類は友を呼ぶ!!
六月上旬のある日の放課後、翔は自販機で水を買い、中庭のベンチで休んでいた。霜月たちには遅れていくと伝えているので、曇り空を眺めながらゆっくり過ごしていた。翔はこの時期になると一人で感傷に浸るのである。
水を飲み干してから、部室に向かった。いつも通りドアを開けると、部室の中がやけに眩しく感じた。教室を間違えたと思い、一度ドアを閉めて周りを確認したが、ここは間違いなく『相談部』の部室だった。確認を終え、再度ドアを開けた。それでも眩しかったので、思わず目を守るように手で覆った。頑張って薄目を開くと、目の前には霜月、如月、ベル、神無月がいた。その四人から後光が差し、キラキラして見えたのだった。おかしいな、今日は曇っていて太陽は出ていないはずだが。そう思って改めて目を凝らして見ると、四人からイケメンと美少女のオーラが漂っているように見えた。どうやら眩しさの原因はこいつらのようだった。
(何だ、ここは? イケメンと美少女しかいないのか!)
今まで特に意識していなかったが、いつの間に『相談部』はイケメンと美少女の集団になっていたのだった。
現在『相談部』には五人のメンバーがいる。
まずは『相談部』を創った張本人兼部長の如月牡丹。
二年A組所属。普段は落ち着いていて物静かなときもあれば、結構大胆な行動をするときもある。容姿端麗でゆるふわ系の可愛さだ。黒髪ストレートのショートヘアでツヤのある髪はとても綺麗だ。身長は一六〇センチくらいありそうだ。神無月情報によると、本人は知らないらしいが、結構男子に人気があるらしく、隠れファンも多いらしい。二年女子の可愛いランキングではトップ三に入るとのことだ。運動神経は人並みと如月自身は思っているらしいが、客観的に見ると良いように見える。中学の頃は卓球部だったらしい。成績も良く、この前の中間テストは八位。料理やお菓子作りが好きで、休みの日によく作っていると言っていた。
次は学内一のイケメン、霜月時雨。
二年A組所属。容姿端麗で身長は一八三センチあり、誰に対してもやさしい爽やかイケメンだ。神無月によると、学園で一番の人気者らしい。信ぴょう性は怪しいが、おそらく正しいだろう。誰が見ても文句のないイケメンだ。SNSでオシャレなファッションの投稿をしており、総フォロワー数が八〇万人を超えるらしい。また、モデルの仕事もしたことがあるらしい。勉強もそこそこで、この前の中間テストでも二五位という成績だった。運動神経が抜群で、どんなスポーツもそつなくこなすことができる。小学生のときは野球、中学ではサッカーをやっていた。いろんな部活から勧誘されているらしいが、なぜかすべて断って『相談部』に入部した謎な人物である。なぜ『相談部』に入ったのかわからないが、何か考えがあって事だろうと思う。
次はイギリスからやってきたブルーベル・エイプリル、通称ベルだ。
二年A組所属。元々は翔とオンラインで交流していて、それがきっかけで日本に興味を持ち、イギリスからはるばる日本までやってきたそうだ。この行動力からわかる通り、とてもアグレッシブで元気な人である。容姿端麗で、金髪ロングストレートの髪は光り輝いて見える。それに碧い目にスッとした鼻、小さな顔など、見るからに外国人です、というオーラが漂っている。身長は一六五センチくらいありそうだ。ベルは、如月とは違うタイプの可愛さがある。翔の感覚だと、きれかわだ(綺麗+可愛い)。まだ来たばかりなので、女子の可愛さランキングに入っていないらしいが、確実にトップ層に食い込んでくるだろう。運動神経も良く、走るのが早い。イギリスではテニスをしていたらしい。とても頭が良く、この前の中間テストでは、まだ日本に来て間もないというのに、二位という好成績だった。イギリスでは主席だったらしい。それでも驕ることはなく謙虚だ。その原因の一つは弟が関係しているのだろう。ベルの弟はギフテット、いわゆる天才で、なんでもそつなくこなすと言っていた。翔も一度会ってみたいと思っている。
次は一番の新人、神無月紫苑だ。
二年C組所属。容姿端麗で霜月に勝るとも劣らない、中性的なイケメンで、身長は一八〇センチある。学校での人気は二番らしい(霜月には大差で負けた)。霜月に対抗してSNSをしているが、総フォロワー数は五〇万人らしい(それでもすごいことである)。成績も良く、一年のときはいつも二位、この前の中間テストでは三位だった。運動神経も良く、中学までバスケ部に入っていたようなので、よくバスケ部の助っ人をしているらしい。自分の生まれ持ったイケメン顔と成績の良さを自覚しており、よく自慢しているが、その裏では必死に努力している憎めない奴だ。褒めてもらいたいアピールをするくせに、褒められると顔を赤くして照れる意外と可愛い一面もある。からかいがいがありそうだ。
そして最後、水無月翔。
二年A組所属。性格は内向的。いわゆる陰キャだ。友達はいない。勉強は好きでやっているので、その結果学年トップの成績を取れている。趣味は読書、映画鑑賞、アニメ鑑賞、旅行、散歩などだ。基本一人で過ごすのが好きで、群れるのは得意ではない。容姿は下の中くらいだと自分では思っている。決してイケメンではないが、とてもブサイクでもない……はずだ。実際、他人からどう思われているのか知らない。運動は健康のため毎日続けているが、元々、体を動かすことは好きである。そのため、走るのは早い。球技は人並みだが、テニスは小さい頃からやっているので、得意である。
こうして改めて振り返ってみると、中々なメンバーが集まっていた。正直、最初は何も起こらずに自然に消滅するだろうと翔は思っていた。しかし、たった二ヶ月でメンバーが五人に増えるとは誰が予想できただろうか。いや、誰も予想できなかっただろう。
類は友を呼ぶと言うが、人間は自分と似た人たちと関わりたいと思う性質がある。それは、性格だけではなく、容姿にも当てはまるとのことだ。世の中を見ると、ほとんどのカップルや夫婦は容姿レベルが近いことがわかるだろう。つまりイケメンは美女と一緒になり、そこそこの人はそこそこの人と一緒になるのである。フィクションでよくある、美女と野獣は非常に稀なケースなのだ。ちなみに、某有名作品の野獣は、人間に戻るとイケメンになったのだが…。
つまり、如月牡丹という学園内でもトップレベルの可愛い女子生徒が『相談部』を創ったことで、類は友を呼び、そこに霜月やベル、神無月といったイケメンや美女が集まってくるのは必然だったとも言える。翔は師走先生に無理やり連れて来られたので、例外なのだろう。
みんなが楽しそうに笑顔で会話している姿を見て、翔は一瞬、空虚感を抱いた。
(どうして俺はここにいるんだ?)
四人を見て翔はそう思ったのである。
霜月と如月は客観的に見るとお似合いのカップルに見える。誰に聞いても納得するだろう。如月はおそらく霜月のことが好きで、霜月も如月に対して良い印象を持っているようなので、あとは時間の問題だろう。ベルは会話を盛り上げるのが上手く、一緒にいると笑顔になれるので貴重な存在である。神無月は……イケメンで頭が良いので、何かの役に立つはずだ。そうなると、翔が『相談部』にいる意味はあるのだろうか、という疑問が湧いてきた。
この日から、翔は『相談部』を辞めようか、と考え始めた。
またある日の昼休み、翔は静かな場所で読書しようと思い、最適な場所を探していた。外は天気があまりよくなかったので、いつも行く屋上はやめることにした。そうなると図書室になるのだが、最近はもう一つ静かな場所を見つけたので、そこに行くことにした。そう。『相談部』の部室である。校舎の一番端の教室で人もいないので、一人になりたいときは、うってつけの場所である。良いか悪いかは別として、『相談部』はまだ認知度が低いので、このまま静かな時間が続けばいいな、と時々思うことがある。
翔が部室の前に着くと、中から明かりが漏れていた。どうやら誰か先客が来ているようだったが、翔は気にせずドアを開けた。部室には翔以外の四人の姿があった。なぜか四人とも長机に置かれている如月のスマホを集中して眺めていた。何をしているのか尋ねたが、なんとなく誤魔化されたような感じがして、少し疎外感を抱いた。
四人は何か隠しているような様子だったので、追及すると困るだろうと判断した翔は、それ以上聞かないことにした。翔は、自分が知る必要のないことなのだろうと考えた。四人の邪魔をしてはいけないと思い、いつも通り図書室に行くことにしたら、なぜか霜月と神無月もついて来るということになった。
図書室に向かっている途中、霜月が「なあ、翔…」と言い掛けて何か言いたそうだったが、結局何も言わなかった。神無月は「どっちが早く一冊読み終えるか勝負しようぜ」といつも通りだった。
翔は、四人が何を隠しているのか興味ないつもりだったが、胸の辺りが少しモヤモヤしていた。しかし、なぜモヤモヤするのか、わからなかった。
また別のある日の放課後、みんなそれぞれ用事があるということだったので、部活は休みになった。時間ができた翔は、帰りに本屋に寄った。そこで本を探している途中、ふと外を見たとき、ベルと霜月が一緒に歩いている姿が見えたのだった。二人は楽しそうに会話しながら歩いているように見えた。二人でどこか遊びに行っている、そう、デートしているようだった。
(まさかベルさんも霜月のことが好きだったのか!!)
二人の姿を見た翔はそう思ったのだった。
(いやでも、如月さんも霜月のことが好きだから……。これは三角関係!)
ゴシップ好きな人が面白がるような展開を想像した翔だったが、翔自身はそういうことにまったく興味がなく、逆に昼ドラみたいな泥沼展開は苦手である。如月もベルも良い人なので、どちらかを応援することなんてできない。ということで、翔は、気づかなかったことにしようと決めたのだった。
そしてさらに、自分は『相談部』にいない方がいいのではないか、という思いが強くなったのであった。
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