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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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いざ南大陸へと

 剣に施された封印術式を解除すると、なぜか甲高い金属音がしてオリハルコンの長剣は折れてしまいました。


「あっ!?」


 流石に驚いて、わたくしは折れた長剣を拾い上げています。すると、折れた刀身からコロリと小さな妖精らしきものが零れ落ちました。


 ですが、少しも動きません。どうやら熟睡しているみたいね。ウンディーという大精霊は地面に転がったあとも、眠り続けています。


 わたくしは折れた長剣を確認してみることに。


「んんー、どうも術式が機能していることで折れなかっただけのようね。店主様のお話通り、初めから折れていたみたい」


 本来なら、とうの昔に折れていたのかもしれない。術式により何とか原形をとどめていただけのようです。


「ウンディー、ここで会ったが千年目だし!」

「サラ、大人しくして!」


 サラを一喝してから、わたくしはウンディーを拾い上げる。水色の髪をした可愛らしい妖精にも似た姿。思わず頬が緩んでしまいます。


「わたくしも水色の髪でしたら、今頃は悪役令嬢と呼ばれていたでしょうに……」


 美しい水色の髪。髪色のせいで、わたくしは悪役令嬢になれなかったのです。ウンディーが羨ましいですわ。


「サラ、彼女は寝てるだけかしら?」

「そうじゃない? 術式が機能していたら、ずっと魔力を奪われるし!」


 魔力切れならと、わたくしは魔力回復のポーションをウンディーの小さな口に注いでみる。サラを封印した理由が聞きたいし、可愛らしい彼女が苦しんでいるのなら手助けしたいと思って。


 しばらくすると、手の平のウンディーが動き出す。ピクリとしたあと、ゆっくりと目を開いていく。


「気が付いた? わたくしはヒナ・テオドールよ?」


 自己紹介を済ませます。ウンディーの警戒心を解すように、ニコリと微笑んで見せながら。


「あれ……? あたいは……?」


「貴方はウンディーでしょ? サラに聞いたのだけど」


「サラ!? 生きてたの!?」


 サラの姿にウンディーは飛び起きました。自分でも悪いことをしたと感じているのかもしれないですね。


「ウンディー、あーしは怒ってるけど、怒ってないし! 飴玉好きだし!」


 意味合いを理解できるとは思えぬサラの話でありましたが、どうやらそれだけでウンディーには通じている感じです。


「あたいも飴玉……」


「駄目だし! ウンディーはあーしより一個多くもらったし!」


 即座に駄目だとサラは口にしますけれど、わたくしはアイテムボックスから飴玉を四個取り出しています。


「サラにも二つ。ウンディーにも二つ。仲良くするのよ?」


「わぁぁい!」

「飴玉ありがとなの!」


 解放された事実に疑問を抱くことなく、ウンディーは飴玉を受け取っては頬張っています。本当に可愛いです。サラもまた過去の恨みより、現実の飴玉が重要であるらしく、黙々と飴玉をなめているだけでした。


「ヒナ、ありがとなの! あたい外に出られたんだね?」


 飴玉を食べ終わったウンディーは笑顔で話しかけています。


「術式を解除するのにサラも手伝ってくれたのよ? それでウンディーはどうして封印されていたの?」


 恐らくは同じような経緯であるはず。盾に封印されていたサラ。剣に封印されていたウンディー。大精霊の力を求めた職人の仕業でしょうかね。


「あたいは飴玉をくれるベリルマッド六世って人についていったの。そしたらシルフとサラがいてサラは飴玉を食べてたの」


 シルフは鎧の中に隠れていたけどとウンディー。どうやら既にシルフは封印されたあとであるみたい。


「んでさ、サラが飴玉をもらって盾の穴に入ったところで、あたいは封印の手伝いをさせられたの。飴玉を三個もらったからね」


 どこまでも飴玉で動く大精霊たち。わたくしは不思議に思うと同時に面白いと考えてしまう。


「あーしは二個しかもらってなかったし!」


 とりあえずは二人も喧嘩を始めない雰囲気です。ウンディーには悪意を感じないし、二人仲良く飴玉を舐める様子はとても可愛らしいのです。この様子なら、エルサに飴玉の補充をお願いしなきゃなりませんね。


「お嬢様、こんなところにいらしたのですか?」


 ここでエルサが戻ってきました。船の買い付けが終わったにしては流石に早すぎると思えるのですけれど。


「何ですか、この折れた剣、……って妖精が増えてる!?」


 流石に驚くエルサ。まあでも、いいじゃないの。彼女たちは可愛いのだし、お菓子しか食べませんし。


「妖精じゃないの! 大精霊なの!」

「あーしは大精霊だし!」


 即座に否定する二人にわたくしは笑みを零す。やはり小さくともプライドがあるのかしらね。


 エルサは地面にある折れた長剣を拾い上げています。


「それオリハルコン製の長剣なのよ。ベリルマッド六世が鍛造したものらしいわ。武具屋さんで買いましたの」

「オリハルコン!? 折ってしまわれたのですか!?」


「元々、折れていたのよ。ウンディーの封印術式によって形を保っていただけみたい」

「そうですか。さぞかし斬れる逸品だったのでしょうね……」


 剣士としてエルサは残念に感じているようです。オリハルコンだと店主様が話されていましたし、彼女としては是非とも使って見たかったことでしょう。


「しかし、お嬢様は白金貨以外をお持ちだったのでしょうか?」


 妙なことを聞くのね? わたくしが白金貨しか信頼していないことはエルサも分かっていたでしょうに。


「いいえ。だから白金貨で支払いました。端銭とか必要ないですし」

「お嬢様ぁぁぁっっ!?」


 エルサは頭痛を覚えたのか眉間に手を当てています。支払ったのはたった一枚なので、お買い得かと思いますけれど。


「お嬢様、お釣りは恐らく金貨999枚はあったはず! どこの武具屋ですか!?」

「もういいじゃない? 店主様も喜んでおられたし」


「そりゃぁ、喜びますよ! 修理不可能な長剣で丸儲けなのですから!」


 声を張るエルサですが、わたくしは気にしません。各地でお金を使うことも、貴族の嗜みなのですから。


「まあ、オリハルコンが手に入ったら鍛造し直してもらいましょう。お父様が格安で買ったベリルマッド工房製ですし」


「そういえば公爵様は白金貨二千枚という超大金で買収されたのでしたね……」


 幾ら古くともベリルマッド工房ならば、修理できるはずよ。オリハルコンという鉱石の有無こそが重要であるはずだわ。


「お嬢様、それで船なのですが、直ぐには建造できないようです。数年はかかるかと……」


「まあ、それは大変ですわね? 白金貨を上乗せしてみてくれない?」


「お金で解決できないこともあるのですよ! 手こぎの小舟くらいしか直ぐには手に入りません!」


 沿岸の漁業ならまだしも、わたくしたちは大海に出て南大陸へと向かうつもりです。従って小舟では難しい。海にはクラーケンと幽霊船が出没するそうですし。


「え? お船に乗るの? 乗りたいの!」

「あーしも乗りたいし! ヒナ!」


 船の話をしただけで騒ぎ立てる大精霊たち。耳元で大声を出すものだから、うるさくて仕方ありませねぇ。


「お嬢様、少し目を離した隙に、こんなにも妖精に懐かれるなんて……」


 エルサは薄い目をしています。きっと彼女は羨ましいのね。まあでも、飴玉をあげたらエルサも直ぐに仲良くなれるはずだわ。


「んん、でもね小さなお船は手で漕がなきゃいけないの。わたくしたちは南大陸へいくのよ。とても時間がかかるし、手で漕ぐのは難しいの」


 何とか二人を宥める。わたくしは手こぎでも構わなかったけれど、強大な魔物が出現するらしいのです。戦闘中に操舵できない手こぎは流石に選択できません。


「だったら、あたいが水を出してあげるの! スーって進むの!」


 諦めていましたが、ウンディーが解決策を口にしています。

 エルサは信じていないのですが、彼女は本当に水の大精霊。よって水を噴射させるくらいは造作もないことみたい。


「ホント? 大丈夫なの?」

「任せてなの! ぴゅーって進むの!」


 元より時間がありません。魔物退治を待っている暇などないのです。建造に数年かかるのも却下ですし、ここはウンディーを信じましょうか。


「エルサ、早くこの白金貨で小舟を買ってきて!」

「お嬢様、私の手持ちで充分ですから……」


 興奮するわたくしを宥めてから、エルサは小舟を買いに戻る。時間がないことは百も承知。今は無理をすべき場面であり、小舟で大海を突っ切っていくだけですわ。


 小舟の買い取りは直ぐに終わりました。しかしながら、足元を見られたのか、エルサは少し不満げな表情をしています。


「お嬢様、とりあえず買えましたが、真っ直ぐ南へ向かうのは危険です。東か西。幽霊船かクラーケンのどちらかに絞るべきです。流石に両方が現れてしまっては勝ち目などありませんから」


 出発前にエルサ。確かに真っ直ぐ南へ向かうと両方に出会う可能性がありました。東を選べばクラーケン。西を選べば幽霊船でしたかね?


「もちろん、幽霊船よ! 聖女になったとき、聖魔光っていうAランクスキルを獲得したの。アンデッドを天に還すための魔法らしいわ」


「なるほど、それなら有効かもしれません。それで馬車はどうするのでしょう? 南大陸ではまた歩くのでしょうか?」


 小舟で南大陸へ向かうことにしたわたくしたち。しかし、買って間もない馬車が小舟には載せられません。


「馬車だけならアイテムボックスへしまい込めるのですけど、馬は生き物ですので収納できませんね。まあでも馬車は……」


 わたくしは少し考えたあと、結論を口にする。


「新しく買えばいいじゃない?」

「本当に悪役令嬢っぽくなってきましたね……」


 再び頭痛を覚えたかのようにエルサは眉間を押さえています。しかし、まったくと嘆息しつつも、彼女は頷いていました。時間がないことは彼女も承知しているはずですし。


 これにて全ての問題がなくなっていました。わたくしたちと大精霊が小舟へと乗り込む。


「出発するのぉ!」


 話していたようにウンディーが水流を噴射。瞬く間に小舟はスピードに乗って大海原へと出て行く。


 わたくしにとって初めての南大陸。幽霊船という難題が待っていたのですが、わたくしは期待しています。もう直ぐクリエス様に会えるはずと。


 天界での約束がようやく果たせるのだと……。


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