水無月翔のストイックな休日!!
ベル、如月との買い物、つゆりとの久しぶりのコミュニケーションを取った翌日、翔はいつも通り朝の六時に目を覚ました。布団から起き上がったとき、昨日の疲れがまだ取れてなかったので、翔は学校を休むことにした。
休むと決めても、翔はいつも通りモーニングルーティーンをするのである。翔は夜寝るのが極端に遅くならない限り、ほぼ毎日午前六時には起床している。おそらく翔のクロノタイプは、朝型だろう。
クロノタイプとは、朝型人間か夜型人間かという分類のことである。朝型の人は、夜明けとともに起きるのが苦ではなく、覚醒のピークとパフォーマンス能力が最も高くなる時間が午前中である。また、夜の早い時間に眠くなる。
一方、夜型の人は、朝起きるのが遅く、寝るのも遅い。夜型の人にとって午前中はまだ睡眠モードなため、頭がうまく働かない。夜型の人は、夕方から夜にかけて、最もパフォーマンス能力が高くなるのである。
朝型人間は人口の約四〇%、夜型人間は約三〇%、残りの三〇%は朝型と夜型の中間の人らしい。
クロノタイプはほとんど遺伝で決まるそうだ。だから両親が朝型ならその子も朝型、夜型なら子どもも夜型になる。翔の両親は二人とも朝起きるのが早かったので、翔も朝型を受け継いだのだろう。つゆりも翔ほどではないが、朝型のようである。
クロノタイプについて考えていると、一つ気になることがある。こんなにも均等にクロノタイプが分かれているのに、どうしてほとんどの学校は、みんな朝早く登校させるのだろうか? 学校に限らず、会社でも基本は朝出勤して、八時間以上働き、夜に帰るというところが多い。昔に比べて、在宅勤務やフレックスタイム制など多様な働き方が増えつつあるが、それでもまだまだである。こんな社会だと夜型の人は生きづらいだろう。翔は朝型だから問題ないが、中間型、夜型の人にとっては朝起きるのは大変なはずだ。
それに近年は全体的に人の睡眠時間が減少しているらしい。理由はたくさんあるだろうが、これは由々しき事態である。なぜなら、睡眠不足は様々なリスクが存在するからである。
たとえば、脳機能が低下し、記憶力が悪くなる。これだといくら勉強しても身につかず、せっかくの時間がもったいない。その結果、成績が下がってしまう。それに病気にも罹りやすくなる。多くの人は、休日に寝だめすればいいと思っているらしいが、一度、睡眠不足に陥ると、そのあと多くの時間寝ても、取り戻すことはできないらしい。だから翔は毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝るようにしている。そして睡眠時間は大体八時間は確保している。睡眠は人間の三大欲求の内の一つだ。それを削ることがどれだけリスクのあることか、みんな知っておいた方がいいだろう。
翔のモーニングルーティーンは起きてすぐに始まる。
布団から出てまずは顔を洗いに洗面所に行く。そして歯を磨き、そのあとトイレに行く。用を足したら、ジャージに着替えて二〇分散歩する。朝の散歩は気持ちが良く気分がスッキリするからだ。それに日の光を浴びることで体内時計も調整できる。
散歩を終えたら、次は軽度から中度の運動をする。たとえば、そのまま三〇分ランニングすることもあれば、家で筋トレすることもある。最近の翔のマイブームはHIITトレーニングだ。これは、二〇秒間全力で動いて、一〇秒間休むのを八セット、合計四分間行うインターバルトレーニングだ。結構キツイが一日たった四分で心肺機能を高めることができるので、忙しい人にオススメだ。
運動のあとは、汗を流しにシャワーを浴びる。そして、学校に行く日は制服、休みの日は私服に着替える。
着替えたあと、洗濯をしている間に、自分の部屋で四〇分瞑想をする。瞑想と聞くと、仏教のことが思い浮かぶかもしれないが、瞑想は今、科学で注目されており、ストレス解消や脳機能の向上など様々なメリットがあることが証明されている。
瞑想にはいろんな種類があり、一般的にイメージする座禅を組んで呼吸に集中する呼吸瞑想以外にも、歩くことに集中する歩行瞑想、部屋の掃除や皿洗いのような日常的な家事に意識を集中するマインドフルネス、食べることに集中するマインドフルイーティングなどがある。今までいろんな瞑想を試してみたが、気づくと部屋で座って呼吸に集中する瞑想が習慣になっていた。これが翔にとって一番しっくりくる瞑想だった。こうして翔は、いつも朝にコンディションを整えるようにしている。
こんなことをしているため、ほぼ毎日学校に遅刻することになる。しかし、それは仕方のないことだ。そもそも学校の始業時間が早いのが問題であって、翔はそれに合わせるつもりはない。それに週五で登校というのも翔にとってはキツイことである。なぜ他の人は週五で、こんなに朝早くから登校して平気なのだろうかと不思議に思うくらいだ。周りから見れば、翔はおかしい人かもしれないが、翔から見れば、みんなの方がおかしい人に見える。
今日は休むことにしたので、このあとも休日モードで過ごす。翔はモーニングルーティーンを終えたあと仕事をする。仕事と言っても、たいしたことはしていない。ブログを書いたり、アフィリエイトなどをしたりしているだけだ。以前はフェイスブックやインスタなど他のSNSもやってみたけれど、性に合わなかったのでやめてしまった。動画配信も試みたが続かなかった。ブログやアフィリエイトは続けることができて、たまたま上手くいき、平均年収くらいは稼いでいる。
仕事が一段落したら、昼まで読書をする。家でするときもあるし、近くの図書館に行くこともある。たまにカフェに行くこともある。ちなみに、翔はコーヒーが嫌いじゃないが、ほとんど飲まない。なぜなら、カフェインに弱いため、たとえ朝飲んだとしても、夜寝つきが悪くなるからだ。睡眠の質を下げないために飲まないのである。
読書に集中すると、あっという間に時間が過ぎていき、そのまま夕方になっていることもあるが、大抵はどこかで昼食をとる。朝は基本食べないので、それなりに空腹ではあるが、昼もガッツリ食べるわけではない。野菜多め、炭水化物少なめなことが多い。
学校では一日三食しっかり食べろと教わったが、あれは人によって違ってもいいんじゃないかと思う。朝ご飯食べないと目が覚めないという人もいれば、翔みたいに朝は食欲がなく食べなくても大丈夫な人もいるだろう。そんな人は無理に食べる必要はない。
基本、昼からは自由に過ごしている。掃除したり、洗濯物を取り込んだり、スーパーに買い物に行ったり、散歩したり、そのときの気分で何をするか決めている。
夕方の六時頃になると、晩ご飯の準備を始める。そして七時頃には食べて、七時三〇分頃に片付け始める。八時頃には風呂に入り、風呂から上がったら歯を磨いて、あとは寝るまで読書をする。
これが翔の休日の過ごし方だ。だけど、もちろんいつもこの流れを徹底しているわけではない。たまに朝から電車に乗って日帰り旅行に行ったり、ハイキングや登山に行ったりしてリフレッシュしている。もちろん泊りがけの旅行に行くこともある。一人だと気楽に行けるのでとても快適だ。
一人だと寂しくて孤独と思う人がいるようだが、翔はそんな風に思ったことない。むしろ一人の方が楽しいと思っているくらいだ。たしかに、孤独は人の健康に良くないという研究はたくさんあるが、これには盲点がある。
孤独とは主観的に感じるものであるため、翔みたいに一人でいても孤独を感じない人にはさほど影響しない。逆に多くの人に囲まれていても孤独を感じる人もいて、その人は健康上良くないだろう。つまり、翔みたいにいつもボッチでいて、それに慣れている人には怖いものなんてないのである。無理に学校で友達を増やす必要はないし、友達一〇〇人できるかな? なんてものは一種の洗脳なので、気にしなくてもいい。本当に大切な人が数人いれば十分だ。もしその数人もいないのなら、自分自身を一番大事にすればいい。翔は自分自身が一番大切だと思っている。何があっても自分を一番に優先する。それが翔の信念だ。
次の日、翔は心身共に回復していたので、学校に行った。
休み時間にベルが休んだ理由を聞いてきたので、理由を言うと驚いていた。霜月や如月は翔がよく休むというのを知っているので、いつも通りだと受け止めていた。
放課後、ベルが部活に行くのかと翔に尋ねてきた。翔が行くと答えると、一緒に部室に行くとのことだった。また遊びに来るのかと思っていたら、昨日入部したということだった。
こうして四人目の部員が加わったのである。
ベルが加わったことにより、少し席替えをすることになった。相談者側から向かって右から順に如月、霜月、翔の席順だったが、新しい席順は、右から順に霜月、如月、翔、ベルになったのである。
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