要はありません。リチャード教授が面会に訪れた際、すでに状況を説明してくれたはずです。率直に申し上げますと、安達さんの場合は特殊なケースですが、我々は全力を尽くします。まず、人工的に加工されたウイルスカプセルをベクターとして用いた、放射性物質を中和する特殊なタンパク質を通じて、体内に残留する放射性物質を除去して、体内の被ばくによるさらなる損傷を防ぐようにします。その後、高強度の対症療法と栄養補給を行います。」


対症療法――この言葉は耳障りに聞こえ、ホスピスケアと同義であるように思える。


「対症療法……つまり、体内の放射性物質を除去した後は、その都度状況を見ながら対応していくしかないということですね?」

「現れる可能性のある症状は可能な限り軽減するように努めますが、保証はできません。その点、ご理解いただければ幸いです。」


あれこれ検討した挙句、出てきた案は「その場しのぎ」に過ぎない。これでは専門家と呼べるのか……幸い、教授がすでに池に心の準備をさせておいたおかげで、もし医師が到着した後に希望が打ち砕かれたら、池は本当に理性を失った行動に出ていたかもしれない。


「ダメ元でやってみるしかない。ただ座ってて死を待つよりはましだ。」


池は深くため息をつき、さらに長く深呼吸をした。


「治療を受ける準備はできています。いつでも始めていいです。」

「ご協力ありがとうございます。それでは注射を開始します。」


数人の医師が無色の液体を詰めた注射器を手に持ち、池の体にある主要な静脈が通る複数の箇所に同時に針を刺した。その手つきは穏やかだったが、多少の痛みは避けられなかった。一人の医師が率先して池に話しかけ、気をそらすことで痛みを和らげようとした。


「安達さん、あなたは当時、容易く世界トップクラスの大学に合格されましたが、勉強のコツというのはあるのでしょうか?うちの子供も今年大学受験を控えているので、もしよろしければ教えていただけませんか?」

「長くなる話ですが、ここを出た後に、直接お子さまに経験を教えてあげてもいいですよ。」

「そ、そうですか……ありがとうございます。本当に助かります。」


池の周囲が気まずい雰囲気に包まれ、誰も池に話しかけなくなった。どんなに痛くても、大人しく我慢するしかなかった。


しばらくして、注射が終わった。注射した箇所が少し痺れる以外は、池の全身に不快感はなかった。


「安達さん、治療は終了しました。明日、体内の放射線濃度の検査を行いますので、それまではここでゆっくりお休みください。すぐ専任の看護師がケアしに参ります。退屈に感じられた場合は、病室に娯楽用の道具をご用意しておりますので、どうぞご自由にご利用ください。最後に、常にご体調を管理させていただけますように、病室から絶対に離れないでください。」


もういい加減、その最後のセリフは聞き飽きたよ。ところで、娯楽用の道具って何?ここに?


池は周囲を見回すと、テレビの下に、高級感あふれる銀色の小型機器が接続されているのに気づいた。そこには「PlaySpaceBoxゲーム機――プラチナ・コレクターズ・エディション」と書かれていた。病室にこんなものがあるなんて? 実に行き届いたサービスだな……もしここに入院したのがゲームオタクだったら、一年や二年閉じ込められても文句は言わないだろうな?


池にとっては、少しでも気を紛らわせれば、少なくとも人生の最期を遂げるまで、自分自身のありとあらゆる凄惨な死に様ばかり考えて過ごしていくことにならずに済むだろう。さらに、病室を見回した結果、池はあることを確認した。この病室には監視カメラのようなものは一切設置されていないということだ。言い換えると、自分だけのプライベートな空間が確保されたわけだ。鼻水を垂らして泣きじゃくる醜態が、怪しげな隅から誰かに覗き見されるはずがない。


「外に出られないなら、物置に置いてある私の携帯電話を持ってきてくれませんか?」

「もちろんです。ただし、この施設内で通信機能は完全に遮断されており、外部とは一切連絡が取れませんので、あらかじめご了承ください。」


やはりそうだったか……たとえ家族にこの悲報を伝えようとしても、上司の態度次第だ。どうやらリチャード教授に頼るしかないようだ。


「それでも構いません。どうかそれを持ってきていただけませんか。中には思い出の品がたくさん入っていて、もう少し見たいのです。そうしないと、もう機会がないかもしれませんから……お願いします! 本当によろしくお願いします!」

「はい、少々お待ちください。それでは、これで失礼いたします。何かご用がありましたら、ベルを押して当直の看護師をお呼びください。」


医師たちが去り、再びベッドに座る池の孤独な姿だけが残された。病床を照らす明かりが、彼の後ろの壁に影を落としていたが、その影からは、一粒一粒とこぼれ落ちる涙は映し出されなかった。


どうして私はこんなに泣き虫になってしまったのだろう?この2年間の過酷な訓練や、宇宙飛行士としての最初の1年間にも、死の淵を立った瞬間は何十回も確かにあった。それでも一滴の涙も流したことはない。あの気強い自分が、たった半日の間に何度も泣いてしまった。単に死が怖いだけなのだろうか?それだけではないはずだ。家族との別れ、そして実験対象として無情にも見捨てられたという事実。そうした重荷が、池の堅固だった心の防壁を徐々に崩していった。


午後6時、看護師が池さんの携帯電話、食事、着替えをまとめて持ってきた。


栄養価が非常に高く、美味しさが普段の食堂の食事を遥かに超越した夕食をがっつりと平らげた後、池が真っ先にやったことは、スマホのロックを解除することだった。ざっと確認してみると、電波や通信が遮断されているだけでなく、カメラや録音機能までもが完全にロックされ、使用不能になっていた。この点に関しては、下田のやつは実に細心の注意を払っている。これらを除けば、他の機能は正常に使えるが、この状態では、このスマホはただのレンガと大差ない。幸いにも、中には池が大切にしているものが入っており、広大な宇宙にいる池にとっては、それが心の支えとなっていた。


携帯電話のアルバムには、池と家族の様々な写真が大切に保存されている。宇宙飛行士という特殊な仕事のため、池が両親と顔を合わせる機会はますます少なくなっている。過去3年間、宇宙飛行士としての入職前訓練を受けたり、そして入職後に国際宇宙ステーションへの勤務が回ってくると、数ヶ月連続で今の家に帰れず、その家に住んでいる妹にさえ会えないことも珍しくなかった。宇宙でのビデオ通信は維持費が非常に高いため、各宇宙飛行士には利用制限があり、思うさま使うことはできない。そのため、暗がりばかりの宇宙で家族を想うたび、携帯電話の中の写真が池にとって唯一の慰めとなっている。


そこには、幼い頃の家族写真や、妹とあちこち遊び回った写真、さらに成長過程における重要な瞬間が記録されていた。例えば中学での飛び級、大学合格のお祝い、博士課程の卒業式で両親と教授と一緒に撮った記念写真、宇宙機関での訓練開始前の送別会、そして宇宙へ旅立つ直前の記念式典……。池は黙ってスマホのアルバムをめくりながら、人生の様々な思い出が次々と胸に込み上げてくるのを感じていた。


「親父は昔、すごく威圧的な感じだったな。教授みたいに眼鏡をかけていたけど、全然科学者っぽくなくて、がっしりした体格で、まるでヤクザみたいだった……。だから、怒るたびにすごく怖かったんだ。本当は心優しいのに、一家の大黒柱としての面子を保つためにいつも強がってて、本当に手のかかる父さんだった。おふくろもそう。見た目は優しそうだけど、怒り出したら、親父とはどっこいどっこいだったな......勉強を少しでもサボると、複数言語で次々と説教されたもの……今思えば、私の子供時代は結構大変だったものだ。父も母も私への期待が本当に高かったけど、彼らを失望させなくて良かった。」


池は毎日一緒に遊んでいた妹を見つめ、口元が少し綻びた。幼い頃の妹は、きらきらと輝く大きな瞳をしていて、長い睫毛がまばたきをするたびに上下にバタバタと動き、あたかもスーパー台風を巻き起こすかのようだった。ふっくらした頬には、いつもほんのりと赤みが差しており、思わず軽くつねてみたくなるほどだった。ふさふさした長い髪がケアされなくても、その滑らかさが変わってない。しかし、なぜか兄妹二人とも生まれつきの茶色の髪をしていた。妹の方が少し濃い色。その一方、両親は二人とも普通の黒髪だった。おそらく遺伝子の突然変異のおかげかもしれない。そうでなければ、どうしてこの兄妹の一人は頭脳明晰、もう一人は容姿端麗なのだろうか。


「アイツ、あの頃は毎日私にべったりだったね。勉強の時間になって一緒に遊べなくなると、いつも目が赤くなって泣きそうに、俺の服の裾を引っ張ってくるの。何度か、両親に助けを借りて引き離してもらわないと逃げられなかったこともあったな…… 小学校の頃、一緒に登下校する時、いつも俺の手をすっごく強く握りしめてて、家に帰ると手がアイツのバカ力で真っ赤になってた……聞いた時の答えは、こうだったっけ――」

「お兄ちゃん、迷子になっちゃうんじゃないかって心配だったのよ、バカ!」


池はあの時、妹が兄に答える際のうんざりした顔を思い出した。妹は視線をそらしていたが、兄の手を握る力は微動だにしなかった。二人の手が接着剤でくっついているかのように見えると言っても過言ではない。


「手を握りしめるくらいなら、お前が俺を家まで案内すべきじゃないか……本当に正直じゃない子だな。それに、小さい頃からやんちゃで言うことを聞かないし、勉強も嫌いだった。でも、あの頃からもう大美人だったのよ~~~。放課後になるたびに、ず――っとスケベのクラスメイトの連中に羨ましい視線で見られてた。なんだか結構誇らしい気持ちだったな~」と、池は妹の写真を見ながらつぶやいていた。


見ているうちに、池は写真の中に何か異変があることに気づいたようだった。


「そういえば、高校卒業後の写真で、妹と一緒に写っている回数がだんだん減ってきたような気がするんだけど......よく考えると、大学合格や卒業式、その後宇宙飛行士になった時の各種お祝いなど、そういった大事な場面には、アイツ、一度も来てくれなかったじゃない?」


きっと何か理由があるんだろうね。よくもこんなに長い間気づかなかったものだ。やっぱり頭の良い人はこういうことには鈍感なんだな。


「たぶん、両親によることなんだろう……あのことが起こる前から、彼らの間には溝ができてたんだろう……でも、アイツは相変わらず俺にべったりで、今でも俺の家に居座ってるし……」


そう思うと、池は家で妹に支配されていた時の恐怖を再び思い出した。アイツはまだ引っ越していないはずだ。もっと早く遺言書を作って家を彼女に譲っておけばいいのに。どうせ遅かれ早かれ奪われてしまうのだから……。


池はそうしてスマホのアルバムを何度も何度も見返していた。その間、トイレや洗面のためにベッドを離れる以外は、深夜までずっとアルバムの画面をスクロールし続けていた。残念ながら、睡魔に抗えたつもりだった池は、瞼がますます重くなっていき、ようやくスマホを置き、目を閉じて眠りについた。


隔離観察の初日、終了。身体は、客観的な生命兆候も主観的な体調も、すべて正常だ。もし翌朝目が覚めた時に、これがすべて夢だったと分かれば、どんなによいことか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ