ミハエルの悪巧み
「ふっふっふー、今日こそはやってやりますよ千聖さ〜ん」
城の柱の陰に隠れて悪巧みするのは年下犬系男子、ミハエルだ。
何故悪巧みをしているかというと、普段散々エラい目に合わされているのに、どうしてかいつも自分だけが騎士団長に驚かされては怒られているからだ。たまには千聖にも驚いてほしいし怒られて欲しい。
とはいえ団長は千聖の夫であるから、怒ってもらうのは可哀想だしああ見えて妻には甘いからたぶん無理。
ならば前者だけでも、と思い柱の陰に隠れている次第だ。
今まで驚かせてやろうなんて思っても見なかったが、こうして千聖を観察してみると案外隙だらけらしい。
今日だって花瓶や植木鉢やコップなど何度倒しそうになったことか。しかし運がいいのかどれも中身を零す前に拾い上げている。
それになんだか最近はぽけっとしているような。きっと彼女のことだから前日に呑みすぎてまだ眠いのだろう。しかし今日こそ驚かすと決めた自分にとっては都合がいい。
さてさて。何も知らぬ千聖がやって来た。
柱の陰からぬうっと手を出してやりそして存分に驚けばいい。なんてったってそうやっていつも驚かされているんだから。
ここぞというタイミングをみて、ミハエルはぽけぽけしながら歩く千聖に手を大きく広げてboo!と驚かせてやった。
思った通り「うわぁーーッ!!」と驚いてくれたのは良いものの、何故か自身の身体が宙に舞っている。
あれれ、と気付いた瞬間には既に地面に叩きつけられていた。
「何だよ驚いたなもう!! お前かぁっ!!」
「いっ、たぁいですよ千聖さぁ〜〜ん……!」
「驚かすからでしょ!?」
一瞬のことで何が起こったか分からぬが、じんじんする身体を起き上がらせる。すると目の前には団長の姿。心底驚いて尻餅をついた。
「何やってるんだお前達は……」
「何やってるも何もないですよ! こいつが急に襲いかかってくるから!」
「なに?」
「いやいや待って下さい! 襲って無い無い! ただ驚かそうとしただけでっ……!」
「はっ、驚かそうとした結果がこれか。綺麗な一本背負いだったぞ」
「マジですか。護衛騎士の方たちに教えてもらった甲斐がありますね」
「うぅぅ……こんなはずじゃ〜〜……。しかもコイツってぇ〜……」
「フフン。私に仇成そうなんて百年どころか一生無理ですよミハエルさん」
「そんなぁ〜〜……」
そんなこんなでミハエルの悪巧みは失敗に終わったのだった。
因みに千聖のぽけぽけの原因が、ブルーに毎晩精気を吸い取られているから、なんて事実は知る由もない。




