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第十八話 待ちに待った帰省 (3)

 食卓の片付けを済ませると、僕は父と一緒にリビングのソファに座り、紅茶を飲みながら雑談をした。


「そういえば親父、リチャード先生が、代わりにお父さんによろしくって。」

「聞き忘れてたんだけど、教授はこの間どこに行ってたんだ?君と連絡が取れなくなっていたこの1ヶ月間、教授もまるでこの世から消えたみたいに、どうしても連絡がつかなかったんだ。万象国宇宙局の方でも、彼が陽の国に来たことしか分からなくて、その後は音沙汰なしなんだ。一体何があったんだ?」

「あの……それには理由があって……」

「ひょっとして、教授もこの間、虎視島にいたってことか?」

「そうそう、今回私たちが受けた特訓は先生が担当していたんだ。だから先生も私たちと同じように、外界との一切の連絡を絶たなければならなかったんだ。そういうことなんだ。何ともない……」

「特訓はもう終わったなら、教授に直接電話して挨拶しよう。わざわざ遠くから来て君たちの指導をしてくれたから、この間も大変だっただろう。」

 

 喉に流し込んだばかりの紅茶で、危うくむせて死にそうになった。


 やばい!先生と事前に口裏を合わせるのを忘れていた!父にこう聞かれて、もし先生の言うことと僕が適当にでっち上げた話に食い違いがあったら、大変なことになる!


「親父、ちょっと待って!!!!!!!!」

「ん?どうした、池?電話一本するだけじゃないか、なんでそんなにビクビクしてるんだ?」

「あの……先生は今日すごく忙しくて、午後も会議があるそうだ……いや、今も会議中かもしれない。いきなり電話したら、彼らの邪魔になっちゃう……」

「何をばかげたことを言ってるんだ。今日は土曜日じゃないか?教授は週末に残業なんてしないだろ?」

「あ……そ、そうだった、今日が土曜日だったんだ。間違えた、アハハ……」

「何を考えてるんだ。週末ならちょうど時間があるし、ゆっくり話せるじゃないか。」

「はい、はい、じゃあ、お二人はごゆっくり……」

 

 普段は虎視島での山積みの仕事量にうんざりしていたのに、今こそ週末に虎視島が全員に強制残業を命じてくれればいいな~~と願わずにはいられない……僕は居ても立っても居られず、どう対処するかと頭を悩ませている。でも、これ以上父の電話を妨げるわけにはいかない。そうすれば父の疑いをさらに深めるだけだから、一石二鳥の方法を見つけなければならない!


「えーと、教授の電話番号はどこだったっけ……」


 父はまだスマホの連絡先を探している。まだ少し時間がある。もう覚悟を固めた。時間との勝負だ!


 僕はスマホを取り出し、友達にメッセージを送っているふりをしながら、一刻を争うようにメッセージの連絡先を開き、リチャード先生を探し出し、人間の限界に近い指の動きで送信欄に文字を打ち込んだ――父が先生に電話をかける前に、先んじて先生にメッセージを送って知らせておかなければ!


「先生、こんにちは!今日はいかがお過ごしですか?虎視島ではすべて順調ですか?」


 余計な挨拶なんて意味あるの……本題に入れ!


「急な連絡で申し訳ありません。父がまもなく先生にお電話します。どうかご協力を。過去1ヶ月間、先生が虎視島で特訓を行ってくれていたとお伝えください。時間が迫ってますので、詳細については後日説明させていただきます!」


 10秒足らずこのメッセージを書き終え、送信ボタンを押した。父が先生の電話番号を見つける前に、なんとか一足先に知らせを届けることができた。幸いなことに、親父は昔から先生の番号を覚えられない。この偉大な物理学者にとって、それは新しい物理法則を発見することよりも難しいかも。


 とにかく、やるべきことはすべてやった。あとは天に任せて祈るほかない。親父からの電話を受ける前に、先生が僕の送ったメッセージを読んでくれるって。


 しばらくして、父が先生に電話をかけた。向こう側に座っている僕は一瞬で緊張し、心臓が喉元から飛び出しそうなくらい激しく鼓動した。


「もしもし、リチャード教授?安達政だ!久しぶりだな、最近一ヶ月ほど全然会えないけど~どこで大プロジェクトに忙殺されてるんだ?」


 親父は本当に単刀直入だな……緊張しすぎた僕は彫像のようにソファに固まり、不安と恐怖で先生の返事を待っていた。


「へえ? そうなのか? お前も最近ずっと虎視島にいるのか? 偶然だな、池から聞いたんだけど、愚息もここ1ヶ月ぐらい虎視島にずっといて、どこにも行かなかったらしいぞ! せっかく二人とも島にいたんだから、先生と教え子で一緒に食事でもしなかったのか?」


 親父の言っていること、分かってきた。実は鎌を掛けているんじゃない?これって大人の会話術ってこと?親父は物理学者という肩書きをカモフラージュにして、実は陽の国国家情報局のスパイ出身なんじゃないかな?


 どうか先生が親父の罠にはまって口を滑らせたりしないように……豆粒ほど大きい冷や汗が額からポタポタと落ちていく。


「虎視島で1ヶ月間の特訓を担当してくれたのか?道理で連絡がつかなかったわけだ。この碌でもない息子の面倒を見てくれて、どうもどうも~いつか時間がある時に、お礼に食事をご馳走させてくれ~」


 やった!先生が私のメッセージを読んでくれた!口裏合わせ作戦大成功!胸をなでおろした僕はソファの背もたれにぐったりと寄りかかり、深く息を吐いた。


「ああ、うちの小僧は、この1ヶ月は虎視島で訓練を受けているってしか言わなかったから、お前のことは全く教えてくれなかったんだ。師弟二人が同時に行方不明になっちゃって、どうしたんだろうって心配してたんだ。今日、池が帰ってきたから、先生にも連絡が取れるだろうと思って、電話して挨拶しようと思ったんだ。お前の声は相変わらず元気だから、安心したよ。」


 嘘つかないで頂戴、親父……先生も虎視島にいるって、ちゃんと伝えたはずなのに。親父がそう言ったのは、先生に不審に思われないようにするためだって分かってる。でも、この電話を通じて、親父の知られざる一面――巧みな会話術と、分かっていながら知らないふりをする能力を、今日は拝見した。


 その後の電話の内容は、この二人の中年男性同士の雑談ばかりで、実に20分ほども続いた。


「……安心しろ、俺はちゃんと医者の言うことを守ってるんだ。それよりお前こそ、俺と同じく仕事中毒だし、もう年も取ってるんだから、自分の体を大事にしたほうがいいぞ。俺がまさに反面教師じゃないか?さて、そろそろ薬を飲む時間だ。今日はこの辺で。時間ができたら、ぜひうちへ遊びに来てくれ!」


 親父は電話を切ってこちらを見たが、僕はまだソファに達磨のように横たわったまま、気力を回復できていなかった。


「どうしてそんな姿勢で座ってるんだ? しっかり座りなさい。」

「あ……ごめんごめん、昼ご飯を食べすぎたせいか、ちょっと眠くなってしまって……」

「それにしても、教授はこのところ本当に大変だったな。今度リチャード教授に会う時は、私からの感謝を伝えてくれ。君が今日のような成果を挙げられたのは、恩師のおかげだ。このことはいつだって忘れてはならない。分かったかい?」


 確かにその通りだ。今回の予期せぬ事態で、先生の大いなる助けがなかったら、今頃僕はまだ隔離病室に閉じ込められていたはずだ。


「安心して親父。先生の教えの恩を肝に銘じて一生忘れないから!」


「政、お薬の時間よ。飲んだら休んでね。」母がコップと薬を持って近づいてきた。

「ご苦労、十香子。」


 父は反射的に薬を飲み込んだ。


「じゃあ、私は先に二階で休むから、君は母さんとゆっくり話しててくれ。君のことを想って、髪はかなり白くなってしまったんだから。」

「このおっさん、薬を飲む時は静かに飲めばいいのに、余計なことばかり言うなんて。むせたらどうするの?」

「ゲホッ――!ゲホッ――!」と、急に父は激しく咳き込み出した。

「親父、本当にむせてしまった!大丈夫?」

「ほら、あたしの言う通りでしょ?本当に世話の焼ける病人だ……」


 母は心配そうに父の背中を軽く叩くと、父の咳もようやく少し落ち着いた。


「お前の予測……ちょっと……当たりすぎじゃないか……まあいい、薬を飲む時は確かに喋るべきじゃない。池、お父さんの真似はするなよ。」

「親父、そんなに必死になって人生の経験を教えてくれなくてもいいのに……」


 母は父を支えて二階へ上がっていった。しばらくリビングに一人残された僕は、突然スマホにメッセージが届いた通知音を聞いた。開いてみると思えば、先生からの返信だったが、その内容は予想外のものだった。


「本当にすまない、安達君。お父様との電話が終わってから君のメッセージに気づいたんだ。さっきは臨機応変に対応するしかなかった。どうだった? 政は私の話を怪しんだりしなかったかな?」


 えっ? 先生は電話に出る前に私のメッセージを読んでいなかったの??? でも先生の答えは、僕が言ったことと完全に一致している……世の中に、こんな偶然があるものなのかな?これって、もしかして異次元にいる正体不明の誰かがパソコンで書いた脚本なんじゃないの!? 僕は、この世のどこかに本当に神様が存在するかもしれないと信じ始めてしまった。


「先生、ご安心ください……父は全然疑っていません。私の不注意で事前に先生と相談できていませんでしたが、さっき先生の言われたことと私の言ったことが、なんと全く食い違っていなくて、私自身も驚いています。」


「さすが先生、アドリブでこれほど説得力のある言い訳を思いつくなんて!」といった感嘆の言葉を書き添えようかとも思ったが、どうも聞こえが良くない気がして、やめておくことにした。


「実のところ、さっきの対応は臨機応変というより、その『特訓中』という言い訳は私が考えたものではなく、事前に誰かに指示されていたんだ。もし聞かれたら、その通りに答えるようにと。」

「えっ?誰かに指示されていたんですか?その方とはもしかして……」

「そう、その『もしかして』だ。下田以外に、こんなスパイのような真似をする人間はいない。彼が先日、部下に伝言しに来てもらって、『池君のキャリアに被害が及ぶ恐れがある』と脅かされたんだ。手の施しようもない事態で、それに君の両親の気持ちも配慮しなくてはならないから、下田の言いなりにするしかなかった。どうか先生を責めないでほしい。」

 

 やっぱりあの下田の野郎の仕業か……確かにこの世に神などは存在しないが、人間の皮を被った悪魔は間違いなく存在する。


「先生を責めるなんて、とんでもないです……こんなこと、両親にも言えないんですから。実のところ、できれば一生隠し通したいと思っています。先生なら、私の気持ちも分かってくれるでしょう。」

「もちろん、それが最善の選択肢かもね。ただ、池君には辛いだろう。君はもっと良い人生を送るべきだったし、こんな重荷を背負うべきじゃなかった。今でも、そのことは本当に残念に思っている。」

「先生、そんなこと言わないでください。私がこの世に生きている限り、すべては以前と同じ、何も変わっていませんから。」


 そう、何も変わっていない。僕は相変わらず、誰にも注目されない平凡な宇宙飛行士だ。


 二階の主寝室では、十香子がベッドの端に座り、ベッドに入った安達政と何かを話していた。


「ここで私の看病をしなくていいよ、大丈夫だから。池と話をしに行けばいい。」

「実はね、政、やっぱり池のどこかがおかしい気がするんだ。彼を見るたびに、なんだかもやもやする。池もあたしがいつも彼をじっと見ていることに気づいているはず、何度かあえてあたしの目から視線をそらしたし……だから今は、どうやって池と二人きりで接すればいいか分からなくなっちゃった。」

  「実はさっき、リチャード教授に電話をする前に、池の反応がちょっと怪しいなと思ったんだ。でも教授に確認したら、池の言っていたことに特に問題はないようだったから、彼を信じることにした。それに、親である私たちでさえ自分の子供を信じないなんてことになったら、この世で誰が彼を信じるというの?仮に、池が以前とはどこか違っていたとしても、彼が私たちの子供であるという事実は決して変わらない。彼が宇宙人になったとしても、彼は私たちにとって最も大切な安達池なんだ。そう思わない、十香子~?」

「宇宙人だなんて、こんな真面目な話題なのに、口調が全然真面目じゃないわ…… 確かに池を疑うべきじゃなかったけど、まさか先生であるあたしが、あんたみたいなジジイに説教される日が来るとはね~珍しいわ!」

「そりゃあね、せっかくあんたに説教できるチャンスを掴んだんだから、逃すわけにはいかないよ~~~さあ、早く下に降りて行きなよ。池を一人で一階に長く待たせちゃダメだ。私ももう寝るから、薬を飲んだらすごく眠くなって……」

「わかったわかった~じゃあ、先に下に行くね。何かあったら呼んで。」


 午後1時50分、リビングには僕一人だけが残され、テレビの旅行番組を見ながら時間を潰していた。母が2階から降りてきて、父が先ほど座っていた席に腰を下ろした。表情はさっきより自然になり、警戒に満ちた目つきもだいぶ和らいでいた。

 僕は勇気を奮い、母と視線を合わせてみた。思ったより順調で、先ほどのような居心地の悪さは感じなかった。両親が二階にいた間に何かあったのだろうか?


 もしかすると何も起きていないのかもしれない。そもそもこれこそが親子のあり方なのだ。何か起きたのではないかという考えは、単なる杞憂に過ぎないのだろう。


「うーん……母さん、親父はどう?大丈夫?」

「彼はね、薬を飲んだらすぐに眠っちゃったわ。何の問題もないから、安心して。」

「そうか、よかった。親父の体の具合がずっと気にかかっていたんだけど、仕事のせいでなかなか帰れなくて、いつも母さんに親父の面倒を見てもらってばかりだ。本当に情けないと思うんだ……」

「何言ってるのよ、お母さんにはこのおっさんを世話する余裕は十分にあるわよ!そんなこと言ったら、あたしを甘く見てるじゃない!」

「母さん……でも僕は……」母がそんな答えを返すとは予想していなかった。

「それに、苦労の度合いを比べるなら、政の世話なんて、昔、あなたと文緋という手のかかる兄妹の面倒を見ていた頃に比べたら、ずっと楽なものよ~あなたたち二人の世話は本当に骨が折れたものだったわ……」

「そうかも……僕にとって大人になった文緋ですら頭痛の種だから、あの頃の母さんにとってはなおさらだ……」

「あ~~~肩がちょっと凝ってるわ~~~今朝、誰かが肩もみや背中を叩いてくれるって言ってたような……」


 母さんがそんなことまで覚えていたなんて……すっかり忘れていた僕は、急に恥ずかしくなった。


「了解! すぐに世界最高級の肩・背中マッサージサービスをご提供します!」


 僕は、すでに体を前に半分傾けて待ち構えている母さんの隣に座り、肩を揉み始めた。


「うーん……なかなかいいわね!後でチップを多めにあげるから~」

「お母さん、本当に僕をマッサージ師だと思ってるんだね……」


 マッサージを始めて間もなく、母の肩の筋肉がひどくこわばっているのに気づいた。長い間リラックスできておらず、明らかに長年にわたって蓄積されたストレスが原因だ。大学の教職、家での家事、そして父の世話の苦労が、まるで三つの山のように、この50歳近くの中年女性の肩にのしかかっている。


 僕が分担できる重みは、決して肩を揉んだり背中を叩いたりする程度だけではない。


「母さん、この休み、ここに泊まらせてくれないかな。」

「え?どうしたの、池?急にそんなこと言うなんて?」

「どうせ休み中も特に用事はないし、ここで家事を手伝ったり、親父の世話をしたりしてもいいんじゃない?」

「その気持ちだけで、母さんは十分満足よ~~~でも、母さんのことは心配しなくていいわ。あのジジみたいに弱々しいわけじゃないし、体も丈夫なんだから~」

「強がらないでください、十香子さん。肩や背中の筋肉が、70代や80代のお年寄りよりも硬くなっているのが、僕にもわかるんだ!」

「気づかれてしまったか……案外、君は細かいところまで気配りができる子だったんだね。」

「だから、放っておけるわけがないでしょう……たまには息子である僕の気持ちも考えてほしいよ。休暇はともかく、これから仕事がどんなに忙しくなっても、できるだけ時間を割いて帰ってきて手伝うから!それに、これからしばらくは宇宙に戻れないかもしれないし、時間はたっぷりあるんだ!」


 興奮するとつい口を滑らせてしまうという僕の悪癖がまた出てしまった。この情報量の多い自白を、察しの良い母が聞き逃すはずがない。


「池、さっき何て言ったの?宇宙に戻れないって?どういうこと?」


 母のその問いに驚いて、背中を叩いていた手が思わず力を入れすぎてしまい、背中を叩く程度から背中への強烈な一撃へとエスカレートしてしまった。


「痛っ……あんたったら、なんでそんなに力を入れるの?お母さんの背中、太鼓じゃないんだから!」

「ごめんなさい、ごめんなさい!うっかりしちゃって、力加減を調節できなくて……痛くない?揉んであげるよ!」

「いいのよ、いいのよ……まずはさっきの言葉を説明して。『宇宙に戻れない』ってどういうこと?」

「あ……違う、違う!勘違いだ!実は、これから宇宙に行く当番が当分回ってこないってこと。だから地球型惑星にいる時間が長くなるから、母さんと親父に会いに頻繁に来られるってことだよ!さっきうまく説明できなくて、ごめんごめん……」


 ここ数日の訓練のおかげで、僕のアドリブでの対応能力は確かに格段に上達した。言い訳を考えたり、ごまかしたりするのは、もう造作もないことだ。

 母は僕のこの説明に、何の疑いも抱かなかった。


「そうなのかい? あの下田長官、最近性格が変わったの?まさか、そんなに優しくて君の負担を減らしてくれるなんて~~~」


 母は振り返り、その瞳は優しさと慈愛に満ちていた。


「実はね、お父さんもあたしもわかっているのよ。あなたの仕事は本当に大変なもので、訓練だってこれほど過酷なのに、ましてや危険が潜む宇宙なんて。考えれば分かるわ、あなたの心身の負担は私たちよりずっと大きいはず。時間があるなら、もっと休んで、やりたいことをしたり、行きたい場所に行ったりしてほしい。私たちにも私たちの人生があるし、まだ年寄りってわけじゃないから、これからも充実した人生を送れるんだ。私たちの人生を君の負担にしたくないから。それに何より、私たちが文緋に対して犯してしまった過ちを、決して君に繰り返すわけにはいかないから、ね?」

「両親が僕の負担だってとんでもない! そんなこと一度も思ったことないし、これからも決してそういう風に思わない! 文緋の件についても、全部親父とお母さんのせいじゃない。彼女もすごく頑固だったし、もしあの時アイツがもっと両親と話し合っていれば、今みたいにはならないで済んだかもしれない…… 」

「だからね、これがパパとママが、あなたに私たちにあまり時間を使ってもらいたくないもう一つの理由なんだ。あなたにはもっと重要なことがあるから……というか、私たちがあなたに託した小さな任務だと言っていいかもね。」

「任務?母さん、それは……」

「食卓で約束したじゃない。全力で文緋と私たちを仲直りさせるって。これって、そう簡単にできることじゃないのよ。何年も積もったわだかまりなんだ……だから、この期間を利用して、彼女としっかり向き合い、機会を見て私たちへの恨みを解消してくれて。この重責は、あなたの肩にかかっているの。あんたを頼る以外に、政とあたしにはもう打つ手がなくなっちゃったから……」


 確かに、今のところこの任務を成し遂げられるのは僕だけだ。仮に一生をかけてでも、喜んで引き受けるのだ。

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