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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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女難がもたらせたもの

 北大陸の中東部。デスメタリア山から南下した場所に広大な砂漠が拡がっている。


 ゴハラと呼ばれる砂漠地帯の中央。そこには草木が生い茂るオアシスがあった。元々、そこはインキュバス族が隠れ住んでいた場所であったが、今や魔王候補の所在地となっている。


「もっと女を連れてこい! 身体が熱くて仕方ないぞ!」


 大声で部下に指示するのは魔王候補となったケンタウロス。進化の影響か通常の個体と比べて三倍はあった。


「ケンタ様、近隣の女は全て攫っておりますので、流石にもう……」


 魔王候補はケンタという。魔王候補になってから性欲も倍増しているらしい。しかし、彼のアレは元々馬並みであったというのに、体躯に会わせて三倍となっているのだから、まぐわった女は直ぐに死んでしまう。


「何だと!? インク、俺様に逆らうつもりか!?」

「いえいえ、滅相もない! 私は貴方様の忠実な下僕でありますから……」


 インクと呼ばれたのは幹部として採用されたインキュバス族の元リーダーである。


 インキュバス族は男性しかおらず、ケンタの皆殺しリストに入っていた。しかし、女性を従順にさせる力を持っていたため、何とかケンタに取り入って生存を許可されている。


「ケンタ様、竜穴とも交わられた貴方様です。女も無限ではありませんし、そろそろ男も加えていただければと存じます……」


「俺様に男を抱けというのか!?」


 インクの進言には激怒するケンタ。流石に男とまぐわうのは彼にも抵抗があるらしい。


「どうせ即死ですよ? ケンタ様のアレは馬並み以上ですし……」

「俺様は決して馬などではない! 誇り高きケンタウロス族だぞ!?」


 荒ぶるケンタにインクは首を振る。勇敢にも彼は魔王候補に意見していた。


「アレがもの凄く大きいという意味です。決して馬と同列に語ったわけではありません。貴方様のソレは大剣をぶち込まれるようなもの。男と女を交互に刺していけば、数が稼げます。今宵のようにお身体を持て余すことがなくなるというものです」


 冷静に聞くと、確かにインクの話す通りであった。女は一回で即死するのだ。満足いくまでに百人から必要となってしまう。妥協して男を加えると、単純に二倍持つというものだ。


「流石はインクだ! 俺様には到底思い浮かばぬ妙案よ! よし、明日からは男も連れてこい! 俺様がめっちゃめっちゃにしてやるからな!」


「はは、早速指示させていただきます」


 近場に女はもういない。苦肉の策であったものの、悪食であるケンタはインクの提案を了承している。


「ふはは! 想像するだけで滾ってきたぞ! 今宵はこの岩山で我慢してやるか!」


 言ってケンタは岩山の隙間にいきり勃ったアレをぶち込む。インクが見ていたというのに、悪食らしく岩山の隙間を今宵の相手としている。


「うおお、良い感じだ! 身体が燃えたぎる!!」


 周囲には地震かと思うほどの揺れが襲い、岩山に亀裂が走る。しかしながら、ケンタが満足するまでソレは終わらない。


「うう、もう駄目だぁぁっ! ヒヒーーン! ヒヒィィーーーン!!」


 深夜のオアシスに盛ったケンタの声が響き渡る。咆吼にも似たそれは恐らく人族の街にまで轟いたに違いない。


 一部始終を見届けたインクは薄い目をしていた。先ほど否定されたこと。自身の言葉が的を射ていたことを知る。


「完全にウマだよな――――」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 徹夜で歩き続けた俺はようやくとフォントーレス公国に入国していた。


 しかしながら、首都ネブラは騒然としている。それもそのはず王子殿下が大量虐殺の上、行方不明であったからだ。


「マジで王子だったんだな……」


『大精霊め、馬鹿なことをしおったな……』

『全くです。大精霊様には常識がないのでしょうかね?』


 俺の話に同意する二人を睨むように見た。常識のなさであれば、この二人もまた双璧なのだと。


「お前らが言うな。お前たちでも同じような事態になっているはずだ」


『婿殿、それは妾を過小評価しているというもの。妾であれば、この国を破壊し尽くしておるわ。逃げるなんて馬鹿な真似はせん』


『逃げるなど弱者の行為ですわ。シルフ様であれば超大型のハリケーンを喚び寄せ、国ごと吹き飛ばすくらい可能でしょうに。そうすれば追っ手もいなくなりますから、常識を疑いますね』


 再び軽蔑の眼差しを向けるしかない。やはり二人は悪霊そのものだ。この世に害をなす存在に違いないと俺は確信していた。


「まあいい。とりあえず宿を探そう……」


 二十年近く前に一度来ただけである。加えて馬車で来た俺が街の地理を覚えているはずもない。


 当てもなく大通りを歩いていると、大きな看板が目に入った。


【指名手配犯情報】

 アリス・バーランド(脱獄・殺人罪により終身刑)

 クリス・フォントーレス元第一王子(殺人罪・逃亡中)


 似顔絵入りで指名手配犯のチラシが貼ってある。またチラシは二枚であり、アリスだけでなく第一王子殿下の名前まであった。


『婿殿、昨日は暗がりで分かりにくかったが、クリスという王子は割と似ておらんか?』

『ああ、そういえば似ています!』


 ここで悪霊の二人が声を揃える。千年前に似たような顔を見たことがあるのかもしれない。


 しかし、次の瞬間には唖然とさせられてしまう。二人が似ているという者の名が俺には信じられなかった。


『婿殿にそっくりじゃ!』

『旦那様にクリソツです!』


「マジかよ!?」


 自分では似ているとは思わないのだが、悪霊の二人は似ているという。あろうことか国際指名手配されたクリス王子殿下と。


「おい、それは俺の魂と比べてか? それとも……」


 戦々恐々としてしまう。仮に二人が魂を見ていたとしても、俺は前世と同じ顔なのだ。少し若くなっただけである。


『今の婿殿にそっくりじゃな!』

「いや、俺は関所を通過してきたんだぞ!?」


『まだ暗かったですからね。ギルドカードも提示しておりますし、身分照会しただけでしょう』

「怖いこと言うなよ!?」


 まさかシルフが取り憑いた大量殺人犯に似ているなんて。一応は正規ルートで入国していたけれど、似ているという事実はトラブルに発展しかねない。


「また女難が仕事しやがったのか?」


『まあそうじゃろうな。じゃが、別人なのじゃから気にする必要はない!』

『そうですよ。旦那様は潔白なんですから、堂々としていてくださいまし!』


 先ほど、二人の常識が過度に欠落していることを再確認したばかりだ。よって平気だと言われたところで安心などできない。


「とりあえずフルフェイスタイプの兜を買おう……」


 余計な出費であるが、トラブルを避けるには顔を隠すしかない。公国を出るまで素顔を晒すわけにはならなかった。


 早速と俺は安そうな武具店へと突入。一刻も早く顔を隠さなくては女難がまた仕事をしてしまいそうだ。


「ローブでもいいか……」


『婿殿、このブーメランパンツも買うのじゃ! 妾はこれを穿いた婿殿を見てみたいぞ!』

『旦那様、このおパンツ紐だけで出来てますわ! こんなの千年前にありませんでした!』


「うるせぇ。余計なものは買わん……」


 ブツクサ言っていると、俺は肩を叩かれてしまう。どうやら店主が不審がって近付いてきたのかもしれない。


 振り向くとそこには衛兵の姿がある。

 えっと……。まあ、この状況は明らかだろう。

 俺はクリス王子殿下とクリソツらしいからな。既に誰かが通報し、俺を捕縛しに来たのだと思われる。


「クリス殿下、ご同行願います」


「いや、俺はクリエスだって! ギルドカードを所持しているし、普通に入国したばかりだけど!? 絶対に俺は許嫁とか取り巻きとか殺してないからな!?」


 俺はやらかしていた。同行を願われただけなのだ。まずは問いを返すべきであり、名乗るだけで良かった。何しろ公になっているのは殺人罪。内容は明らかになっていないのだ。


 即座に俺は捕縛されていた。名前まで似ているのだ。偽名を使っているとしか思われなかったことだろう。


「弁明は王の御前でお願いいたします――――」




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